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D104

ドイツ厚生省

公的医療保険の改革

 

公的医療保険における

自主管理と自己責任を改革するための

第1及び第2改革法の目的と内容

1997年3月21日

Neuordnung der

gesetzlichen Krankenversicherung

Ziele und Inhalte

des 1. und 2. Gesetzes

zur Neuordnung von Selbstverwaltung

und Eigenverantwortung in der

gesetzlichen Krankenversicherung

 

21.Marz 1997

Bundesministerium fur Gesundheit

 

 

公的医療保険の改革

CDU/CSUとFDPの連立政党【与党】と連邦政府は、ドイツ連邦議会で議決され連邦参議院の同意が必要である法律「公的医療保険−発展法及び病院改革法 1997」が連邦参議院でSPD【野党】の反対で挫折した後、1996年10月に「公的医療保険における自主管理と自己責任を改革するための第1及び第2法律」を国会審議に持込んだ。この第1及び第2改革法の目的は、社会医療保険の給付能力と財政能力に堅実な基礎を築こうとするものである。保健医療の関係者との公開討議と議会審議の枠で、第2改革法の一連の核心点に変更が必要であることが示された。この変更の必要性は、現在ドイツ連邦議会で第2及び第3読会【審議】で議決された法案に盛り込まれた。連邦参議院の同意が必要でない両法律の今後の手続が速やかに終了し、それにより第1及び第2改革法が1997年中ごろに発効することになるので、ドイツ政府は行動を開始した。

 

【訳者注1:CDU=キリスト教民主同盟;CSU=キリスト教社会同盟;FDP=自由民主党;SPD=ドイツ社会民主党。】

【訳者注2:ドイツ連邦共和国の連邦法律の発案権をもつものは、連邦政府、連邦参議院及び連邦議会である。連邦参議院の議員は各州ごとに州大臣の中から住民数に応じて任命される。連邦議会の議員は国民投票によって選出される。連邦法律には3種類がある。@基本法(憲法に相当)を改正するための法律、A連邦参議院の同意を要する法律、これは州の利害に密接に関わる法律であって、連邦議会が可決しても、連邦参議院が同意しなければ、法律は成立しない。B連邦議会が可決した法律案に対して、連邦参議院は異議を述べることができるが、連邦議会がその異議を却下すれば成立する法律。(田沢五郎:ドイツ政治経済法制辞典による)】

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 公的医療保険の改革

目次

T.公的医療保険の改革は何故必要か?

1.給付可能な保健医療の財政を保持する

2.従来の費用抑制の効果は限られている

3.公的医療保険が赤字財政の場合に必要となる行動

U.改革法の目的と重点

1.連帯としての医療保険を保証する

2.自主管理を優先する

3.疾病金庫によって給付が除外されることはない

4.公的医療保険の財政基盤を改善

V.二つの法律が持つ最も重要な新規定

1.既存の自己負担を5マルク、またはパーセントで5ポイント引上げる

2.個々の疾病金庫の保険料率引上げを自己負担引上げと抱き合せる

3.特別な解約権

4.低所得者規定の改善

5.給付体制に代ってパートナーシップによる解決

6.被保険者が財政的支出をする定款給付

7.保険料返済、自己保有及び自己負担による今後の体制について

8.費用償還【療養費払い】と被保険者への情報提供

9.試行的計画と契約の体制を拡大する

10.医師報酬の新規定

11.医薬品及び療法に対する予算を基準量に替える

12.契約医の需要計画と救助業務のときの救急医給付における変更

13.病院給付の改革の続行

への投資手当金の引上げ

14.歯科医師給付における新しいオリエンテーション

15.ホスピスに対する新しい規定

16.リハビリ給付と早期発見検査の改善

W.代案なるものは?

1.部分的な予算か全体的な予算か

2.買物モデル

3.ポジティブ・リスト

 

T.

公的医療保険の改革は何故必要か?

 

1.給付可能な保健医療の財政を保持する

ドイツ連邦共和国は、信頼性があり、給付可能で、国際的にも認められた保健医療制度を持っている。ドイツの保健医療及び公的医療保険は、他の西側工業国と同様に大きな挑戦の前に立たされている。老人の増加、わたしたち国民の生命への期待の向上、ならびに医学と医療技術の進歩という背景を前にして、保健医療制度を質的に高い水準に維持していくことが、将来重要となってくる。同時に、公的医療保険の支出が財政的に可能であり、そのための雇用者と被雇用者の負担が堪えられるものであり、見通せるものであるような条件を、わたしたちは創り出さなければならない。公的医療保険の改革は、保健医療の今後の展開のなかで、この二つの目的に役立つことになる。

保険料率の上昇は、雇用者の支出負担を増大させ、また各自の家計の実質所得を減少させることになる。保健医療と公的医療保険の支出の高さと増加は、医学的必要性と給付提供の経済性を常に点検することを必要とさせる。責任をもって給付を行うことを実現させなければならない。

しかし、経済的な余裕を総て使い果たしてしまうことによって、必要とされる医学的給付と医学の進歩を、被保険者が分かち合うことが保証できなくなったときには、保険料率の引上げは正当化される。非経済性による保険料率引上げを阻止することは必要である。しかしながら、医学的に必要な給付によって保険料率が引上げられることは許される。その場合、患者が社会的に堪えられる方法で自己負担をすることによって、保健医療給付の財政に関与させられることが求められる。 *医療保険の保険料全体を法律で固定的に決めてしまうとか、あるいは医療保険の支出に包括的、理論的な予算枠を設けることは、わたしたちの保健医療制度の将来を高い水準に保つ方法としては適当でない。これを望んでいる人は、公的医療保険制度の合理化を強調している;これを望んでいる人は、一体何を合理化しようとするのかについて具体的に述べなければならない。【*以下の記述は、野党の主張に対する反論である】

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2.従来の費用抑制の効果は限られている

1977年以後は、立法府は保健医療制度に対して、より一層深く規制を加えるようになり、その間隔も次第に短くなってきている。6800以上を数える規定からなる46の大きな法律が、結果として介入した。費用抑制の法律が経験したことは、公的医療保険の支出増加を抑えたり、保険料率の上昇にブレーキを掛けるのに、一時的にしか効果がないことが多いということであった。法律の新規定が発効してから時間が経つと、支出抑制の効力と関係者の支出の規律が再び衰えてくる。このようなことは、1988年の医療保険改革法と1992年の医療保険構造法にも当てはまる。

必要とされる企画を開発し、他方で医学の進歩の実現には寄与しない非経済性と浪費に由来する保険料引上げを阻止するという、自主管理による自己操縦が今までは公的医療保険には存在しなかった。今回提出された公的医療保険改革のための法律案は、以上のことを踏まえて、今後の方針についての結論を出している:

まず第一に自主管理を強化するが、とくに契約の領域において、経済的な給付の実施に一層効果が出るようになるだろう。それによって、自主管理による経済性が一層改善され、立法府による恒常的な介入が必要なくなるだろう。

第二に、現在の自己負担が被保険者にとって社会的に堪えられる方法で引上げられることにより、公的疾病金庫の財政基盤が永続的に改善される。それによって1996年に生じた 63億マルクの赤字の解消に寄与することになる。

第三に、個々の疾病金庫の財政責任が強化されるが、それは将来保険料率引上げと自己負担引上げを連結したものにしなければならない。同時に被保険者は短期間で疾病金庫を変更することが可能となる。

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3.公的医療保険が赤字財政の場合に必要となる行動

公的医療保険の財政拡大によって必要となる行動が強化される:

公的疾病金庫は、1996年に対する財政の現状を見ると、明らかになっている赤字は約 63億マルクである。そのうち約 39億マルクは旧西ドイツ、約 24億マルクは旧東ドイツである。第1から第3四半期までには、支出超過は 87億マルクに達した。なお、1995年の赤字は 70億マルクであった。

1996年の赤字は、最初の9ヵ月を経過したときに心配されたよりも、低く止まった。現在多数の給付領域において、節約効果が明らかになっている。自主管理の関係者たちが、1996年初期から節約努力を開始していたならば、現在削減しなければならない財政負担は、もっと低く抑えられたであろう。しかしながら警報を解除できる根拠は存在しない。これは、かつての西ドイツ地域と異なって、赤字増加が再度加速している旧東ドイツの州について言えることである。

 

主要な給付領域における上昇率

1995年第1〜第4四半期と比較した1996年第1〜第4四半期の変化

組合員1人当り

 

公的医療保険

西

連邦全体

医師の処置

2.1%

-2.3%

1.5%

歯科医師の処置、顎矯正と義歯を含まず

7.1%

4.2%

6.6%

義歯

10.2%

9.2%

10.1%

医薬品

6.4%

5.8%

6.3%

療法と補装具

8.9%

12.5%

9.4%

療法

7.9%

27.8%

10.2%

補装具

10.5%

4.7%

9.5%

病院治療

-0.7%

5.9%

0.4%

疾病手当

-2.2%

3.8%

-1.2%

交通費

4.6%

7.5%

5.2%

療養

1.6%

9.4%

2.8%

健康促進/社会サービス

12.8%

0.7%

10.5%

家庭介護

14.9%

-2.4%

11.7%

仕事援助/家政援助

9.2%

9.4%

9.4%

給付支出総額

2.6%

4.4%

3.0%

管理費

3.1%

5.3%

3.5%

義務保険料の収入

1.1%

2.1%

1.4%

 

