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D111
ドイツ
WL医師会倫理委員会規則
ウェストファーレン-リッペ医師会誌 1996年8月
Satzung der Ethikkomission
der Aerztekammer Westfalen-Lippe
Westfaelisches Aerzteblatt August 1996
目次
§1 設置、管轄及び任務
§2 構成
§3 専門知識の要求、独立及び委員の義務
§4 作業開始のための条件
§5 手続と決定
§6 他の倫理委員会の議決が存在する場合の特別規定
§7 業務執行
§8 発効
§9 移行規定
【注:薬事法 Arzneimittelgesetz §40 (1) 】
【注:医用製品法 Medizinproduktegesetz §17 (Medical Devicesに関する法律)】
【注:職業規則 Berufsordnung §1 (4) (5) 】
WL医師会大会は、1996年5月22日の会議で、1994年4月27日公布のNW州医療職法§7 により(GV.NW.S.204/SGV.NW.2122)、下記の倫理委員会規則を議決した。
【注:WL=Westfalen-Lippe ウエストファーレンーリッペ地方(NW州の中の)
NW州=Nordrhein-Westfalen
ノルトラインーウエストファーレン州】
§1 設置、管轄及び任務
(1) WL医師会に独立した制度として倫理委員会を設置する。委員会の名称は「WL医師会及びウエストファーレン ウィルヘルム ミュンスター大学医学部倫理委員会」とする。委員会はミュンスターに設置し、宛名はウエストファーレン ウィルヘルム ミュンスター大学医学部とする。
委員会名の原文: "Ethikkommission
der Aerztekammer Westfalen-Lippe und der Medizinischen Fakultaet der
Westfaelischen Wilhelms-Universitaet Muenster"
(2) 倫理委員会は、申請を受けることにより、人体の医学的研究及び個人に関連するデータによる疫学的研究を倫理的及び法律的に判断し、またこの枠内で医師会所属者と学部会員に対して、職業倫理上及び職業法規上の質問に対する助言を行う。委員会は、とくに薬事法§40 (1)1)、医用製品法§172) 及び職業規則§1 (4)及び (5)3)による任務を負う。委員会は、法律の定めるところ及び職業法規上の規定、ならびにヘルシンキの世界医師会の宣言を、その作業の基礎とする。
(3) ボッフム大学及びヴィッテン-ヘルデッケ私立大学の医学専門領域群に設立された倫理委員会は、それぞれの医学専門領域群に対して、WL医師会倫理委員会の代理をする。
【訳者注:ドイツでは大学の医学部が副学部に相当するいくつかの専門領域群に分れていることが多い。ヴィッテン-ヘルデッケ私立大学は、ドイツで唯一の医学部を有する私立大学である。】
(4) 倫理委員会は、医師会所属者によって行われる人体における医学研究計画、及び臨床試験の総てを管轄する。委員会は、医用製品法 §17
(6) 2 による最初の議決だけでなく、その後に議決を求める申請が出されたときには、これも管轄する。倫理委員会は、手続と価値判断基準が同等であるならば、州法によって作られた他の倫理委員会の決定を受入れることができる。
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§2 構成
(1) 倫理委員会は10名で構成される。委員はWL医師会大会によって、WL医師会の組織の選挙から次の選挙までの間の期間(任期)選出され、ミュンスター大学医学部の専門領域群の長によって承認される。
(2) 委員のうち最低5名は医師でなければならない。委員1名は裁判官資格を所有しなければならない。委員1名はアカデミックな哲学または神学の学位によって証明された資格、並びに倫理の領域における数年間の経験を持っていなければならない。医師の委員の2名は、経験のある臨床医であること、1名の委員は基礎医学領域でとくに経験を有するものとする。代理人に対してもこの条件は準用される。
(3) 各委員に対して、若干名の代理人を選出する。
【訳者注:代理人は委員が出席できないときに出席し、委員と同等の権限を有する】
(4) 倫理委員会は多数決により、1名の医師委員を委員長に、また1名の委員を委員長代理に選出する。
(5) 倫理委員会の委員は、重大な理由がある場合には、医師会理事会によって解任される。その委員は事前に審問を受ける。倫理委員会の一つの手続においてなされた決定によって、委員会委員を解任する理由とすることはできない。
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§3 専門知識の要求、独立及び委員の義務
