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訳者解説(末尾)をご覧下さい
臓器提供証明書(ドナーカード)
D110
訳者コメント:
この法律は2007年に改定されたが、その全文の翻訳と詳細な解説は下記に掲載されている。
斎藤純子:ドイツの臓器・組織移植法。外国の立法235号:96〜114, 2008。
斎藤純子訳:臓器及び組織の提供、摘出採取及び移植に関する法律(移植法)。外国の立法235号:115〜134, 2008。
改定された法律の名称は:
Gesetz
ueber die Spende,
Entnahme und Uebertragung von Organen und Geweben (Transplantationsgesetz-TPG)
ドイツ
臓器の提供、摘出及び移植に関する法律
(移植法)
1997年11月5日
連邦議会は連邦参議院の同意を得て下記の法律を議決した
Gesetz
ueber die Spende,
Entnahme und Uebertragung von Organen
(Transplantationsgesetz-TPG)
Vom 5. November 1997
Der Bundestag hat
mit Zusimmung des Bundesrates
das folgende Gesetz
beschlossen
第1章
通則
§1 適用範囲
(1) この法律は、他人への移植を目的とした臓器、臓器の一部または組織(臓器)の提供と摘出、並びに臓器の移植とこれらの処置の準備に適用される。さらに人の臓器の売買禁止にも適用される。
(2) この法律は血液及び骨髄、並びに胚及び胎児の臓器と組織には適用されない。
§2 住民の啓蒙、臓器提供のための意思表示、臓器提供登録、臓器提供証明書
(1) 州の法律により権限を有する部署、その管轄に含まれる連邦の役所、とくに健康に関する教育を担当する連邦のセンター、並びに疾病金庫は、この法律に基づいて住民に臓器提供の可能性、臓器摘出の条件及び臓器移植の意義について啓発する。これらの機関は、適切な意思表示書類と一緒に臓器提供について意思表示をする証明書(ドナーカード)を準備する。疾病金庫と民間医療保険機関は、満16歳を超えた被保険者に、これらの書類を定期的に、臓器提供に対する意思表示をするようにという依頼とともに提供する。
(2) 臓器提供に対して意思表示をする者は、臓器摘出に§3により同意、それに反対、または名前を指定した信頼する人に決定を委ねることができる(臓器提供に対する意思表示)。意思表示は特定の臓器に限定することができる。同意と決定の委任は満16歳を超えた者、反対は満14歳を超えた者が意思表示できる。
(3) 連邦厚生省は、連邦参議院の同意を得て法規命令により、意思表示した者の希望があれば臓器提供の意思表示をデータ記憶装置に入力し、資格のある者に情報を提供する任務を、機関に委任することができる(臓器提供登録)。入力された個人関連データは、意思表示をした者において§3または§4による臓器摘出が許可されるかどうかを確認する目的だけにしか用いることができない。法規命令はとくに下記のことを規定している
- 臓器移植に対する意思表示の受入れまたはその変更を管轄する公的な機関(Anlaufstellen【事業開始機関という意味か?】)、印刷された書式用紙の使用、記入されるデータの様式、及び意思表示者の個人識別検査、
- Anlaufstellen【事業開始機関?】による臓器提供登録への意思表示の伝達、並びに意思表示とその中に含まれるデータをAnlaufstelleと登録に入力、
- 連邦情報保護法§10による自動処理手続におけるすべて呼出を記録、並びに照会と情報提供が許容されるかを審査する目的のために臓器提供登録からの情報提供を記録すること、
- (4) 1項により情報提供資格のある医師の個人情報を登録に入力すること、並びに情報提供資格に対するコード番号の供与、入力及び構成、
- 入力データの消去、及び
- 臓器提供登録の財政。
(4) 1臓器提供登録からの情報提供ができるのは、意思表示者並びに登録に情報提供資格があると病院から指名された医師だけで、その場合の医師は臓器提供者の臓器の摘出や移植に関与せず、またこれらの処置に関与する医師の指示を受けない者である。
2照会は§3 (1) 2.により死が確認された後にはじめて行うことができる。