前半の半年に支出が増加した問題領域の多くでは、その増加は1996年のとくに最後の3ヵ月に顕著に低下した。それが見られたのは医薬品、疾病手当、交通費及び療養であった。医薬品領域の結果は、分野の予算枠に制限効果があったことを示すものである。これによる動揺は、他方において、この給付の合理化によって患者に負担が掛かる危険がある。したがって、経済的かつ医学的な必要性に合わせた医薬品給付を達成し、医師の処方箋発行の態度に現われる突然の「Stop and go」を避けるために、第2改革法において、医薬品と療法に付けてあった予算枠を、専門医別の予算枠の方に付け替えたことは適切な方法と考えられる。

喜ばしいことであるが、一連の疾病金庫は競争の圧力により、また保険料率引上げが予測上困難になるということで、時代の徴侯を認識するようになり、財政責任を引受けることを具体的に開始した。とくに疾病手当の支出が、とりわけ地区疾病金庫、企業疾病金庫および連邦鉱山従業員組合の領域において、部分的ではあるが、かなりの支出減少を示したことに具現されている。これは計画的な症例管理によって、疾病手当支出を減少させただけでなく、いくつかの地区疾病金庫の例のように、不必要な入院を止めさせたからである。これによって被保険者組合の負担軽減は効果的となった。

昨年は医師および病院からは、支出を増加させるような作用はなかった。医師の処置に対する支出は、医師数の増加および給付量の増加にもかかわらず、数年来保険料収入の枠内に止まっている【支出増が保険料収入の増加率と同じ割合以内に止まっているという意味】−もっとも医師診療所における思い切った点数価【保険点数の単価】の引下げの結果もある。病院は1996年には僅かな支出減少を記録した。

 

1997年への展望

1997年には保険料負担軽減法の処置が、疾病金庫の負担を効果的に軽減させるであろう。しかし、同時に1996年の 63億マルクの赤字が返済されなければならない。関係者の節約努力が強化される一方、このためにはさらに赤字解消が必要で、これは既存の自己負担の5マルク、またはパーセントで5ポイントの引上げによって行われるが、これによって公的医療保険は年間約 47億マルクの負担が軽減される。1997年とそれ以降に、新たに赤字が生じて保険料率がさらに変化することが抑えられるかもしれない

厚生省は1997年の基本賃金が西では 1/2−1%、東では 11/2−2%上昇すると見積っているが、これは1996年より低くなるであろう。したがって、契約パートナーたちには、およそ 2400億マルクの給付額において、賢明な契約をもって経済性のある給付提供に貢献することが要請される、例えば家庭医と専門医のより良い協力について協定すること、開業医が週末にもっと在宅すること、または経済的な薬の給付などである。

保険料率引上げのさいに自己負担も引上げるというメカニズムを持つ第1改革法は、必要なものとして存続する。その理由は、保険料率を引上げる前に経済性の程度を明らかにせよという圧力は高まるけれども、他方において医学の進歩を財政的に支える必要があるときは、保険料率を引上げることが可能になるからである。

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U.

改革法の目的と重点

 

1.連帯としての医療保険を保証する

この改革は、第1及び第2改革法の大綱に入っている自主管理と自己責任を強化するもので、社会医療保険の給付能力と体制を改善し、その財政基盤を保証するものである。

これは以下のものを含んでいる:

【Subsidiarität:国家および社会哲学的意味での原則であって、ある社会的機能を満たそうとする場合、小さな単位で出来ないときに、大きな単位となれば可能となることを意味する(Creifelds:法律辞典による)。】

【訳者私見:例えば、社会福祉業務を市町村という小単位で行おうとして困難を感ずることがあれば、この原則を無視しているためと言えるのではないか?】

【ここに述べられたことが、ドイツの公的医療保険の基本の一つである「連帯」である。同時に疾病のリスクの高い人も、そうでない人も保険料の面で差別せずに対等に扱っている。また、わが国で現在論じられているような老人保険を別枠にするというような考え方は連帯の精神にはそぐわない。】

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2.自主管理を優先する

公的医療保険における自主管理の原則は、直接参加したり、関わったりする者に、保健医療制度の仕組みに貢献する機会を与える。補充性Subsidiaritätの原則は、国家的事項より優先する順位を常に自主管理に与え、関係者が自分たちの責任において、社会医療保険の懸案事項を正しく解決できることを要求する。

1992年の医療保険構造法は、被保険者が疾病金庫を選択する自由及びリスク構造調整の導入を創設して、疾病金庫の機能的競争および自己責任事項に対する重要な基礎を作った。

しかし、この競争の枠内で疾病金庫に与えられた機会は、今までのところでは保険料の額ならびに管理とサービスの領域に限定されていた。最近の数年、健康促進とマーケッティング市場活動並びに療養の領域における支出の拡大により、誤った展開となった。とくに給付提供構造の体制並びに給付と契約の領域において、自主管理の活動が今まで十分に活用されていなかった。

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3.疾病金庫によって給付が除外されることはない

国会審議と関係者の公開討議は、疾病金庫が給付領域において拡大された活動範囲を、給付の除外やリスク選択に誤用するかもしれない、そうなると医学的に必要な住民への給付の質が損われるという危険を指摘した。それによって立法府は、第2改革法で計画していた「給付の体制」なるものを削除した。これは疾病金庫に、療法、家庭患者介護、療養およびリハビリ、交通費および外国滞在における給付の「種類と範囲」を、自己責任として定義づける機会を与えようとするものであった。連立政党は最初から、この給付の体制が、経済性と質に関する給付提供と給付認可を意図したものであることを明らかにしていたにも関わらず、疾病金庫の幹部は、このような体制は、給付領域全般に除外という誤用をする可能性があると脅かした。立法府はこれによって結論を出し、給付カタログにおける給付体制を処理する機会を疾病金庫に与えなかった。それに代って、これらの領域の給付提供者を取り入れたパートナー仲間での解決という枠の中で、経済性を考慮し、質を指向した給付の条件が創られることになった。

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4.公的医療保険の財政的基盤を改善

公的医療保険の保険料収入は、被保険者の賃金と給料の上昇に大きく関係している。これについて昨年すでに示されたところによると、公的医療保険の会員の「保険料納入義務収入」【保険料納入義務のある会員が納めた保険料による総収入】は旧西ドイツ地域では 1.1%、旧東ドイツ地域では 2.1%の成長で、公的医療保険の統計が記録を取るようになってからは最低の上昇であった。今年はBMG(連邦厚生省)の見積による基本賃金上昇は、旧西ドイツで 1/2 から1%、旧東ドイツで11/2 から2%で、さらに低くなるであろう。1996年の 63億マルクの赤字を背負って、私たちは、それ以上の赤字を避けるためには、ブレーキの効かなくなった保険料率上昇によって労働コストを圧迫することをしないで、追加の財源が必要になる。

将来保険料率引上げを、より高い自己負担か、あるいは「流動的な」被雇用者の分担分で補うという連邦厚生省の提案したオプションは、連立政党の中で多数を得られなかった。それにより、代替案として総ての疾病金庫の被保険者に対して、既存の自己負担を5マルク、またパーセントで5ポイント引上げることになった。同時に保険料率引上げは、将来医学的に必要なことへの財源に限定するという疾病金庫への圧力を保つために、個々の疾病金庫は保険料率を引上げるときには、同時に他の自己負担も引上げるという制裁メカニズムを原則として存続させる。自己負担の引上げは、財政上の意義だけでなく、給付の行使を制御する効果もある。そして疾病金庫の財政発展にも好ましい影響がある。その場合、1997年3月11日(院内会派の決定の日)に発効した保険料率引上げは、総ての疾病金庫の被保険者に対する自己負担の引上げと抱き合せで適用される。自己負担は、第一には財政機能を満たし、適正で、しかも患者が医学の進歩の費用に参加することが容易であることを保証しなければならないが、特別な場合には、例えば不必要な医薬品の消費を減少させる制御機能も満たすことができる。

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V.

