Home Page の資料リストへ

訳者解説(末尾)をご覧下さい

D105

保険料軽減法による公的医療保険の変更

1997年1月1日から実施

ドイツ厚生省 1997年1月1日

 

Bundesministerium fuer Gesundheit

Aenderungen in der gesetzlichen

Krankenversicherung

ab 1. Januar 1997 durch

das Beitrangsentlastungsgesetz

 

 

成長と雇用の促進プログラムという枠において、公的医療保険に対する保険料軽減法が議決された。これは1997年1月1日に発効する。この法律により、公的医療保険の被保険者に対して以下のような変更が生ずる:

 

保健医療促進

保健医療促進は医学的にみて意味のある領域に限定される。例えば、妊婦、子供及び癌の場合の予防処置と早期発見処置、健康のチェックアップ、歯科予防、並びに予防接種である。自助グループは疾病金庫から引続き財政援助を受ける。これらに対する条件が詳細に示された。

自助グループについては末尾に解説を示した】

 

◆保険料

保険料軽減法によって議決された支出の制限と引下げの処置によって、保険料率は0.4%引下げられ、保険料が安くなることになった。これにより、総ての公的疾病金庫は、1997年1月1日より、その保険料率を0.4%引下げる義務がある。保険料軽減法によって達せられる支出軽減は、保険料支払者(被雇用者と雇用者)にとって、このような形で都合がよいものとなる。

 

◆医薬品自己負担

包装の大きさによって決る医薬品の自己負担は、それぞれ1マルク引上げられて4マルク、6マルク、8マルクとなる。医薬品の自己負担額が定められたのは1993年であるから、それぞれ1マルク値上げするのは妥当である。従来の低所得者規定は、公的医療保険の第1改革法により、何人も生計に当てられる総所得の2%を超えて自己負担してはならないこと、慢性患者でそれまでの1年間に負担限度額まで自己負担していた者は1%に軽減されるという改革がなされた。

 

◆療養

入所しての療養は医学的必要性のあるものに限定される:さらに、療養が成果をもたらすためには、被保険者が必要な協力をすることが保証されなければならない。これを達成するために、療養の規定期間が4週間から3週間に短縮され、再療養までの期間は3年から4年に延長される。そして、自己負担は12から25マルク(旧西ドイツ)、9マルクから20マルク(旧東ドイツ)に引上げられる。医学的に必要であると認められるケースでは、療養の延長、及び早期の再療養は可能である。【病院治療に】継続して行われるリハビリ及び母親療養は、自己負担値上げの対象にはならない。

「成長と雇用の促進のための労働法」により、労働者は被雇用者において各療養週ごとに2日を年次休暇に算入する機会を有する【この部分意味?】。この規定もまた母親療養及びそれに継続するリハビリには適用されない。

 

◆眼鏡

眼鏡のフレームに対する20マルクの補助金は廃止する。今日平均的にみて、被保険者は眼鏡に400マルク以上を支払っている。すなわち、眼鏡のフレームに対して疾病金庫の負担する割合は5%より少ない。従って、被保険者に眼鏡のフレームの費用を自分で負担することを要求できる。疾病金庫は眼鏡のレンズと医学的に必要なコンタクトレンズの費用を、定額まで引続き負担することになる。

 

◆義歯

1979年1月1日以後に生れた被保険者に対しては、義歯に対する補助金はない。この規定は、義歯は規則正しい口腔衛生と規則正しく歯科医師の検査を受けることにより、著しく避けられるという事実を考慮に入れたものである。公的医療保険は、1989年より小児及び20歳までの若い者に対する集団及び個人の予防に、また1993年からはカリエスの予防のために臼歯の小窩裂溝シーリングに財政支出している。従って、現在18歳またはそれより若い者に対する義歯は、引続き補助金を出すいくつかの例外(事故、重篤な疾病)を除けば、大幅に避けられることであり、公的保険の連帯によって財政支出する給付としなくてもよいことになる。

 

◆疾病手当

疾病手当は、従来は規則正しく手にする総所得の80%であった。これを70%にするが、手取り額の90%を超えないように引下げる。他の報酬補償と比べると、疾病手当の額は今まで明らかに高かった。労働報酬と報酬補償の間の度を越さない格差と、他の社会保障関連の報酬保障のレベルに合わせることは正当なことである。