3情報提供は、臓器摘出を行うことになっている医師だけに与えることができるが、また§3 (3) 1項により意図されている、または§4 により問題となっている臓器摘出について知らせることのできる人にも与えることができる。
(5) 連邦厚生省は、一般行政規則により連邦参議院の同意を得て臓器提供証明書の書式を定め、連邦法律広報に公示する。
第2章
死亡した臓器提供者からの臓器摘出
§3 臓器提供者の同意のある臓器摘出
(1) 臓器の摘出は§4 に特別な規定がないかぎり、以下の場合に許容される
- 臓器提供者が摘出に同意していた、
- 臓器提供者の死が、医学知識の基準に沿った規定によって確認され、そして
- 侵襲が医師によって行われる。
(2) 臓器摘出は以下の場合には許されない
- 死を確認された人が、臓器摘出に反対していた、
- 摘出の前に臓器提供者に、大脳、小脳及び脳幹の総合機能の決定的で疑いのない消失が、医学知識の基準に沿った手続によって確認されない。
(3) 1医師は臓器提供者の最近親者に、意図されている臓器摘出を知らせなければならない。医師は臓器摘出の経過と範囲を記録しなければならない。最近親者は書類に目を通す権利を有する。最近親者はその信頼している人に意見を求めることができる。
§4 他の人の同意による臓器摘出
(1) 1臓器摘出を行おうとする医師に、臓器提供者となるべき者の書面による同意も書面による反対も出されないときは、その最近親者に、本人から臓器提供に対する意思表示を聞いているかどうかを質問することができる。
2その近親者もそのような意思表示を聞いていないときは、医師が近親者にこの場合の臓器摘出について説明し、近親者がそれに賛成すれば、§3 (1) 2.及び 3.及び (2)の条件の下に摘出が認められる。 3近親者は臓器提供者となるべき者の推測される意思を考慮しなければならない。 4医師は近親者にこのことを指示しなければならない。 5近親者はその意思表示を、取り決めた一定期限内に撤回できることを、医師と取り決めることができる。
(2) 1本法律が意味する最近親者は以下に列挙した順番となる
- 配偶者、
- 成年に達した子供、
- 両親または、臓器提供者となるべき者が死亡時に未成年であり、この者の保護にその時点で両親の片方だけ、後見人または看護人が当っていたときは、このような保護を担当していた者、
- 成年に達した同胞、
- 祖父母。
2最近親者が、臓器提供者となるべき者の死亡直前の2年間に、この者と個人的な接触があったときは、その最近親者が (1)により決定する権限がある。 3医師はこのことを近親者に質問することにより確認しなければならない。
4同じランクの近親者が多数の場合は、その中の一人が (1) による関与を有し、決定を行えば十分である;しかしその中での反対には注意を払わなければならない。 5優先順位の高い近親者に適切な時間内に連絡できないときは、その下のランクの近親者で連絡の取れる者の参加と決定で十分である。 6成年に達した者で、臓器提供者となるべき者とはその死まで特別な個人的結びつきがあり、明白に親密であったときは、最近親者と同じになる;そして最近親者と同列になる。
(3) 臓器提供者となるべき者が、臓器摘出に関する決定を特定の人物に委任していたときは、この者が最近親者の立場となる。
(4) 医師は、近親者並びに (2) 6項及び (3)による者の関与の経過、内容及び結果を記録しなければならない。(2) 及び (3)による者は、書類に目を通す権利がある。(1) 5項による協定は文書作成を必要とする。
§5 証明手続
(1) 1§3 (1) 2.及び (2) 2.による確認は、臓器提供者を互いに独立して診察を行い、このことに対して資格を有している2名の医師によってなされなければならない。心臓と循環が決定的で疑いの余地のない停止に入っていて、それから3時間以上経過している時には、1項を変更して、§3 (1) 2.による確認は、1名の医師の診察と確認で充分である。
(2) 1(1) による診察に関与した医師は、臓器提供者の臓器の摘出と移植に関与してはならない。 2これらの医師はまた、これらの処置に関与する医師の指示を受けてはならない。
3診察結果の確認とその時刻は、医師によって根拠となる診察所見が示され、記録に書き留めて署名されなければならない。最近親者並びに§4 (2) 6項及び (3)による者には、書類に目を通す機会を与える。この人たちは信頼している者に意見を求めることができる。
§6 臓器提供者の尊厳を尊重する