二つの法律が持つ最も重要な新規定

 

第1及び第2改革法は、自主管理体制と財政責任を拡大し、かつ被保険者の自己責任を強化する新規定を多数含んでいる。そこにはとくに以下のような手段が示されている:

  1. 既存の自己負担を5マルク、またはパーセントで5ポイント引上げる
  2. 個々の疾病金庫の保険料率引上げを自己負担引上げと抱き合わせる
  3. 保険料率を引上げた場合と定款を変更した場合に、被保険者は解約する特別な権利を有する
  4. 慢性患者に対する規定の改善
  5. 「体制による給付」に代って「パートナーシップによる解決」
  6. 被保険者が財政的に支出する定款給付
  7. 保険料払戻し、自己保有及び自己負担による今後の体制の可能性
  8. 改善された情報の権利および総ての被保険者に対する費用償還の機会
  9. 試行的計画と契約の体制を拡大する
  10. 医師報酬の新規定
  11. 医薬品と療法に対する予算を基準量(総枠)に替える

その他にも、第2改革法で歯科医師給付における新しい方向修正が取り入れられ、また体制作りの余地を拡大すること、および契約パートナーの財政責任を強化することによる病院給付の改革が前進した。歯科医師給付の領域では、予防を拡大すると同時に、固定補助金により義歯給付の制限をする。さらに、被保険者はホスピス給付のさいに疾病金庫の補助金を請求する権利を得る。

重要な新規定の内容を以下に詳しく説明する。

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1.既存の自己負担を5マルク、またはパーセントで5ポイント引上げる

すべての疾病金庫に対して、年の中頃に法律により、既存の自己負担は5マルク、またはパーセントで5ポイント引上げられる。自己負担の5マルク/5%−ポイント引上げで、最大 47億マルクの支出が減額される。この支出減額は、計算上約 0.25ポイントの保険料率の負担軽減に相当する。この自己負担引上げによって、1996年の赤字 63億マルクの一部が埋め合わされる。

個別に見ると以下の通りである:

 

 

支出減額

医薬品

4、6、8 マルクに代って

9、11、13 マルク

約 35.0億マルク

病院

12 マルク/9マルクに代って

(西/東)

7マルク/14マルク

(西/東)

約 3.5億マルク

療法

10% に代って

15%

約 2.7億マルク

交通費

20 マルクに代って

25マルク

約 0.3億マルク

義歯

40% に代って

45%

約 5.0億マルク

合計

 

約 46.5億マルク

 

療養では、1997年1月1日より適用されている 25マルク(西)および 20マルク(東)の自己負担は高くならない。母親療養とこれに連結したリハビリでは、自己負担額は病院治療の自己負担と同じになる。

特定の補装具(支持器、包帯、圧迫療法のための補装具)に対しては、第2改革法ではこれらの製品は公的医療保険の給付カタログから削除する予定であったが、それに代って自己負担が20%に引上げられる。低所得者と18才以下の子供は、自己負担は免除される。これらの自己負担によって、公的医療保険の支出減額は約 3.5億マルクになる。

1997年中期に5マルクまたは5%ポイントの自己負担引上げをするが、第2改革法は、病院治療、施設における予防とリハビリ給付、交通費および医薬品においてマルクで表現される自己負担を、一定の期間をおいて、被保険者の賃金報酬の伸びに適合させる。療法のようなパーセントによる自己負担では、このような引上げは必要がない。1999年7月1日以降に、交通費、病院治療、医薬品と治療材料、ならびに施設における予防とリハビリ給付の自己負担は調整される。調整の額は前2年間の賃金上昇と関連するが、連邦厚生省によってあらかじめ公示される。

病院の自己負担の場合は、年間最高14日という期間が適用される【入院の場合の自己負担は、低所得者もそうでない人と同様に、年間14日分は支払わなければならない】。低所得者に対しては、低所得者に対する免除という社会条項が適用されて、入院以外の自己負担は支払わなくてよい。これとは別に、子供は義歯と交通費以外は、自己負担から全面的に免除される。医薬品、治療材料、療法ならびに交通費の場合は、過大負担条項(年間総所得の2%を最高/慢性患者の場合は1%を最高とする規定)が適用される。義歯の場合は特別な過大負担条項が適用される。

【詳細は「4.低所得者規定の改善」に述べられている】

自己負担の引上げが、被雇用者と雇用者の保険料の対等の負担を本質的に変化させないことは、以下の数字によって明らかである:

全体の額と負担の割合は:

 

被雇用者

1,260 億マルク

= 51.9%

 

雇用者

1,170 億マルク

= 48.1%

 

 

2,430 億マルク

=100.0%

 

被雇用者

1,288億マルク

= 53.0%

 

雇用者

1,142億マルク

= 47.0%

 

 

2,430億マルク

=100.0%

 

国際比較をすると、デンマークとオランダを除くほとんど総ての似たような国々での1994年の個人の家計の自己負担は、ドイツより高くなっている。医師および歯科医師の治療【歯科は義歯は除く通常の歯科診療】は、ドイツでは相変らず自己負担なしである。このことは、比較しうるような工業国では、むしろ例外である。1996年にはドイツの年間の自己負担額は約 90億マルク(給付支出の 4%弱)であった。そして自己負担の引上げによって、これは約 145億マルク(給付支出の 6%弱)に上昇するであろう。そのようになっても、ドイツは国際比較における自己支払の割合において、下の方に位置したままである。それは、ほとんど総ての国が、自己負担を最近数年間に顕著に引上げたからである。

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2.個々の疾病金庫の保険料率引上げを自己負担引上げと抱き合せる

1997年3月11日(連立政党の決議の日)以後は、何れの疾病金庫においても、保険料率の引上げが効力を有することになるが、既存の自己負担は自動的に引上げられる【保険料率は疾病金庫によって異なる】。唯一の例外:疾病金庫のリスク調整で、転送支出という変更が認められていると、保険料率引上げによって、自己負担引上げが作動することはない。

3月11日前に発効する保険料率引上げは、第1改革法の自己負担制裁には該当しない。保険料率引上げの効力発生を決定するのは、監督官庁への申請提出ではなく、疾病金庫が引上げの承認と公示をすればよい。ほとんど総ての補充金庫が1997年3月10日の「行動協調会議」において、連邦保険局に保険料率引上げの申請を提出したが、これは自己負担承認の免除にはならない。【この場合は、保険料率引上げが3月11日以前の申請提出であったからといっても、、自己負担は引上げなければならない、という意味。3月10日の時点では両者は連動する。】

保険料率引上げは、次のメカニズムで作動する(リスク構造調整の例外規定に該当しない場合):保険料率を 0.1%ポイント引上げるごとに、1ヵ月後にマルクで表示されている自己負担は1マルク、またパーセントで表示されている自己負担は 0.1%引上げられることになる。これらのメカニズムが最初に効力を発生するに当って、関係者に新規定への心構えが十分できる機会を与えるために、2ヵ月の移行期間をおくこととする。

具体的に示すと:もし将来ある疾病金庫が保険料率を 0.3パーセント引上げると仮定すれば、1997年中期の第2改革法の法的自己負担引上げにもとづいて、その被保険者に対して、以下のように自己負担を引上げなければならない、ということになる:

保険料率引上げを行い、それにより自己負担引上げをした疾病金庫は、保険料率を引下げるときは、所属する被保険者の自己負担を再び相応するだけ引下げるチャンスを獲得する。すべての被保険者に適用される法的に想定される額と割合は、そのような場合それを下回ってはならない。

保険料率引上げに対応して生ずる自己負担引上げは、被保険者の人気競争において疾病金庫の地位を著しく弱いものにする。したがって、この規定の目的は、保険料率引上げを、制裁メカニズムによって困難にさせることである。しかし他方において、保険料を引上げると、それに連結した被保険者の自己負担も増加して、金庫の追加財政資源が開発されることになるので、そのことは保険料引上げの要請を減弱させることになる。

個々の疾病金庫において、これがどのように作用するかを以下の例によって示してみよう:

モデル疾病金庫Aの場合、保険料率 0.1ポイントは 1,700万マルクに相当し、また1マルク と1パーセントポイントの自己負担引上げは約 900万マルクに相当する。金庫が約 1,000万マルクの追加の財政需要を持つとする。この財政需要をカバーするには、現行法と第1改革法とでは以下のような結果となる:

 

現行法によって計算すると

保険料率を 0.6パーセントポイント引上げる(自己負担制裁はない)【自己負担と連動しない計算方法となる】

 

増える収入

=約 1億 200万マルク

−  その内訳は

 

0.3%パーセントポイント

雇用者/年金保険者

=約 5、100万マルク

 

0.3%パーセントポイント

被雇用者/年金受給者

=約 5、100万マルク

月の総所得が 4、000マルクの人の場合には:

 

0.3%パーセントポイント

負担の追加 雇用者

= 12マルク

 

0.3%パーセントポイント

被雇用者/年金受給者

= 12マルク

 

第1改革法によって計算すると

保険料率を 0.4パーセントポイント引上げる、自己負担制裁を伴う【自己負担と連動する計算方法となる】

 

増える収入+支出減額

約 1億 400万マルク

− 

保険料の増収分

=約 6、800万マルク

その内訳

 

0.2%パーセントポイント

雇用者/年金保険者

=約 3、400万マルク

 

0.2%パーセントポイント

被雇用者/年金受給者

=約 3、400万マルク

−  4マルクと4パーセントポイントを負担する患者は自己負担引上げによって

=約 3、600万マルクの支出減額

月の総所得が 4、000マルクの場合には:

 

0.2%パーセントポイント

負担の追加 雇用者

= 8マルク

 