(1) 委員及びその代理人は、必要とされる専門家としての能力を持っていなければならない。
(2) 委員はその任務を行う場合独立であり、指揮を受けず、また自分の良心にのみ責任を持つ。委員には守秘義務がある。
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§4 作業開始のための条件
(1) 倫理委員会は、医師会所属者または医師会理事会の書面による申請によって行動する。申請は変更または取下げることができる。
(2) 倫理委員会が作業を開始する条件は、総ての必要書類の呈示と費用の支払である。
(3) 申請には、すでにそれまでに、または同時に同じ内容の申請が、他の倫理委員会に提出されたかどうか、についての説明を添えなければならない。すでになされている査定も添える。このことは複数の主体で構成される研究計画の場合も同じである。
(4) 本研究計画に先駆ける他の研究(パイロットスタディー)が存在すれば、後者の計画に対してなされた倫理委員会の意見に、その計画の実施と結果に関する報告を添えて提出しなければならない。
(5) さらに、申請後または倫理委員会の手続後に生じた研究計画または試験プランの変更、並びに重大または予期しなかった好ましくない出来事は、その説明も添付して、遅滞なく倫理委員会に届け出る義務を申請者は負っている。これが特に適用されるのは、研究計画実施前または実施中に行われる研究計画または試験プランの変更、及び研究計画実施中または実施後に生じた重大または予期しなかった好ましくない出来事である。
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§5 手続と決定
(1) 倫理委員会は、原則として口頭での討議によって決定を行う。委員長が倫理的及び法的になんら心配がないと考えた申請については、委員会の委員で口頭の討議を要望する者がいなければ、書類手続で処理することができる。単純で、厳密に定義づけられる事例では、委員長及び委員会の法律委員からなる小委員会が、委員会に代って書類手続で決定することを、委員会は議決することができる。
(2) 委員長、もし委員長に支障ある場合は委員長代理が、通例は月に1回作業に着手する会議を招集する。委員会は、最低5名の委員または委員代理が出席すれば議決することができる;しかしその中の委員1名は裁判官資格を有しなければならない。委員または委員代理は、自身が該当する研究プロジェクトまたは臨床試験に参加またはそれらの利益に触れるときは、審議及び議決から除外される。
(3) 委員会は、申請者に補充の資料、陳述または根拠を求めることができる。申請者は聴取してもらうことができる。委員会は専門家に意見を求めることができる。
(4) 倫理委員会の会議は非公開とする。いずれの会議においても、結果についての記録を作成する。
(5) 委員会は口頭討議により出席者の単純多数で決定するが、書類手続の場合は全委員の単純多数で決定する。投票の棄権は否認として扱う。得票同数のときは委員長の票で決定する。
(6) 倫理委員会の議決は下記のいずれかとする:
- 「研究計画実施に懸念はない」。*)または
- 「個々の定められた付帯条件を満たせば、研究計画の実施に懸念はない」。または
- 「研究計画の実施に懸念がある」。
*) この議決は、薬事法§40 (1) 2項または医用製品法§17 (6) による倫理委員会の承諾の評価度を示すものである。
議決は、義務への指示を付して、書面で申請者に知らされる。議決は総ての関与している医師に通知される。議決には、さらに指示、助言または提案を付けることができる。否決された議決には理由が付けられる。
(7) 研究計画の間に現われ、また参加者の安全または研究計画の実施に影響を及ぼす可能性のあるような、重大な予期しない出来事の届出があった場合には、委員会は手続の再開を検討する。手続が再開されれば、委員会は前回の議決を維持するかどうかを検討する。
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§6 他の倫理委員会の議決が存在する場合の特別規定
(1) WL医師会の管轄地域の医師であって、州法により作られた管轄下の他の倫理委員会によって、すでに承認の評価が与えられた複数主体の研究計画に参加を予定している者は、他の倫理委員会に提出された申請とその議決を呈示して、当該倫理委員会に事情を伝えなければならない。倫理委員会の委員長、または委員長から委任された委員は、この必要書類受領後14日以内に、倫理委員会により医師に助言することが必要であるかどうかを決定する。肯定的な場合には、参加を予定している医師は、§4により申請を倫理委員会に提出する義務がある。
(2) WL医師会の管轄地域の医師が参加を予定し、州法によらないで作られた他の倫理委員会によって肯定的に評価された研究計画について判断してほしいという申請が提出されたときには、倫理委員会は簡略化書類手続で決定することができる。簡略化書類手続では、委員長ともう一人の委員だけで書類全部を検査する。