(1) 臓器摘出及びそれに関連する総ての処置は、臓器提供者の尊厳を尊重し、医師の注意義務に相当する方法で実施されなければならない。
(2) 臓器提供者の遺体は尊厳な状態で埋葬に渡さなければならない。その前に最近親者に遺体を見る機会を与えなければならない。
§7 情報提供義務
(1) §3 または§4
による提供者となるべき者から臓器を摘出しようとする医師に対して、またはコーディネイト機関(§11)により委任された者に対しては、臓器摘出が規定により認められるかどうか、またそれが医学的根拠と矛盾しないかどうかを確認するためであるとき、並びに§3 (3) 1項により知らせるために必要であるときは、希望があれば情報が提供される。医師は、社会法典第5編§108 により、または他の法規定により、摘出を意図している臓器の移植が認可されている病院、またはその臓器の摘出を目的としてそのような病院と協力している病院に勤務していなければならない。摘出を意図している総ての臓器に対して、情報提供が得られなければならない。臓器提供者となるべき者の死が§3 (1) 2.によって確認された後に情報提供がなされてよい。
(2) 情報提供を義務付けられているのは
- 臓器提供者となるべき者について、死の前に経過した疾患を治療した医師、
- 臓器提供者となるべき者について§2 (4)による臓器提供登録から情報提供を受けた医師、
- 臓器提供者となるべき者について、検死をした医師、
- 臓器提供者となるべき者の遺体が存在する保管所のある役所、及び
- (1) により情報提供を受けているならば、コーディネイト機関から委任を受けた者。
第3章
生きている臓器提供者の場合の臓器摘出
§8 臓器摘出の許容
(1) 1生きている人からの臓器の摘出は以下の場合にのみ許される
- その人が
- 成年に達していて同意能力がある、
- (2) 1項により説明を受けており、摘出に同意した、
- 医師の判断により提供者として適当であり、手術のリスク以上の危険はないと予測されるか、摘出の直接の影響以上には健康上重い障害を受けない、
- 人の生命を保ち、または重篤な疾患を治癒させ、悪化を予防し、苦しみを緩和するという医師の判断により、受容者となるべき者へ臓器を移植することが適切である、
- §3 または§4 による提供者の適切な臓器が、臓器摘出の時期に供給できない状況にある、
- 侵襲が医師によって行われる。
2これに加えて、再生不能の臓器を摘出することは、1親等または2親等の近親者、配偶者、婚約者、または提供者と特別な親しい個人的結びつきが明らかな者に移植する目的のときにのみ許可される。
(2) 1臓器提供者は、侵襲の方法、範囲、及び本人の健康に対してこれから行われる臓器摘出がどのような直接の結果及び後遺症をもたらす可能性があるか、並びに臓器移植の期待される結果見通しと臓器提供に対する意義を明らかに認めうる諸般の事情を、医師から説明されなければならない。 2説明は、§5 (2) 1及び 2項が準用される別の医師及び、必要ならば、他の専門家の存在するところで行われなければならない。 3説明の内容と臓器提供者の同意表明は、説明者、別の医師及び提供者によって署名された書類として記録される。書類には、1項による健康上のリスクの保険法上の保護についても述べなければならない。同意は書面または口頭により撤回することができる。
(3) 1生体からの臓器摘出は、臓器提供者と臓器受容者が、医師が推薦したアフターケアに参加することを表明した後でなければ実施できない。 2それ以外の条件として、州法によって管轄された委員会が、臓器提供の同意が自由意志によるものでなかったり、あるいは臓器が§17 による禁止された売買であるというような事実の裏付けが存在しないかについて、鑑定的立場で明らかにする。 3この委員会には、臓器の摘出と移植に関与せず、また臓器摘出のような処置に関与する医師の指示を受けていない医師、裁判官職の資格のある者、及び心理学の問題に経験のある者を含めなければならない。委員会の詳細、とくに構成、手続及び財政については州法によって定める。
第4章
特定の臓器の摘出、斡旋及び移植
§9 移植の許可
心臓、腎臓、肝臓、肺、膵臓及び腸の移植は、それを許可された移植センター(§10)だけが扱うことができる。これらの臓器が§3 及び§4 による提供者から摘出されれば(斡旋を義務づけられた臓器)、その移植は斡旋機関によって§12 による規定を遵守して斡旋されたときにのみ許可される。さらに、斡旋を義務づけられた臓器がこの法律の適用地域で摘出されていれば、その移植は摘出が§11 による規定を遵守して行われたときにのみ許可される。