0.2%パーセントポイント

負担の追加 被雇用者

= 8マルク

このほかに患者本人にかかってくる追加負担は、各人がどの程度医療給付を利用するかによる。

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3.特別な解約権

疾病金庫に保険料率引上げを思い止まらせるための圧力は、保険料率引上げの都度、会員が金庫を解約する特別な権利を持つことによって強化された。特別な解約権は、年度末の解約の代りに、保険料率引上げに当って、会員が事前に金庫を替えることが3ヵ月の解約期間でできるようにした。(現在これは任意被保険者では普通に行われている)。会員権の解約は、このような場合に、保険料引上げ発効日のある月の月末まで1ヵ月の期間可能である。例えば:保険料引上げが1月1日でる場合、解約が1月31日までになされていれば、金庫の変更は3月1日より実行される。

【任意被保険者:例えば収入が保険料算定限度額を超えたため、公的医療保険に加入する義務のなくなった人でも、一定の条件を満たせば公的医療保険の任意被保険者として加入することができる。これ以外にも任意被保険者については種々の規定がある。】

これにより被保険者は、保険料引上げだけでなく、自己負担引上げも避けることができる。特別な解約権は、総ての保険料率引上げの場合、またリスク構造調整のための例外条項により自己負担引上げが生じない場合にも適用される。ただ特別な3種類(連邦鉱山従業員組合、農業疾病金庫、海員疾病金庫)だけは、将来も疾病金庫変更の可能性はない。金庫がその既存の定款による給付を変更または削除しても(例えば、外来療養の補助金または母親療養のさいの補助金の全面的費用引受けの切替え)、被保険者は短期間で他の金庫に替ることができる。

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4.低所得者規定の改善

法律は低所得者規定の改善によって、慢性患者が自己負担の法的引上げ、並びにその疾病金庫の保険料率引上げによる自己負担引上げの可能性によって、過大な負担がかからないように守っている。所得と関連した従来の負担限界が引下げられて、このような人たちの保護が今度の法律で改善された。

社会的条項(社会福祉法典X【医療保険構造法のことである】§61)は、低所得者、社会扶助および失業救済金の受領者、並びに連邦職業教育促進法を受けている人を自己負担から免除しているが、これらはそのまま存続する。それにより、1995年には約800万人の被保険者が、医薬品、治療材料、療法並びに施設での予防およびリハビリ療養の自己負担から免除されている。例えば、旧西ドイツ(東ドイツ)の夫婦は、1997年1月1日より、2,348.50マルク(2,002マルク)の総収入までならば免除される。同様に約1,200万人の18才以下の子供たちも免除される。

特に改善されるのは慢性患者の保護である。同じ疾患で長期の治療を受けており、最低1年間負担限度である収入の2%まで支出せざるをえなかった被保険者は、次の年には2%の過大負担条項の上限が、生計のための総収入の1%に減額される。この新規定は、この規則が発効する時点で、長期治療がすでに最低1年に達していて、1年間負担限度までの自己負担を支払っている慢性患者にも適用される。

社会的条項および過大負担条項は、医学的適応ではなく、被保険者の経済的能力を指向したものである。したがって、慢性患者における1%の負担限度は、その長期疾患の治療に必要な自己負担だけでなく、医薬品、治療材料、療養並びに交通費に由来する総ての自己負担に適用されるのである。つまり、月額としてみると、 2,500マルクの収入の慢性患者は、従来の 50マルクに代って将来は最高で 25マルクの自己負担となる。しかし、病院自己負担【入院時の自己負担:入院のさいは14日まで自己負担するが、14日を超えた分には自己負担はかからない】は、低所得者条項と過大負担条項には該当しない。【食費などは入院していなくてもかかる日常生活の費用であるので、免除の対象にしないという基本的考え方による】

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5.体制による給付に代ってパートナーシップによる解決

公的医療保険の給付カタログは、支出の約 97.5%が通常給付である。そこでは、個々の疾病金庫には、給付の種類と範囲を決定する機会が与えられていない。これは第2改革法の素案によって変更された。それによると、以下の給付が疾病金庫の給付体制の対象となるはずであった:

それにより、疾病金庫が給付体制を検討する範囲は、給付支出の約 2.5% から約 7% に拡大するはずであった。連邦政府は最初から、体制検討の範囲を拡大するといっても、給付の全範囲に除外の権限を与えるものではなく、また給付を他の社会保障的給付システムに押しやることではないことを明確にしていた。それどころか、疾病金庫がこの部分で、給付の質を考え、被保険者の医学的需要に適合させる機会を与えるはずであった。しかしながら、金庫の一部は第1及び第2改革法に対する議論を、リスク選択と給付除外で脅し、慢性患者、障害者並びに該当する給付提供者を動揺させるのに利用した。

連立政党はそれを引継ぐものとして、パートナーシップによる給付の体制モデルと引替えた。給付の体制に関する第2改革法の原案に予定した規定は、すっかり消去された。外国での給付、療法、療養とリハビリ、家庭での患者看護並びに交通費は変更されずに、請求権のある給付として疾病金庫の給付の範囲に止まった。疾病金庫はこれらの給付領域において、個々の金庫として、あるいは共同で、新しい定款を選択することができなくなった。

その代りとして、療法、在宅患者看護並びに療養とリハビリに対して、いわゆるパートナーシップ・モデルを予定している。このパートナーシップは基本的に二つの立脚点を持っている:

  1. 療法、在宅患者看護並びに療養とリハビリの処方に関する医師・疾病金庫連邦委員会の権限を具体化し、該当する給付提供者からなる主要な組織が、連邦委員会の意志形成に従来よりも強く関与させられる。
  2. 疾病金庫の中央連合会と該当する給付提供者の団体は、連邦レベルで給付提供の質の確保と経済性のための概則的提案を結ぶ。この概則的提案の中には、契約医からの専門家も含まれる。

このコンセプトにより、療法、療養とリハビリの処方並びに在宅患者看護における給付水準と給付効率を改善する目標が求められる。最近これらの領域は高い上昇率を示していたが、上記の方法によって、さらに上昇が続くことは回避されるであろう。

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6.被保険者が財政的に支出をする定款給付

金庫の新しい給付権利は、定款の給付として法律で定められた給付を拡大する、あるいは法律により定款給付として除外されている給付を被保険者のために提供することが可能になることである。もちろん、このような追加の定款給付は、その金庫の被保険者の保険料だけから支出されなければならない;被保険者がこのような定款給付によって財政的支出をしても、雇用者には社会保険料分担金の負担はかからない。

これらの定款給付に、例えば通院温浴療法の補助金増額が含まれる。将来は被保険者が財政的支出をする定款給付として、契約医給付に関するいくつかの給付も提供されるようになる。ここで取り上げられるのは、医師・疾病金庫連邦委員会によって、すなわち共同の自主管理によって、定款給付として提供が提案される契約医給付である。さらに、保険料負担軽減法によって削除された健康促進方法が、定款によって再び導入されるようになるが、将来これらは被保険者の保険料から支出されることになる。

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7.保険料払戻し、自己保有及び自己負担による今後の体制について

疾病金庫の自主管理は、将来その任務の枠内において、被保険者と財政的に関連する事項が追加される可能性を持っている。それにより、各疾病金庫は、所属する被保険者全員が利用可能でなければならない下記の規定を用意することができる:

【以下の内容は一部理解困難である】

保険料償還と自己保有の場合、保険料のメリットは専ら被保険者のためになる。

民間医療保険では、個々の被保険者は、特別な給付や保険料のオプションを持つことができる。これとは違って、民間医療保険にみられるような給付カタログの枠内で個々に選択したり、選択しなかったりすることは、ここでは規定されていない。その理由は、連帯として財政運営をする公的医療保険とは相容れないからである。被保険者は、もし定款給付に納得できないときには、疾病金庫選択という枠内で、疾病金庫を代えることができる。被保険者は各自の好みにより、それぞれの疾病金庫が追加提供するものとその追加保険料を見て、何れか一つの疾病金庫を選択することができる。

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8.費用償還【療養費払い】と被保険者への情報提供

被保険者が、給付の要求を控え目にすることを、より一層心掛けてもらうために、第2改革法は費用の透明化と制度の能力を高める一連の規定を導入した。

従来は任意被保険者のみにあった費用償還の機会を、将来は公的医療保険の総ての被保険者に選択できるようにする。しかし、現物給付の原則の枠があるので、処置料の請求書を作成できる給付提供者だけが許可される。費用償還の場合も、契約医または契約歯科医師として、経済性のある給付をすることを保証できる給付提供者だけが、疾病金庫の負担において行うことが保証される。

給付提供者(医師、歯科医師及び病院)は、かれらが行った給付の範囲と費用について被保険者に直接かつ即刻知らせることが義務づけられる。詳細については、疾病金庫中央連合会は、給付提供者の組織と連邦レベルで契約を結ばなければならない。