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§7 業務執行
(1) WL医師会は、倫理委員会の業務執行のために必要となる人的及び物的資源を提供するが、そのためにWL医師会の行政手数料規則により料金を徴収する。
(2) 倫理委員会の委員は、WL医師会の経費規則により会議費を受け取る。
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§8 発効
この規則は Westfaelisches Aerzteblatt ウェストファーレン医師会誌に発表された後の日付で発効する。同時に1978年12月1日付ミュンスター大学医学部倫理委員会の手続規則は効力を失う。
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§9 移行規定
本規則発効時に在職している倫理委員会の委員及び委員代理の任期は、WL医師会の大会会期の終了をもって終わる(1997年秋)。
ミュンスター、 1996年5月22日 Dr.Flenker(会長)
上記の倫理委員会規則は作成され、ウェストファーレン医師会誌に公示される。
【表記のように1996年8月号に掲載された】
ミュンスター、1996年5月23日
Dr.Flenker(会長)
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1)【訳者注】
本規則§1 (2) で述べている薬事法 Arzneimittelgesetz
§40 (1) の規定は以下の通りである。
§40 一般条件
1(1) 医薬品の臨床試験は、以下の場合並びに範囲においてのみ人に対して実施して差支えない
- 実施されることにより、臨床試験と結びつく個人のリスクは、医薬品の治療に対する予測される意義を量ってみて、医学的に支持しうるものである、
- 試験を実施される者は、医師から臨床試験の本質、意義及び影響の大きさについて説明された後に、本人がこれに同意しており、またこの同意と同時に、臨床試験に関連して疾患データの記録が作成されること、それが再検査のために委任者、管轄官庁、または管轄の連邦官庁に引渡されることを承知していること、
- 臨床試験を実施される者は、司法上または役所の命令によって施設に入った者ではない、
- 臨床試験は、医薬品の臨床試験で最低2年の経験を有すことが証明できる医師によって指導される、
- 科学的知見のその時々の状況に対応して薬理学−中毒学的検査が実施される、
- 薬理学−中毒学的検査に関する書類、科学的知識のそれぞれの状況に応じた試験計画に検査者と検査場所を付したもの、及び倫理委員会の投票を管轄の連邦官庁に提出する、
- 臨床試験の指導者には、薬理学−中毒学的検査に責任を持つ科学者から、薬理学−中毒学的検査の結果及び臨床試験に結びついた予測されるリスクについて情報が与えられること、
- 臨床試験の実施により人が死亡させられたり、その身体または健康が障害される場合に対して、損害の責任を負う者がいないときに、給付を保証する (3) による保険が存在すること。
2(2)医薬品の臨床試験は、州法によって作られた独立した倫理委員会によって同意という評価をあらかじめ受けたときに、3項を留保して人間に対して開始することができる;同意という評価の条件は、1項の条件を守ることである。 3倫理委員会から同意という評価がまだ得られていない状況のときは、管轄の連邦官庁が 1項 6.による書類を受け付けた後60日以内に反対しなければ、臨床試験を開始することができる。
4試験研究中に現われ、試験研究参加者の安全または試験研究の実施が損われるかもしれない総ての重大、あるいは予期しない好ましくない出来事については、倫理委員会に報告しなければならない。
(3) (1) 8. による保険は、臨床試験を受ける人が有利になるように、本法の適用範囲内において営業活動を許された保険者でなければならない。その範囲は、臨床試験に結びついたリスクに対して適切な割合であって、死亡または永続的稼得不能の場合は、最低百万ドイツマルクでなければならない。保険から給付がなされる場合は、損害賠償の請求権は消滅する。
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2)【訳者注】
本規則§1 (2)で述べている医用製品法 Medizinprodukte−gesetz §17 の規定は以下の通りである。
「医用製品法」は訳者のつけた訳語である。医用製品(medical
devices)の定義は§3 に詳述されている。
この法律は「医用製品に関する欧州連合理事会指令 (Council
Directive 93/42/EEC of 14 June 1993 Concerning Medical
Devices.