§10 移植センター
(1) 移植センターは病院または病院の施設で、社会福祉法典第5編【医療保険構造法のこと】の§108 または、他の法規定により§9 1項による臓器の移植を許可されたものとする。社会福祉法典第5編の§108 による認可の場合には、需要に即し、給付能力があり、そして財源が保証され、また臓器移植に必要な質が確保されるために、その臓器の移植に対する重点とならなければならない。
(2) 移植センターは以下のことを義務づけられている
- §12 による臓器斡旋のために必要な情報を有し、移植が認められた患者の順番待ちのリストを作り、また遅滞なく臓器移植のための患者の受入れと順番待ちリストへの加入について決定し、処置を行う医師にそのことと順番待ちのリストからの患者の取り出しについて知らせる。
- 順番待ちリストへの採用については、医学知識の基準、とくに臓器移植の必要性と結果の予見に相応したルールに従って決定する、
- 臓器摘出及び臓器斡旋のための§§11 及び 12 に該当する規定を守る、
- どの臓器移植も、臓器を受容者から提供者まで欠落のない逆追跡が可能なように記録をつける;斡旋を義務づけられた臓器の移植では、コーディネイト機関による逆追跡を可能にするために、登録番号(§13 (1) 1項)を用いる、
- 臓器移植の前後に、患者に必要な精神的なケアをする方法が病院内で確保される、
- 社会福祉法典第5編の規定により、他の移植センターと比較することが可能であるような質を保証する方法が、この法律による業務の場合にも実施される;これは§8 (3) 1項による臓器提供者のアフターケアにも適用される。
(3) (2) 4.は眼の角膜移植にも準用される。
§11 臓器摘出、コーディネイト機関における共同作業
(1) 1斡旋を義務づけられた臓器を摘出することは、摘出、斡旋及び移植の準備も含めて、移植センター及び地域で協力する他の病院の共同任務である。この任務を組織化するために、疾病金庫の中央組織、連邦医師会、及びドイツ病院協会または病院管理者連邦組織は、適切なる施設(コーディネイト機関)を設置または委任をする。コーディネイト機関は財政的及び組織的に自立した管理機構、協力者の数と質、運営上の組織、並びに物的設備に基づいて、この法律の規定による移植センター及び他の病院と共同作業することにより、1項による処置が実施されることを保証しなければならない。移植センターはコーディネイト機関において適切に代表されなけれならない。
(2) 疾病金庫の中央組織、連邦医師会、及びドイツ病院協会または病院管理者連邦組織は、及びコーディネイト機関は、移植センター及び他の病院に影響を及ぼすコーディネイト機関の任務を契約により規定する。契約がとくに規定するものは
- 臓器摘出に関連して臓器受容者を保護するために必要な処置の要求、並びに関係者の共同作業に対する概括的規定、
- 斡旋機関との共同作業と経験の交換、
- 質を保証するための方法において、移植センターを支えること、
- 移植センターと他の病院が臓器摘出の枠内で行う給付の補償も含めて、この法律による任務を満たすためのコーディネイト機関の適切な出費を補償。
(3) (1)と(2)による契約並びにその変更は、ドイツ厚生省の承認を必要とし、連邦広報に公示される。契約またはその変更は、本法の規定及び他の法律に相当するときに承認が与えられる。疾病金庫の中央組織、連邦医師会、及びドイツ病院協会または病院管理者連邦組織は、契約の規定が守られることを監視する。
(4) 1移植センターと他の病院は相互に、またコーディネイト機関と一緒に共同作業をすることが義務づけられている。 2病院は、医師の判断により斡旋義務のある臓器の提供者とみなされる患者の大脳、小脳及び脳幹の総合機能の決定的な脱落を、コーディネイト機関が知らせてくる管轄の移植センターに伝えることが義務づけられている。管轄の移植センターはコーディネイト機関との共同作業により、臓器摘出の条件が存在するかどうかを明らかにする。このために管轄の移植センターは、この患者の個人記録及び臓器摘出と斡旋の実施に必要な個人に関連するその他のデータを収集する。病院は管轄の移植センターにこれらのデータを渡す義務がある;移植センターはデータをコーディネイト機関に渡す。
(5) コーディネイト機関は毎年、前年度の各移植センターの業務を統一基準で示し、とくに個人と関連しない以下の情報を含んだ報告を発表する:
- §3 と§4、並びに§8 による提供者の臓器別に、§9 により実施した臓器移植の数と種類及びその結果、
- 順番待ちリストの動向、とくに採用された患者、移植を受けた患者、他の理由で除かれた患者、並びに死亡した患者、
- 順番待ちリストに採用された、または不採用になった理由、
- 上記 1.から 3.までの患者の年齢階層、性別、配偶関係及び被保険者としての身分、
- §8 (3) 1項による提供者に対するアフターケア及び同人の臓器提供によってもたらされる健康上のリスクの記録、
- §10 (2) 6. による質保証に対して実施された処置。
(2) による契約の中で、業務報告に対する統一基準及びそれに基づく移植センターの情報を協定することができる。
(6) (1)と(2)による契約が、本法律発効後2年以内に成立しないときは、連邦厚生省は連邦参議院の同意を得て法規命令によりコーディネイト機関とその任務を定める。
§12 臓器斡旋、斡旋機関
(1) 1斡旋を義務づけられた臓器の斡旋のために、疾病金庫の中央組織、連邦医師会、及びドイツ病院協会または病院管理者連邦組織は、適切な施設(斡旋機関)を設置または委任する。 2斡旋機関は、財政的及び組織的に自立した管理機構、協力者の数と質、運営上の組織、並びに物的設備に基づいて本法の規定による臓器斡旋を行うことを保証しなければならない。 3その機関が本法の適用地域外で取り出された臓器を斡旋するときにも、臓器受容者の保護のために、医学知識の水準によって必要とされる処置が実施されることを保証しなければならない。
4ドイツの法律の原則、とくに基本法に明らかに抵触する結果とならないものであるならば、摘出地で適用されている法規定に一致して摘出された臓器だけを斡旋して差支えない。
(2) 斡旋機関として、その所在地が本法適用地域外にあり、国際間臓器交換の枠組の中において、臓器斡旋に対する本法の規定適用の下に斡旋する適切な施設を委任することができる。その場合、§14 及び§15 の規定の準用が保証されなければならない;適切なデータ保護監視が保証されなければならない。
(3) 1斡旋義務のある臓器は、斡旋機関によって、医学知識の水準に適合した規定により、とくに適切な患者に対する成功見込と緊急性により斡旋されるものとする。その場合移植センターの順番待ちリスト(複数)は、統一順番待ちリスト(単数)として扱われる。斡旋の決定は各臓器ごとに根拠を記録し、登録番号をつけて移植センターとコーディネイト機関に渡される。
(4) 疾病金庫の中央組織、連邦医師会、及びドイツ病院協会または病院管理者連邦組織は、斡旋機関の任務を移植センターに対する効果とともに契約により規定する。契約が規定するものは
- §13 (3) 3項により移植センターから患者に関して報告すべき情報の種類、並びに実施する臓器移植のそれぞれの種類に対する統一順番待ちリストを、斡旋機関がこれらの情報を加工して役立てる、
- §13 (1) 4項によりコーディネイト機関によって報告された臓器の把握、
- (3)の規定による臓器の斡旋、並びに(1) 3項と 4項の規定を守るための手続、
- 契約パートナーたちによって定められた審査委員会によって斡旋決定を定期的に点検、
- コーディネイト機関と移植センターとの共同作業と経験の交換、
- 斡旋機関が他の契約パートナーたちへ定期的に報告する、
- この法律による斡旋機関の任務を満たすための斡旋機関の適切な出費を補償、
- 斡旋機関が契約違反した場合の契約による解約について。
(5) (1) 4項による契約並びにその変更は、連邦厚生省の承認を必要とし、連邦官報に公示される。契約またはその変更は、本法律の規定及び他の法律に相当するときに承認が与えられる。疾病金庫の中央組織、連邦医師会、及びドイツ病院協会または病院管理者連邦組織は、契約の規定が守られることを監視する。
(6) (1) 及び (4) による契約が、本法律発効後2年以内に成立しないときは、連邦厚生省は連邦参議院の同意を得て法規命令により斡旋機関とその任務を定める。
第5章
報告、データ保護、期限、医学知識の水準に対する指針
§13 報告、添付書類
(1) 1コーディネイト機関は移植センターと調整した手続で臓器提供者の個人関連情報をコード化し、コーディネイト機関を除いても臓器提供者個人まで遡ることを可能にする登録番号を作成する。 2登録番号は摘出した臓器に添付される書類に記録される。 3添付書類はその他に、臓器移植に必要な総ての医学的情報を含んでいる。 4コーディネイト機関は、臓器、登録番号及び臓器斡旋に必要な医学的情報を斡旋機関に報告し、斡旋機関の決定によって添付書類を臓器を受容者に移植することになる移植センターに渡す。詳細は§11 (2)による契約の中で規定される。