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9.試行的計画と契約の体制を拡大する

試行的規定の枠内で現行法を変更した試行的計画を実施するという、疾病金庫に従来から存在していた可能性は、大きく拡大される。これにより、ドイツの保健医療と社会医療保険の革新機能が決定的に強化されることになる。

将来疾病金庫とその連合体並びに保険医協会は、給付の質と経済性を改善するための課題設定の枠に

を期限を定めた試行的計画の中で試験する。その場合、この試行的計画を科学的にフォローし、結果の評価と公表を予定している。それにより、関心を有する一般の人々に、この試行的計画についての認識が得られることになる。

診療所の契約医の給付に対する試行的計画の実施は、保険医協会と一緒になって(反対を押し切るのではなく)実現されるべきである。被保険者の参加とこの試行的計画による給付提供は自由意思による。

さらに、被保険者による医師の重複、すなわち所謂「Doctor-hopping」が無調整になることを避けるために、契約医給付の枠内で、疾病金庫と保険医協会に適切な試行的計画を実施する機会を与える。さらに契約パートナーたちは契約医給付において、重複請求の場合には調整をよく行い、また前後に処置をした医師たちの間での情報交換を良くすることによって、上記のような欠点を避けるための適切な方法を契約することが義務づけられる。

予め医師・疾病金庫連邦委員会によって、治療上の効用に論議の余地がある検査または治療方法として拒否されたときは、生物医学的研究の財政支援並びに医薬品と医用製品の開発と試験は、試行的計画の枠内においては、診療所医師の給付内での実地試験と同様に将来も除外される。現行の薬事法及び薬局法の規定によって変更することはできない。したがって、医薬品の代替販売制度は、これからも行われない。

試行的計画の枠内においても、自主管理の信頼された組織構造は契約の形態と進捗を保証する。これらの条件の下に、疾病金庫は医師及び歯科医師の小グループとともに新しい組織形態を実地試験できるようにするため、疾病金庫の中央連合会と連邦保険医協会は該当する基本契約を締結する。それにより、例えば家庭医がある疾病金庫との間で特別な試行を実地試験できるように、保険医協会の専門医の過半数が、これを妨げないことを保証しなければならない。

共同自主管理は、試行的計画を広げて、契約医給付に関して連邦レベルで、全報酬を契約医給付を行う専門医の種類別に、異った報酬割合とすることを基礎づける契約を行う機会を得る。その場合、報酬割合を定める基礎を規定することができる。この枠組みの中で、従来通り疾病金庫と各保険医協会は、自由意思に基づいて、家庭医と専門医が「別々の鍋」を持つこと、それをさらに専門医の種類別にすることが予定されている。

【訳者注:ドイツでは古くから医師の診療報酬は疾病金庫から一括して保険医協会に渡されるが、その配分は保険医協会に一任されている。保険医協会は診療請求内容を審査の上、各保険医がお互にもっとも納得できる配分のルールを作って配分を行っている。「一つの鍋を分かち合う」という言葉が昔から用いられ、伝統の精神となっている。

試行する異った報酬割合というのは、従来一律であった1点の単価を、専門医の種類によって例えば 9.4ペニヒ、8.7ペニヒといったように差をつけ、専門医間における平均収入の格差を縮小することである。】

契約医と疾病金庫は、所謂「構造契約」に関して、契約関係における別の体制を持つことになる。この契約は契約グループに、給付及び報酬の構造を協定する機会を開くものである。それは被保険者が選んだ家庭医、または被保険者によって選択された家庭医と専門医の結合(「診療所網」)に、契約医の給付並びに医師が処方または指示する給付の質と経済性を保証する責任を引受けさせるものである。その場合、医薬品、治療材料、療法並びにその他の給付領域に対する支出も含めた予算協定の機会が存在する。このような新しい給付構造への参加は、被保険者だけでなく契約医に対しても自由意思によるものである。

構造契約はそれによって特定のケースにおいて、保健医療政策的に意味のある給付構造の長期的協定を可能にする。これは試行的計画の制限(時間的な期限と科学的なフォロー)を考慮しなくてよい。

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10.医師報酬の新規定

重要な新規定が、保健医療委員会で決定した変更提案によって、医師報酬に関連する第2改革法に示された:

契約医給付において、従来から使われていた「変動点数」による総額報酬に代って、予め協定された固定点数の「通常給付量」が導入される。それにより、医師の給付のさいの透明性と給付の公正さが高められ、所謂「ハムスター車輪効果」、つまり給付の点数を著しく下げると、このような点数の下落を補おうとして、医師に無分別かつ医学的に過剰な量的拡大を動機づけてしまうということを、回避することができる。同時に今まで行われてきた総額報酬の枠では、医学的に不必要な量的拡大に関与して来なかった医師の一部には、生存を脅かされるような報酬の落込みが生じてしまう。

そこで契約パートナーたち(疾病金庫連合体と保険医協会)は、症例値Fallwertenと症例数Fallzahlenを基礎として、契約医給付の量に対して専門医別の診療所報酬にすることを協定する。専門医別というのは、家庭医と各種専門医に対して、それぞれ異なった規定給付報酬額を協定することを意味する。その場合に、専門医の中に特別な資格を取得している者がいれば、それも考慮できるようにする。

この取決めによる給付報酬額が制限を超えた場合には、量的拡大につながる刺戟を阻止するために、契約パートナーたちは超過した給付に対して報酬を段階的に引下げることを行う。しかし同時に、高価につく病院入院を避けるのに役立つ週末または救急のサービスなどのような、推進を必要とする給付では、例外扱いとして、段階的引下げをしないように考える。

医師給付の新しい規定が、数百万マルクのレベルで疾病金庫の支出増を来すであろうという疾病金庫の非難は誤りであり、近視的である。医師の報酬に圧力をかけることにより、公的医療保険の支出拡大を操作できるというのは、錯覚のようなものである。医師への支出増加は、この数年間は明らかに平均以下となっている。それにより、公的医療保険の給付に対する支出では、医師の給付の割合は減少を続けている。つまり、旧西ドイツ地域では1975年の 19.4% から1995年には 17.2% に下がっている。一方、西ドイツ地域で契約医給付に参加している医師の数は、この期間に 64,000 から 101,000 人に、すなわち約 58%増加している。その間に病院領域の割合は、診療所領域の犠牲によって 30.1% から 34% に拡大している。

公的医療保険は、医師の報酬1マルクに対して、約4マルクを医師の処方または医師が指示した給付に支払っていることになる。公的医療保険の支出力学の問題点は、医師自身が行った給付ではなく、医師が処方・指示した給付の方にある。ここで疾病金庫にとって明らかになった一連の手掛りは、賢明な契約により、医師と共同して意義のある節約をするということである。

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11.医薬品及び療法に対する予算を基準量に替える

第2改革法で採用された変更では、医薬品及び療法に対する予算は、専門医別の基準量と交替させられた。従来の法律でもこのような交替はオプションとして可能であった。

【ここで言うところの「予算」はその領域全体の総枠、「基準量」は個人レベルで割当てられた枠と考えればよい】

医薬品及び療法の給付に対する基準量は、専門医別に、できるだけ速やかに全部の疾病金庫によって保険医協会と共同かつ統一的に協定される。この協定は仲裁に持込むことが可能である。その場合、医薬品と療法を一緒にした共同基準量も協定できる。基準量はそれによって、契約医給付における経済性審査のための基礎となる。

この変更によって、医薬品及び療法に対する予算の超過に対して、一つの保険医協会に属する総ての医師が責任を持つというこれまでの集団的責任が、個々の医師の処方態度に責任を負わせる形の基準量と交替することになる。これにより、医薬品及び療法の経済的処方に対して、一層狙いが定まった刺戟となる。基準量を超過した場合は、契約医給付における経済性審査が開始される。個々の医師が、診療所の特殊性に基づかないで(例えば、AIDS またはガン患者の割合が高いというような)、患者に高い医薬品コストをかけることをすれば、超過の程度によって、自動的償還の可能性が生じる。

医薬品及び療法に対する予算が基準量と交替した場合に、これが支出の拡大を招くという非難は全く証明できないことである。反対に:医薬品及び療法に対する予算は、1995年と1996年に、高い上昇率と著しい予算超過を阻止することができなかった。これは疾病金庫に、1994年のときとは違って、1996年の予算を後から約 11億マルク引上げさせる結果となった。そのさいに、22の保険医協会中14においては、1996年の予算協定はまだなされていなかった。

医薬品に対する予算は、1996年に旧東ドイツ地域で、被保険者1人当り旧西ドイツ地域の医薬品支出の 114%が費やされたのを阻止することができなかった。1996年末の動向が証明するように、医薬品及び療法に対する予算は、医師の処方態度に明らかに突然の変化をもたらした。そのような「Stop and go」は、医薬品及び療法の給付の質における低下を必然的にもたらすに違いない。年度末に向う時期に、切迫した予算超過に関する論議によって、医師の予算態度にいつもこのような特徴が現われる。したがって、給付を処方・指示するときに、個々の医師に、一層の経済性に対しての継続的な刺戟を与えることになる基準量への転換は、より適切な道である。