 

参考:

1997年の公的医療保険の保険料算定限度額【月収入がこの額以下の人は公的医療保険に加入する義務がある】は、旧西ドイツ地域では6150マルク、旧東ドイツ地域では5325マルクである。少額所得は旧西ドイツでは610マルク以下、旧東ドイツでは520マルク以下とする。

【訳者注:少額所得というのは所得税や保険料の対象とならない少額の所得で、パートタイムやアルバイトのような収入である。ドイツからのテレビ・ニュース(1998年1月)によると、パートタイマーが最近増えているので、公的医療保険の観点から、この額をもっと引下げるかどうかが議論されている。】

 

【「自助グループ」についての以下の解説は、訳者がドイツ厚生省発行「ドイツの保健医療(1993年)」から引用したものである】

自助グループ

「病気の人及びその家族は、開業医と病院による医学的給付を超えた助けをしばしば必要としている。その場合、しばしば前面に表われてくるのは全人的な助言と、同じ疾患を患っている人との経験の交換である。任意な提携で作られる自助グループがそのような給付を提供する。ドイツ連邦共和国では自助グループは長い伝統を持っているが、その数と意義はとくに近年増大している。

 自助グループは多くの地域において、医学的給付にとって必要欠くべからざるものである。それは病気の積極的な克服に当って患者と家族を支え、連携をお互に促進し、社会的孤立を避けることになる。自助グループは世間の人々に、特別な疾患と結びついた問題に対する注意を促す。自助グループはその共通の関心を、役所及び疾病金庫において代表する。多くの場合自助グループは、医師及び保健医療の施設と共同作業をする。そのようにして共同作業による経験が医学的給付の中に入っていって、相互の理解を一層高めることができる。自助グループは保健医療の中でしっかりした立場を有し、重要な任務を満たしている。例を挙げるとすると:

● ドイツ戦争失明者協会

● ドイツ脳障害者協会

● ドイツエイズ援助協会

● ドイツ多発硬化症協会

● ドイツリューマチ協会

● ドイツ糖尿病協会

● ドイツ嗜癖対策協会

● 精神障害者のための援助組織

● 社団法人精神社会援助連合中央組織、ボン

● 社団法人精神疾患患者家族の連邦協会

● 社団法人癌後女性自助協会

● アレルギーと喘息患者の協会

● 「アレルギー疾患児」作業グループ

● 骨健康助成財団

1993年1月1日発効の医療保険構造法は、健康促進またはリハビリに目標を設定した自助グループに対して、疾病金庫が将来助成金を出す可能性を開いた。

 本文に戻る

訳者解説

 このパンフレットD105は1997年1月1日から実施される改正点を解説したものである。「自助グループ」の解説はこの資料にはついていなかったが、訳者が別の資料で訳したことがあるので、この機会を利用して紹介することにした。

 このホームページに掲載した順序とは逆になるが、このパンフレットが出たあとの1997年3月に、「公的医療保険の改革」と題するドイツの医療制度改革に対する基本的考え方と現状分析を扱った長文の資料D104が発表された。そして、1997年7月1日から実施される改正を解説するパンフレットD102とD103が公表されたことになる。D102からD105までの資料をお読みになられる場合に、以上の点に御留意下さい。

 ドイツの医療保険制度の歴史という観点から見れば、これらの一連の資料は、ある一時期に行われた改訂を示すだけのものと受け取られるかもしれないが、その中にはドイツの医療に取り組む伝統的な基本姿勢が顕示されているので、ドイツの医療に対するフィロソフィーを学ぶモデルとして読んでいただくことをお薦めしたい。

 なお、最近ドイツ連邦厚生省から「公的医療保険(1997年11月)」、「移植法(臓器提供、生命を贈って下さい)(1997年12月)」という2冊の解説用小冊子(50頁前後)が送られてきた。余力があれば翻訳したいと思うが、何時になるか予測が立てられないので、原文をご覧になりたい方がいらっしゃればコピーを差上げます。e-mailで御連絡下さい(コピー代を御負担願います)。

1998年2月15日

訳者 岡嶋道夫

タイトルに戻る