(2) 臓器受容者の気遣われる健康障害を防ぐために必要なことであれば、コーディネイト機関は、臓器提供者の個人関連情報のある添付書類からの情報を、これに関する追加情報に共同で加工し、使用すること、とくに一緒にして提供者の臓器を移植する移植センターに転送して差支えない。
(3) 1斡旋義務のある臓器の移植を受けることを医学的に届け出た患者を治療している医師は、同人の書面による同意をつけて、臓器移植が実施される予定の移植センターに遅滞なく報告しなければならない。
2代償治療が行われているときは、そのことも報告する。
3移植センターは、書面による同意により順番待ちリストに採用された患者について、臓器斡旋に必要な情報を斡旋機関に報告する。患者は同意する前に、本人の個人関連情報がどのような機関に渡されるかについて知らされなければならない。1項または 3項の報告が、患者の死または重症の健康障害によって猶予を許さないときは、報告は事前の同意がなくてもよい;同意は遅滞なく後から入手することでよい。
§14 データ保護
(1) コーディネイト機関または斡旋機関が本法の適用地域において非公的の機関であるときは、たとえこの規定の違反に対する十分な根拠がなかったり、あるいはデータがデータファイルに加工されていなくても、監督官庁が情報保護に関する規定を守ることを監視するという条件で、連邦情報保護法§38 が適用される。意思表示者は例外として、§2 (4) により臓器提供登録から情報が提供されたり、あるいは情報が転送された人物により個人関連データが加工されたり使用されることに対しても、これは適用される。
(2) 1意思表示者は例外として、§2 (4) により情報の提供または転送に関与した者、また§8 (3) 2項による見解、§11 (4) による報告や通知、並びに臓器の摘出、斡旋または移植に関与した者は、臓器提供者及び臓器受容者の個人関連情報を明らかにしてはならない。 2同じことが、§3 (3) 1項により意図された臓器摘出、あるいは§4 により問題になった臓器摘出を知らされた者の個人関連情報についても適用される。 3本法律の枠内で生じた個人関連情報は、この法律で示された目的以外に加工されたり使用されたりしてはならない。1 項または 2項による公開禁止の違反が対象となる裁判手続に対しては、加工と使用は差支えない。
§15 保存と抹消の期限
1§4 (4) による関与に関する記録、§5 (2) 3項による検査成績確認のための記録、§8 (2) 3項による説明の記録、§8 (3) 2項による鑑定の見解の記録、並びに臓器の摘出、斡旋及び移植の記録は、少なくとも10年間は保存する。 21 及び 2項による記録の中の個人関連情報は、遅くともその翌年が終了するまでに破棄する;その中に含まれている個人関連情報がデータファイルに記憶されているときは、これらはこの期限内に抹消される。
§16 医学知識の水準についての指針
(1) 1連邦医師会は医学知識の水準を指針の中で以下のように定めている
- §3 (1) 2.による死の確認のための規定、及び§3 (2) 2.による大脳、小脳及び脳幹の全機能の最終的、疑いのない消失の確認とそのために必要な医師の資格を含めた手続規定、
- §10 (2) 2.による順番待ちリストへの採用と、採用または採用拒絶に対する根拠の記録の規定、
- §11 (4) 2項による医師の判断、
- 臓器摘出と関連して臓器受容者の保護に必要な方法とその記録についての要求、とくに
- 臓器受容者のための健康リスク、とくに疾病感染のリスクをできるだけ小さくするために、臓器提供者、摘出された臓器及び臓器受容者を検査、
- 移植にあたり、または移植の前にさらに選別し保存するにあたって、臓器の性状を適切に保つためにする臓器の保存処置、選別、保存及び輸送、
- §12 (3) 1項による臓器斡旋の規定、
- 臓器摘出と移植に関連して質の保全に必要となる方法の要求。
連邦医師会の指針が遵守されれば、医学知識の水準が守られると推測される。
(2) (1) 1項 1. 及び
5. による指針の作成に当っては、臓器の摘出と移植に関与せず、またこのような処置に関与する医師の指示を受けない医師が、(1) 1項 2.