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12.契約医の需要計画と救助業務のときの救急医給付における変更

需要計画において、拡大された専門医資格が医師・疾病金庫連邦委員会に提出された。同じことは歯科医師・疾病金庫連邦委員会にも適用される。

【拡大された専門医資格というのは、通常の専門医資格だけでなく、卒後研修規則で規定されたサブスペシャリティー、あるいは特殊な専門的領域を研修して得た専門的資格を指すものと考えられる】

連邦委員会は現行の需要計画に弾力性を持たせるために、指針の中に契約医の「Job-Sharing」と医師の雇用を容易にするための規定を作ることを課題とした。何れも、医師診療所の給付範囲が、それによって本質的に拡大しないことを条件とする。この規定の目的は、この規定によって給付拡大という危険を引き起こすことなく、各医師の業務の場所が確定した後に、多数の医師の要求に応じ、さらに医師の従業の機会を作り出すことである。

特定の専門に関する場合には、開業認可制限の指示の基本である比率を、新たに確定または適合させる権限を連邦委員会にさらに与える。とくに該当するのは、新しい専門医の種類と、それによって新たに需要計画の中に取入れられる専門医領域が作られるとき、あるいは契約医給付のために、個々の専門領域における医師の最低数を十分に確保することを保証するときである。後者によって、単なる地域的配分規定としての現在の需要計画が隘路とはならずに、医師の後継者の利益を確保することになる。

開業認可制限の例外によって、院外医師の業務が、診療所と病院の業務の重要な提携として強化されなければならない。

【訳者注:院外医師Belegarztというのは、例えば眼科や耳鼻科などの専門医の開業医で、病院と契約を結び、病院の施設と職員を使って自分の患者の診療、例えば手術ができる医師のこと。ドイツ全体では、病院で従事する医師の約6%が院外医師で、この制度は小、中病院に多い。受け取った診療費の一部を契約により病院に渡すことになっている。】

救助業務の枠内での救急医としてのサービスは、契約医の定型的な任務ではない。【ここで言う救助業務は、医師の通常の救急業務ではなくて、消防署の救急隊の仕事に相当するもの】したがってそれは将来、保険医協会の安全保証任務から取り外すことになろう。それは疾病金庫に、別の方法による救急医給付を保証すること、例えば救助業務の枠で給付提供者と契約するというようなことを義務づけることになる。州の立法府が目的に適っていると考えれば、保険医協会に救急医サービスとして委託することが可能となる。包括規定は、救助業務における成熟した構造が保たれることを保証する。

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13.病院給付の改革の続行

病院とのコンセンサス

病院領域における手段を準備するために、ドイツ病院協会、連邦私立病院連合会及び病院長会との極めて濃厚な討議が行われた。これらの会は、自制による安定した貢献を保証するための共同責任をとる用意のあることを表明し、以下のような基本的コンセプトを共に担っていく:

【民間医療保険に加入している私費患者は通常このような病室に入院するが、公的医療保険加入者でもこのような病室に入るために、民間医療保険に差額支払のための追加保険をかけることができる】

財政的拡大に対する責任引受けを準備することで、連合体は、改革の原則「自主管理を優先し、国家の規制を少なくする」を病院領域にも導入できることになった。

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給付を指向した病院への支払

1993年以来実施されてきた固定した予算化は計画通り終了した。病院予算の増加制限は非常に効果を挙げた:

【この節は理解困難であった】

それによる経済性改善の可能性が、総ての病院で出し尽くされていないことも確かである。病院は保険料負担軽減法により、介護保険法とFehlbelegungen削減の導入の結果である節約に対して、次の3年間はその予算の1パーセントを調整に入れなければならいので、付加的な法的命令による節約割合は適切ではないであろう。それどころか、経済的予備は、地区の状況に応じて別々に開拓されなければならない。

病院の成長は異っているので、個々の病院の医学的給付をもう一度より深く考慮するような財政規定が今では必要となった。しかし同時に、病院は−他の給付領域と同様に−公的医療保険の安定した保険料率に貢献しなければならない(保険料率安定の原則)。

解決は、非医学的コストの増加(通常のコスト増加、例えば人件費、保障契約に払う保険料など)を、疾病金庫の収入能力(基本賃金率)に制限するという制御計画に存在する。医学的理由による財政需要(例えば、移植臓器の増加、医薬品の増加など)は、これらの成長限界からは除外される。症例が増えることによる(例えば、透析の増加、手術の増加など)または高価で新しい給付(例えば、新しいガン治療)または病院計画による医学的な容積拡大は、疾病金庫との折衝に持込むことができる。

年度経過中に給付の拡大(症例の増加)が起こった場合は、年度初めに協定した予算に対して追加されるコスト(変動コスト)は、その分に応じて財政支出される(予想を超えた調整)。

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自主管理は増加率を協定する

総ての病院に対する通常の費用増加を制限し、同時に症例一括概算額と個別料金の額の上昇に対する上限となる基本賃金率(疾病金庫の収入増加)は、病院と疾病金庫中央連合会によって、毎年秋に翌年の分を連邦レベルで協定する。これは総ての病院に対して拘束力を有する。この率は、1997年に対しては、ドイツ病院協会のコンセンサスで法律により 1.3%の高さに確定した。連邦公務員給与表(BAT)による給与が基本賃金率より上昇すれば、それに相当する追加が考慮される。

旧東ドイツ地域では、9月1日よりそれに加えて賃金契約(BAT)による東−西−調整が(0.24%)、並びに企業老齢給付の導入(076%)が考慮されるので、増加率は 2.3%になるはずである。この規定により、給付に合わせた支払システムに戻ることになる。

コストを指向した制限と、医学的給付の発展に道を開くこととを結び合せるために、総ての病院はコスト制限と経済性を高めることに関心を向けなければならない。患者に受入れられ、追加の給付を行わなければならない病院は、より高い予算を協定することができる。患者を失う病院は、それに応じて予算減額を甘受しなければならない。

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予期した以上の増収、または以下の減収の調整は給付に合わせて修正される

病院が協定した予算で定めた計算日数あるいは症例一括概算額と個別料金の数に達しないときは(例えば、患者が少ない、または入院日数が短縮)、「予期以下の減収」となる(実際の収入が予算より少ない)。「赤字額」は1997年より 50%調整される(従来は 75%)。それを別の病院で給付を準備している場所の財源に当てる(固定費用)。75% から 50% への引下げは、給付に合わせた支払システムの調整を考慮してなされるものである。

協定した予算を超えた「予期以上の増収」は、1993年以前の時代と同様に、一部は病院に残る(変動費用の補填)。そのような儲けは、病院が協定したよりも多くの給付を行ったときに起こる(例えば、症例増加またはより長期の入院を伴った重症患者)。予期以上の増収は全部返済する結果となっていた1993年から1996年まで定められていた固定予算は、今回の規定によって廃止された。

調整率は以下のようになった:

協定した予算の 5% までの予期以上の増収は15% まで病院に残る、予算の 5% を超えた予期以上の増収は10% まで残る(1993年までは病院に一律に25%が残っていた)。

症例一括概算額と個別料金の領域では、予期以上の増収は病院に 25% が残る(従来の 50% に代って)。高額なコストの物品を含んだ給付、例えばペースメーカーの挿填、は特別規定となる。

予期以上の増収からの割当分の引下げは、追加給付の平均変動コストが基本的に補填されるように算定される:同時にそれは、医学的に必要でない給付の拡大を刺戟させないようにする。

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「高額な」保守処置への財政支出

1978年から1993年までは、建物や外部の「高額な」保守処置は、州から援助費を介して財政支出されていた(例えば、建物正面の改装、エレベーター)。連邦行政裁判所1993年1月21日の判決が、これらの費用は手続上の不備(病院財政法における法的基礎の欠如)のため、看護関連料金【日数計算で支払われる入院看護料のことと考えられる】とすることができると宣告したので、バイエルン州を除く諸州は財政支出を中止した。4年を経過した今日、ドイツ病院協会の見積りによると、建築上の保守需要は 35億円に累積した。

保守に関わる財政支出を安定した法的基盤に乗せ、州が長期に行うようにするという連邦政府と連立政党の二つの前進は、連邦参議院で挫折した。一部保安上の理由(防火)から必要な保守処置を可能にするために、また建築素材が給付水準からみてマイナスの結果をもたらすような損傷を防ぐために、そして投資を放置すると日常業務のコストを高くするという理由で、連立政党は以下のような財政支出規定を決議した:

看護関連料金からの財政支出では、建物の年数などによる差異を考えることは不可能である。ドイツ病院協会との一致した意見では、予算並びに症例一括概算及び個別料金の額の 1.1%を一括して保守費用に支払うことになる。

従来の個々の援助(病院の建築申請の審査)を継続することは、州が財政支出しなければ不可能であろう。費用は病院に保守処置に財政支出するという目的を保証している(使途が決っている)。保守に支出しない病院はその金を積み立てることになる。

