D103
ドイツ厚生省:1997年6月23日
公的医療保険における
経済的負担からの保護
Schutz vor finanzieller Uberforderung
in der gesetzlichen Krankenversicherung
Bundesministerium fur Gesundheit
23.Juni 1997
公的医療保険の低所得者規定は、何人も経済的理由によって公的医療保険の給付から除外されないように、また過大な経済的負担がかからないように配慮している:
被保険者が低所得の場合は、医薬品、治療材料、療法や補装具、交通費、歯科補綴ならびに施設での予防とリハビリ療養に対する自己負担から完全に免除される。この規定は1997年には、生計のための月額総収入が 1708マルク(旧西ドイツ地域)、1456マルク(旧東ドイツ地域)を超える被保険者には適用されない。夫婦の場合には 2348.50マルク(西)、2002マルク(東)、夫婦と子供一人の場合は2775.50マルク(西)、2366マルク(東)となる。家族数がそれを超える場合には、一人につき 427マルク(西)、364マルク(東)が加算される。旧東ドイツ地域でも、医薬品と治療材料に対しては旧西ドイツ地域と同額の低所得者限度額が適用される。 社会扶助、戦争犠牲者援護、失業救済、また連邦教育促進法並びに雇用促進法§40の枠内または障害者の雇用と職業促進の規定による職業訓練の給付を受けてくれる者も、完全に免除される。 社会扶助または戦争犠牲者援護のホームまたは類似の施設で世話を受けている者も同様に免除される。 18才以下の子供も同様に、医薬品、治療材料、療法、補装具、及び施設内予防及びリハビリ療養、並びに病院における14日間の自己負担から免除される。 慢性患者に対する特別規定:1年間自己負担を負担限度まで支払った慢性患者は、それ以後は家庭の総所得の1%を超える自己負担は支払う必要はない。この規定は、公的医療保険の被保険者となっている家計内の全員に適用される。新しい法的地位は1997年7月1日より適用される。この時点までに、1年間持続的に治療を受けており、1996年度に負担限度まで自己負担を支払った者は、1997年には1%の新しい上限を請求する権利がある。【訳者注:1996年までは、慢性患者を1%という低い限度額にする規定はなかった】
1996年の自己負担が負担限度に達しなかった者は、1%−規定の権利は1998年にならなければ得られない。しかし、それを得るには、1997年に生計のための年間総収入の2%の負担限度に達していなければならない。したがって、被保険者は1997年度の領収書を集めておいて、年度末に疾病金庫に提出しなければならない。 何れの被保険者も、医薬品、治療材料、療法、交通費にその年間総収入の2%以上を自己支出してはならない。 入院の場合の自己負担は、年間最高14日までに限定される。 歯科補綴(義歯)の場合の自己分担分に対しては、スライド式の規定がある。歯科補綴の自己負担は、本人の月額所得から、自己負担が全額免除になる低所得者限度額に相当する額を差引き、それを3倍した額以内に止めなければならない。清算の方法は?
自己負担が規則的に支出される場合には、従来通り月ごとに、または四半期ごとに返還される。そうでない場合には、自己負担の清算は歴年による。清算の期間については個々の疾病金庫が定める。
自己負担を免除された者は、疾病金庫から免除証明書を受け取ることができる。薬局には自己負担用の領収書の綴りがある。自己負担に関する質問があれば、すべて疾病金庫に問合せて下さい。
疾病金庫の保険料率が引上げられるときは、自己負担も引上げられることになる。被保険者は特別な解約権利を有する。【そのような場合、被保険者は自分の好む疾病金庫に変更する権利を有する】
自己負担一覧 1997年7月1日より
疾病金庫の給付 |
旧西ドイツ地域 |
旧東ドイツ地域 |
免除される対象 |
医薬品 |
1医薬品につき包装の大きさにより 9マルク 11マルク 13マルク |
1医薬品につき包装の大きさにより 9マルク 11マルク 13マルク |
a)免除者規定に該当する者 b)過大負担規定 − 2%以上 − 慢性患者 1%以上 c)子供 |
治療材料 |
1材料につき 9マルク |
1材料につき 9マルク |
a)免除者規定に該当する者 b)過大負担規定 − 2%以上 − 慢性患者 1%以上 c)子供 |
交通費 ・病院処置に通う往と復 ・病院処置の代りに診療所で処置を受ける場合 ・救急車または病 院車による搬送 |
1回の交通につき 9マルク |
1回の交通につき 9マルク |
a)免除者規定に該当する者 b)過大負担規定 − 2%以上 − 慢性患者 1%以上 |
療法 (例、マッサージ、医療体操) 医師診療所の場合も同じ |
費用の15% |
費用の15% |
a)免除者規定に該当する者 b)過大負担規定 − 2%以上 − 慢性患者 1%以上 c)子供 |
補装具:包帯、支持器、圧迫療法 |
疾病金庫が引受ける費用の 20% |
疾病金庫が引受ける費用の 20% |
a)免除者規定に該当する者 c)子供 |
病院治療 |
1日17マルク 最高14日まで |
1日17マルク 最高14日まで |
免除の対象にはならない、子供は免除される |
居住地近くの外来でのリハビリ(複給付)で疾病金合庫共同体の適応カタログにないもの |
医薬品、治療材料、交通費、療法、補装具の自己負担は上記による |
医薬品、治療材料、交通費、療法、補装具の自己負担は上記による |
上記の各給付に準拠する |
居住地近くの外来でのリハビリ(複給付)で疾病金合庫共同体の適応カタログにあるもの |
自己負担の最高は病院治療と結びついたリハビリの額 |
自己負担の最高は病院治療と結びついたリハビリの額 |
下記による |
施設での予防及びリハビリ処置 |
1日25マルク |
1日25マルク |
a)免除者規定に該当する者 c)子供 |
病院治療と結びついたリハビリ |
1日17マルク 最高14日 |
1日17マルク 最高14日 |
a)免除者規定に該当する者 c)子供 |
母親療養 |
1日17マルク |
1日17マルク |
a)免除者規定に該当する者 c)子供 |
歯科補綴と関連する歯科医師治療【通常の歯科診療は該当しない】 |
費用の55% 規則正しく予防診察を受けていた者は45% |
費用の55% 規則正しく予防診察を受けていた者は45% |
a)免除者規定に該当する者 b)スライド式過大負担規定 |
1998年1月1日より歯科補綴に対して連邦統一の固定手当金が決定する予定。これにより従来方式の自己負担は削除される |
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本文中の【 】内は訳者が書き加えたものである。
この資料は1997年7月1日より実施される医療制度改正に当って、その重要な要素である被保険者の自己負担に関する規定の解説として作成されたものである。
被保険者の自己負担という制度は日本にも共通するが、ドイツの場合には被保険者にかかる負担が過大にならないように、十分な配慮がなされている。これは日本と著しく異なる点であるので、全文を翻訳して紹介することにした。
1997.7.25.; 1997.12.23.訳文修正
岡嶋道夫 訳
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