及び 5. による指針の作成に当っては、裁判官職の資格ある者と患者領域からの者が、(1) 1項 5. による指針の作成に当っては、さらに§3 または§4 による臓器提供者の親族領域からの者が、それぞれ適切に代表として出なければならない。
第6章
禁止規定
§17 臓器売買の禁止
(1) 1治療目的となっている臓器を取り引きすることは禁止される。1項は以下に対しては適用されない
- 治療の目的を達成するために提供される処置に対する適切な料金の提供と受領、とくに臓器の摘出、保存、感染予防に対する処置を含む選別、保存及び輸送に対して、並びに
- 臓器を利用することに関連して製造されたり、認可または登録に関して薬事法の規定の下にあるか、あるいは法規命令により認可または登録が免除されている医薬品。
(2) (1) 1項により禁止されている売買対象物である臓器を摘出したり、他の人に移植したり、あるいは自分に移植させることも同様に禁止される。
第7章
刑罰及び過料規定
§18 臓器の売買
(1) §17 (1) 1項に反して臓器の売買をし、または§17 (2)に反して臓器を摘出し、移植し、または自分に移植させた者は、5年までの自由刑または罰金刑により罰せられる。
(2) (1)の場合に行為者が職業的に行ったときは、処罰は1年から5年までの自由刑である。
(3) 未遂は罰せられる。
(4) 裁判所は、禁止されている売買対象物である臓器の臓器提供者の場合及び臓器受容者の場合は、(1)による処罰を免除または裁量により軽減することができる(刑法§49 (2))。
§19 その他の刑罰規定
(1) §3 (1)または (2)、または§4 (1) 2項に反して臓器を摘出した者は、3年までの自由刑または罰金刑により罰せられる。
(2) §8 (1) 1項 1. a, b、4.、または 2項に反して臓器を摘出した者は、5年までの自由刑または罰金刑により罰せられる。
(3) §2 (4) 1項または 3項に反して情報を提供または転送、または§13 (2)に反して情報を加工または使用、または§14 (2) 1項から 3項に反して個人関連情報を明したり、加工または利用した者は、その行為が刑法§203 で刑が示されて(?)いないときは、1年までの自由刑または罰金刑により罰せられる。
【刑法§203は個人の秘密を侵害した場合の規定で、各種の職種、立場の者について述べている】
(4) (1) 及び (2)の場合は未遂は罰せられる。
(5) (1)の場合の行為者が過失により行ったときは、1年までの自由刑または罰金刑により罰せられる。
§20 過料規定
(1) 故意または過失で下記のようなことをした者は秩序違反行為である
- §5 (2) 3項に反して、検査結果またはその時点の確認を記録しない、正しく記録しない、完全に記録しない、または規定されている方法で記録しない、または署名しない、
- §9 に反して臓器を移植する、
- §10 (2) 4. に反して、また (3)と結びついて、臓器移植を記録に留めない、または規定された方法で記録に留めない、あるいは
- §15 1項に反して、そこに示した書類を保管しない、あるいは最低10年間保管しない。
(2) 秩序違反は (1) 1.から 3. までの場合は5万ドイツマルクまでの過料により、(1) 4. の場合は5千ドイツマルクまでの過料で罰せられる。
第8章
最終章の規定
§21 薬事法の改訂
【翻訳は省略】
§22 社会福祉法典第5編の改訂
【翻訳は省略】
§23 社会福祉法典第7編の改訂
【翻訳は省略】
§24 刑法の改訂
【翻訳は省略】
§25 移行規定
(1) 本法律の発効さいに存在している§11 による規定対象に関する契約は、それが§11 (1)及び(2)による契約によって解消するか、または§11 (6)による法規命令によって入替えられるまでは引続き効力を有する。
(2) 本法律の発効さいに存在している§12 による規定対象に関する契約は、それが§12 (1)及び(2)による契約によって解消するか、または§12 (6)による法規命令によって入替えられるまでは引続き効力を有する。
§26 発効、廃止
(1) 1本法律は 2項が変更されなければ、1997年12月1日に発効する。 2§8 (3) 2項及び 3項は1999年12月1日に発効する。
(2) 1997年12月1日に廃止される:
1. 1987年8月5日(GBl.I Nr.19 S.199)の法令により変更された1975年7月4日(GBl.I Nr.32 S.597)の臓器移植実施に関する法令、
2. 1977年5月29日(GBl.I Nr.13 S.141)の臓器移植実施に関する法令に対する第1施行規則。
上記法律はここに作成され、連邦法令集で公布される。
ベルリン、1997年11月5日
連邦大統領 Roman
Herzog
連邦首相 Dr. Helmut Kohl