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旧東ドイツ地域に対する病院投資プログラムの枠内における看護関連料金への投資手当金の引上げ

医療保険構造法の大綱において、旧東ドイツ地域の州に対して、連邦、州及び疾病金庫が関与する 210億マルクの病院投資プログラムが創られている。ブランデンブルグ、メックレンブルグ−フォアポンメルン、ザックセン、ザックセン−アンハルト、チューリンゲン及びベルリンの諸州【いずれも旧東ドイツ】は1995年から2004年の間に、総額 70億マルクの財政援助を病院投資のために連邦から受け取る。諸州【西側】は1995年から2004年のプログラム期間に、総額最低 70億マルクの資金を提供する。疾病金庫からの財政寄与としては、1995年から2014年まで、年額約 3.5億マルクを算定日(入院日)1日につき 8マルクの手当金として、旧東ドイツの州の病院の看護関連料金に提供する。それによって20年の期間に総額 70億マルクの財政寄与をすることになる。

1995年と1996年には、旧東ドイツ地域(東ベルリンを含む)は算定日総数は 3500万日以下になり、1992年に医療保険構造法が発効したときの基礎となった数値以下となっている。

【訳者注:旧東ドイツ地域のベッド数は1991年には 14.2万床あったが、1994年には 11.2万床に減っている。入院1日につき 8マルクの手当金を補助すると上記のような金額になる。】

したがって、1998年からは患者もしくはその疾病金庫が受け取る投資手当金は 8マルクから 11マルクに引上げられる。疾病金庫の財政支出は、それによって1992年に立法府によって議決された負担額(年3.5億マルク)に相当することになる。

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自主管理の下に症例一括概算額と個別料金へ転換する(民営化処置)

1992年に医療保険構造法が議決された後、新しい料金制度が導入され、1995年1月1日の新しい連邦看護関連料金規則【Bundespflegesatzverordnung 正式の訳語を知らないのでこのような名称にした】により、症例一括概算額と個別料金が州統一の料金額で定められた。連邦(省令設定者)は当時、 73の症例一括概算額と 147の個別料金によって新制度の導入を保証した。この料金によって病院の全給付の 20−25%(約 160−200億マルク)が支出された。

この最初のステップの後、料金カタログの拡大は1998年から連邦レベルで自主管理に引継がれるが、それによって国の規定は撤回される。疾病金庫と病院の中央連合会は、できるだけ速やかにその他の給付を料金【新しい形の料金】に移行させ、既存の料金カタログを改訂された給付またはコストに適合させなければならない。変更は1997年7月1日から協定できる。契約パートナーが同意できないケースに対しては、連邦レベルの新しい調停機関によって争いが解決される。

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看護−要員規定の廃止(民営化処置)

看護−要員規定(PPR)、すなわち連邦政府の規則によって、総ての病院の看護の人手の需要が、規定された基準によって把握され、その財源が規定された。1993年に導入されたこの方法は以下の理由により廃止される:

規制緩和の意味で、責任は再び病院と疾病金庫の自主管理に置かれることになった。契約協定の枠内において、PPR−尺度を適用することは原則として可能である。しかし、総ての病院に対して拘束力のある基準は廃止されることになる。

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大型機器計画の廃止(民営化処置)

1990年から実行されていた大型医療機器に対する申請・認可手続に労力を使うことが、適切であるという証明はされなかった。計画はきまって現実に遅れをとっていた。大型機器の企業は地元の裁判所に訴訟を起こした。したがって、この計画を継続することは無意味となった。

大型機器計画の廃止は、法的基準の撤去へのさらなる一歩である。カタログに同調させる義務のある大型機器並びに投入数の根拠を基準づける法規は廃止される。大型医療機器を経済的に投入することを、報酬支払規定によって確保することが、自主管理パートナーたちの将来の任務となる。

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1996年の安定化法律についての説明

1996年の病院支出の安定のための法律について述べると、1996年の一括払いに対する労働協約によって定められた変更率は、1996年の予算増加を決定するものであると説明された。この説明によって、とくに訴訟手続を防ぐために、法的安定性が作られなければならない。1996年に対しては、旧東ドイツ地域では 1.106%、旧西ドイツ地域では 0.885%の変化率が、成長の上限として定められる。

なお、追加症例として移植を行ったり、血友病を治療した病院に対して、軽減が設けられる。これらの病院は、それによって得た予期以上の増収は全額ではなく、移植の場合は 50%だけ、血友病のときは全く返却しないことになる。

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14.歯科医師給付における新しいオリエンテーション

公的医療保険の歯科医師給付では、予防と歯の保存処置が義歯の給付に比べて低く位置付けられている。この間違った優先順位により、ドイツ国民の口腔の健康状態は期待よりは良くなく、歯科給付に対する被保険者当りのコストは、世界の比較できる総ての先進諸国より高くなっている。さらに、補綴給付に対する現行のパーセントによる補助金は、公的医療保険において特別に適用されている給付形態が、高い補助金を出す結果を導いている。さらに、補綴給付に対する支出が不当に高く、補助金の実施が正当でないと見られる原因ともなっている。

政府連立与党により議決され、1997年1月1日に発効した保険料軽減法によって、公的医療保険の歯科給付における基本的に新しい軌道切換が優先的に扱われた。科学的知識と数多くの国際的実務経験に基づくと、義歯は相応する自己予防と予防を指向した歯科処置によって避けることができる。このための条件は、小児及び青少年期における表面予防処置と、成人が予防的処置を受入れることである。連邦のいろいろな州で、ずっと前からグループ予防プログラムが成果を挙げている。さらに、連邦立法府は医療保険改革法(1988)と医療保険構造法(1992)によって、とくに小児と青少年に対して一連のより広範な予防処置を導入した。

公的医療保険では、歯科の予防領域における新しい規定によって、現実的な受けとめ方で見積って 2.9億マルクの支出増をする。予防処置を行うことで数十億マルクの余分な負担がかかるのではないかという、いくつかの疾病金庫の懸念は理由のないことである。予防に対する余分な支出は、同額のセラミクス加工が不必要になると予想されるので、負担の軽減となる。

これらの強化された予防への努力は、口腔衛生の顕著な改善を導いた。それにより、保存並びに補綴治療の需要を著しく減少させることができた。

もちろん、最善の自己予防と歯科医師のケアにも関わらず、義歯が必要になるケースは存在する。このようなケースを正しく評価するために、規定は事故、奇形及び重篤な全身疾患を例外とした。

この法的規定を超えて、さらに処置を必要とするものが存在する。これについては第2改革法の枠で以下の重点が定められた:

妊婦、出生から幼稚園までの小児並びに成人での予防的処置に、現在なお存在する給付の法的欠陥が埋められなければならない。それによって公的医療保険において、自己予防と歯科給付を規則正しく受けることで、歯科領域の頻度の高い疾患−カリエス及び歯周疾患−をさらに予防し、あるいは生じてしまった障害の進行を阻止するという条件が作られることになる。

補綴給付の領域で、疾病金庫からパーセント計算で支払われる従来の補助金は、固定補助金に改められることになる。【注:この補助金というのは、被保険者が歯科予防の検診を規則正しく受けている場合には、たとえ義歯が必要になっても、疾病金庫が自己負担の一部を補助金という形で負担する制度のことである】この固定補助金は、例えば歯冠及び総義歯に対する今日の歯科医療レベルに基いて定められる。この領域の規定は、不必要な官僚主義を解体し、疾病金庫と契約歯科医の体制を拡大させるようにしなければならない。被保険者の自己管理はさらに強化されなければならない。そして予防と歯の保存を歯科給付の中で優先させるための刺戟を、歯科医師と被保険者に与えなければならない。固定補助金は、歯科技工士の参加の下に、1997年10月31日までに連邦歯科医師・疾病金庫委員会によって定められる。

同時に、義歯に対する固定補助金というコンセプトの導入により、明瞭で単純な費用償還【療養費払い】の原則がこの領域に持込まれる。疾病金庫は将来は固定補助金を被保険者に直接支払うことになる。補綴給付の清算は、歯科医師の料金表に基づいて、契約歯科医師と被保険者との間で直接行われる。その場合、総ての固定補助金が公表された後1999年12月31日までの移行期間は、歯科医師料金規則の上昇ファクターは、公的被保険者に対して、義歯の契約歯科医師給付の枠内で最高 1.7倍、旧東ドイツ地域では報酬水準が低いので 1.86倍のファクターに制限される。この制限は、総ての関係者が新しい固定補助金のコンセプトに転換するための期間を十分に与えるために必要である。低所得者規定が適用される被保険者には、将来も義歯及び歯冠が自己負担なしで給付できるようにするために、この期限を切った制限は適用されない。