連邦厚生大臣 Horst Seehofer
連邦法務大臣 Schmidt-Jortzig
連邦労働大臣 Nobert Bluem
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訳者解説
これは1997年12月1日に発効したドイツの「臓器の提供、摘出及び移植に関する法律」(略称:移植法)の全文翻訳である。(但し§21−§24は関連する法律の条文訂正なので省略した)。
ドイツでは1970年代の半ばに、連邦−州の作業グループが臓器と組織の提供、摘出及び移植の連邦法に取り組み、1978年に連邦政府は連邦法務省によって作成された移植法案を提出したが、成果をみなかった。そのような事情などにより、ドイツは最近まで、臓器移植の自立した法的規定を持たないヨーロッパの中の残された国の一つとなっていた。日本では「臓器の移植に関する法律」が1997年10月16日から施行さているので、ドイツはこれより遅れたことになる。
しかし、実際には§26 にみられるような法令、施行規則で臓器移植が行われていたと考えられる(訳者はこれらを読んでいないが)。
今回の法律が施行される時点において、ドイツでは年間約2,300の腎臓、580の心臓、780の肝臓及び4,000の角膜の移植が行われている。しかし、腎臓移植には5倍、心臓と肝臓の移植には約倍の患者が順番待ちリストに登録されており、提供臓器の不足のために、かなり多くの患者が早期に死亡している。
ドイツ厚生省は1997年12月に「移植法」という題名の64頁の小冊子を作成し、無料で配布している。前半は臓器移植の意義、臓器提供への協力依頼、摘出から移植までの手続きなどを解説し、後半には移植法の全文を掲載している。
以下に本法律の中に出てくる二、三の用語について解説することにする。
- §2 (1) に述べられている「健康に関する教育を担当する連邦のセンター」について:
ドイツ連邦厚生省は約500人の職員を有し、Z局、第1局、第2局、第3局、第4局の5局70部で構成される(1993年12月現在)。Z局は中央管理、第1局は基本及び企画部門、国際関係、第2局は保健医療給付、医療保険、医薬品、第3局は健康予防及び疾病対策、第4局は消費者保護、獣医学からなる。第3局はその下位組織である連邦健康教育センターを支援することになっている。
- §2 (1) に述べられている疾病金庫と民間医療保険機関について:
ドイツでは一定限度額以下の収入の人は公的医療保険(疾病金庫)に加入することが義務づけられている。この額を超える収入の人には加入の義務がないが、それでも特定の条件を満たしていれば公的医療保険に加入できる。公的医療保険には国民の90%が加入している。公的医療保険に加入していない所得の高い人は、通常民間の医療保険に加入し、診療を受けた場合は医師、薬局、病院に直接お金を支払うが、その明細書を所属する民間医療保険に提出して、契約に従って全額または一定の割合で払い戻しを受ける。民間医療保険の場合、通常の診療費は公的医療保険の2.3倍以内と法律で定められている。公的医療保険の加入者でも、病院の個室などの待遇を希望する人は、その差額に対する追加保険を民間医療保険にかけることができる。このように医療保険には、公的医療保険を扱う疾病金庫と民間医療保険機関の2種類が存在する。
- §11 及び§12 で規定の対象となっているコーディネート機関と斡旋機関の任務について:
これら両機関に関連する契約事項は、本法律施行後2年以内に、疾病金庫の中央組織、連邦医師会、ドイツ病院協会または病院管理者連邦組織によって整備することになっている。すなわち、これらの当事者たちに作成を期限付きで任せることになるが、もしこれが間に合わなければ、厚生省が法規命令でコーディネート機関と斡旋機関の任務を規定してしまうことになる。
このようなやり方は、ドイツの医療制度においてしばしば用いられ、ドイツが自慢の一つにしている自主管理と言われる運営方式である。すなわち、法律は枠組みだけを定め、運用の実際に関する詳細は直接関与する当事者、すなわちパートナーたちが相談して決定するという方式である。各パートナーから選出される委員は、法律で定められた公的な責任をもって委員会活動を行い、契約や指針などを作成する。
ドイツでは1969年以降の刑法典の改正により、身体の自由を拘束する刑罰は、それまでの重懲役、禁固、拘留の区別が廃止され、単一の自由刑に一本化された(田沢五郎:ドイツ政治経済法辞典による)。
1998年4月27日
訳者 岡嶋道夫
e-mail: okajimamic@hi-ho.ne.jp
http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/
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