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15.ホスピスに対する新しい規定

ドイツではホスピス・サービスの数が増えているが、その目的は不治の患者、とくに生命の最後の時期に、死を迎えるまで人間らしい生活ができるようにすることである。ホスピスの思想は、社会のいろいろな基準で拡大し、また影響を与えていかなければならない。診療所のホスピス業務によって、長い時間をかけて意識を変化させていくことができる。それは家庭領域において、今まで埋れていた死への付き添いをする自立能力に、再び誰にでも道を開けることになる。それと並んで施設内ホスピスも限定された範囲で必要である。これらのホスピスは疾病金庫、介護保険、社会扶助により、また寄付により、そして自己負担によって財政支援がなされる。

今まで法的根拠なしに補助金でホスピスを支えてきた疾病金庫による財政支援に、とくに論議の余地がある。それゆえに、ドイツ連邦議会の保健医療委員会は、財政支援の問題点を解決することで合意した。

したがって第2改革法は、病院治療を必要としない被保険者に、ホスピスの施設サービス、または部分的施設サービスのために、目下のところ日に約 250マルクの補助金を請求する権利を創設することを予定している。補助金は毎年スライドさせ、平均病院看護料の約半額とする。この補助金は、被保険者の所帯内または家族のサービスが不可能である場合に考慮されることになる。これは「施設の前に診療所」という原則を守ることを考慮している。ホスピス施設を、死につつある人の世話をしていてもホスピスの給付のような多様性を持っていない他の施設から区別するために、施設内ホスピスでは緩和的医療処置(根治的でない)が可能であることが補助金を出す条件となる。

将来は各病院が適切な規模でホスピスサービスの費用に与れることが保証される。補助金は施設ホスピスの財政支出全額を意味するものではない。またさらに費用のかなりの部分は、被保険者の自己出費により、寄付により、また各種の名誉職的参加によってもたらされる。

【名誉職:ある組織内で、経費以外には支払を受けない仕事に従事すること】

給付の種類と範囲に関する詳細は、疾病金庫中央連合会が、ホスピスに関心を有する該当する中央組織、福祉団体及び社会扶助経営者と協定する。契約パートナーたちは、パートナーとして経済的及び質的に保証された給付提供を保証しなければならない。

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16.リハビリ給付と早期発見検査の改善

ホスピス規定のほかに、第2改革法によって、リハビリ及び子供に対する早期発見検査の領域において、多くの給付を伴った改革を導入することが規定されている。

疾病金庫の中央連合会は将来、医学的助言機関(メディカル・サービス)と共同で、自己負担規定にも適用されるリハビリ給付の適用を決定する(入院の自己負担を含む最高14日までの自己負担で、西地域では 17マルク、東地域では 14マルク)。それにより、例えば嗜癖患者の治療の場合、老人のリハビリの場合、並びに他と連結したリハビリに相応する場合の疑問に、満足できるような説明ができるようになる。「施設の前に診療所」という原則を考慮するために、この新規定は診療所でのリハビリにも適用される。

子供に対する予防処置の枠内では、今まで6歳を終えるまでの子供だけに、疾病の早期発見の検査を法的に請求できる権利があった。それを超える検査は、疾病金庫の料金表に基づいて実施されるだけであった。第2改革法によって、子供の検査は思春期の始まるまで、すなわち10歳を終えるまで法的に請求権のある給付となる。

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W.

代案なるものは?

 

第1及び第2改革法の代案に関する議論の中で、経済的に使えるものを用意するため、また公的医療保険の安定のために、素晴らしい解決策に見えるものが再三名乗りをあげた。子細に観察すると、これらの代案は、誤操縦に導いたり、医学的給付の質がリベラルな保健医療制度の中で維持できないような大きな危険を有するという、見せかけの解決策であることが明らかになった。

 

1.部分的な予算か全体的な予算か

収入面または支出面での全体的な予算化は、必然的に給付水準の一層の低下を来し、それにより最終的には配給に近づいて行く。同じことは、部分的予算化、あるいは病院給付や医薬品と療法部分での経験が示したような、全体的と部分的な予算の組合せのコンセプトに対しても該当する。そのような予算化の場合に、毎年年度末にかけて、予算の使い果たしに関する議論を引き起こし、給付制限の危険や、それと関連した患者の大きな不安をもたらした。

さらに部分的または全体的予算化により、より一層国家、そしてそれにより、より一層官僚主義への道が必然的な結果として生ずるであろう。理路整然とした予算化が押し通ることになると、規定の密度と規定の強化が一層顕著になる。

結局のところ、理路整然として見える予算化が行われると、サービス給付部分における経済的に意義のある成長効果が妨げられることになるであろう。

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2.買物モデル

経済的に使えるものを汲み出すための素晴らしい解決策として、契約は保険医協会との間だけではなく、個々の医師または各種専門医との間において締結するという要請が、疾病金庫側によって主張されている。この要請は保健医療政策の議論において、「買物モデル」という見出し語がついている。

昨年末のテーマ「給付の体制と定款給付」の議論において、疾病金庫は自分たちの被保険者、自分たちの患者という精神によって、その取り扱い領域を自動的に拡大していこうとはせずに、オプションと自由裁量域に責任を持とうとしている立場にあることが明らかなった。

ところで、自主管理パートナーシップというドイツの制度は外国でも定評がある。その理由は、それが高度に給付の確実性をもたらしているからである。そうでなければ、買物モデルと、それよる保険医協会の破壊によって保証の任務が脅かされ、同時に疾病金庫と給付提供者との間の争いが激化し、医師のストライキに至る危険が必然的結果として生ずるかもしれないのである。

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3.ポジティブ・リスト

立法府によって決定され、疾病金庫が支払をする処方可能な医薬品リストができれば、何十億という額の節約になるのでないかという見解は、再三にわたって述べられている。外国の経験が示すように、そのようなポジティブ・リストによって医薬品の処方が少なくなることはないであろう。医薬品のポジティブ・リストは、医薬品給付の経済性も質も改善しないし、患者や慢性疾患の人が受入れられない経済的負担を導くことになる。全面的な適応除外によって、医師から医薬品を奪い去ることにもなりかねないし、それにより治療上の欠陥が生ずるので、ポジティブ・リストは治療の多彩性を損うものである。

【1992年の医療保険構造法によって、1995年末までにポジティブ・リストが作られることになっていたが、製薬会社などの強い反対により裁判でリスト配布禁止の仮処分判決が出た。そこで連邦政府はこの規定の削除を提案し、連邦参議院がこれに同意したので、この条文は1995年12月31日付で削除されたという経緯がある。】

ポジティブ・リストができていれば、今日流通している医薬品の3分の1弱を、公的医療保険の給付義務から除外することになったであろう。これらの除外された医薬品は、患者が自腹で支払うことになったに違いない。

ポジティブ・リストに対する提案は、約 16,000の今日流通可能な医薬品、売上額にして約 50億マルク、を疾病金庫の給付義務から除外しようとするものであった。しかし、ポジティブ・リストは質の保証としては誤った方法である。その理由は、医薬品の質、効力及び安全性は、薬事法に基づいて管轄の連邦上級官庁によって認可手続を経て保証されるべきものだからである。

そのような評価を後認可Nachzulassungの枠ですぐに終えるための適切な基礎が、薬事法第5改訂により、手続簡素化で置かれることになる。同時に後認可は、きちんとした製造者によってなされる治療効果の証明と関連づけられる。特定施行日における医薬品マーケットのリスト様式の評価は、望ましい質の改善を導かない。

医薬品の市場参入の基準が、薬事法から社会福祉法典【医療保険構造法などの法律が含まれている】に移行することは許されない。一医薬品の効力と質を問題にするならば、流通と支払に関しては国家検定で基本的に充分である。似ているが一致しない物差の並列、及び公法分野での2つの委員会による判断は、科学的及び経済的資源の正しい利用を示すものではなく、結果的には市民が受入れないものとなるであろう。

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訳者解説

本資料中【 】内の注釈は、読者の便宜を考え、総て訳者が挿入したものである。

  この資料はドイツ厚生省が作成している多数の資料の中の一つで、1997年3月21日に出されたものである。表題に示すように、ドイツの公的医療保険で現在行われている改革について包括的に述べられているので、ドイツの医療制度を知ることのできる貴重な資料と言える。また、副題が掲げている自主管理と自己責任の改革についても解説されていて、公的医療保険制度に取り組むドイツ独特の努力と、それを生み出せる社会保障制度の基盤を伺い知ることもできる。

しかしながら、このような制度改革は医療関連従事者の協力を必要とし、また議会での厳しい審議を経なければならない現実についても述べられている。また、一度作った制度であっても、不備が見つかれば改めていくことに躊躇しない。1995年1月に出版された解説(資料D101に付記した「岡嶋道夫編訳:ドイツの公的医療保険と医師職業規則、信山社、1996年」)と対比すると、制度を動きのある変化として捉えることもできるであろう。

  この中に書かれている医療制度の主な改革、例えば自己負担の変更などは、年金や労働の問題と同様に、毎朝7時過ぎに報道されるNHK衛星テレビのドイツZDFニュースで頻繁に取り上げられるので、関心のある方はご覧になられるとよい。

   1997年9月30日 訳

1998年1月 5日 訳文修正

訳者 岡嶋道夫

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おわり