Official Journal No.169: 1-43, 1993)」 及び関連する指令を受けて、1994年に制定されたものである。医用製品は使用される材料、機器、機器などから発生する各種の影響などの程度によって各種の段階に分類されている。この法律の対象となるのは、一定の段階以上のものである。
§17 臨床試験のための一般条件
(1) 医用製品の臨床試験は、以下の場合並びに範囲においてのみ人に対して実施して差支えない
- 実施されることにより、臨床試験と結びつく個人のリスクは、医用製品の治療に対する予測される意義を量ってみて、医学的に支持しうるものである、
- 試験を実施される者は、医師から、そして歯科治療のための特別な医用製品の場合は歯科医師から、臨床試験の本質、意義及び影響の大きさについて説明された後に、本人がこれに同意していなければならない、
- 臨床試験を実施される者は、司法上または役所の命令によって施設に入った者ではない、
- 臨床試験は、該当する資格と専門を有する医師、歯科治療のための特別な医用製品の場合は歯科医師、またはその他の該当する資格を有する者で、医用製品の臨床試験で最低2年の経験を有することが証明できる者によって指導される、
- 必要であれば、科学的知見のその時々の状況に対応して生物学的安全試験、または医用製品の想定している目的規定に対する試験が実施される、
- 必要であれば、医用製品の使用に対して技術の状況を考慮することにより、安全技術上心配のないことが証明される、
- 臨床試験の指導者には、生物学的安全試験及び技術上心配のないことの試験の結果、並びに臨床試験に予測されるリスクについて、情報が与えられること、
- 科学的知見のその時々の状況に対応する試験プランが存在する、
- 臨床試験の実施により人が死亡させられたり、身体または健康が障害または低下される場合のために、(3) による保険が存在し、他に損害の責任を負う者がいないときに、給付を行う。
(2) (1) 2. による同意は、本人が以下のような場合にのみ効力がある、
- 行為能力があること、そして臨床試験の本質、意義及び影響度を理解し、それに対する本人の意思決定をする立場にあること、そして
- 同意を自ら書面でしている。同意は何時でも撤回できる。
(3) (1) 9. による保険は、臨床試験を受ける人が有利になるように、本法の適用範囲内において営業活動を許された保険者でなければならない。その範囲は、臨床試験に結びついたリスクに対して適切な割合であって、死亡または永続的稼得不能の場合は、最低百万ドイツマルクでなければならない。保険から給付がなされる場合は、損害賠償の請求権は消滅する。
(4) 未成年者における臨床試験では、(1)から(3)には以下の条件が適用される:
- 医用製品は、未成年者の場合には、疾患の診断と予防のためと規定されなければならない。
- 医用製品の使用は、未成年者の場合には、医学の知識により疾病の診断と疾病から守るためであることが示されていなければならない。
- 医学の知識により、成人で臨床試験をしたのでは、十分な試験結果が期待できない。
- 同意は法定代理人または世話人 Gesetzlicher Vertreter
oder Betreuer を介して提出される。同意は、この者が医師から、また歯科治療のための特別な医用製品の場合は歯科医師から、臨床試験の本質、意義及び影響の大きさについて説明を受けていたときにのみ効力がある。未成年者が、臨床試験の本質、意義及び影響の大きさを理解でき、本人の意思決定ができる立場にあるときには、同人の書面による同意が必要である。
(5) 妊婦または授乳者における臨床試験では、(1) から(4)には以下の条件が適用される:臨床試験は以下のときにのみ実施して差支えない
- 医用製品は、妊婦または授乳者または未出生の子において疾病を予防し、診断し、治癒させ、または緩解させるためのものである、
- 医用製品の使用は、医学の知識により、妊婦または授乳者または未出生の子の場合には、疾病を治癒または緩和させ、または妊婦、授乳者、未出生の子を疾患から守るためであることが示されていなければならない、
- 医学の知識により、臨床試験の実施は、未出生の子に対して是認できないリスクが予測されるものではない、
- 臨床試験は、医学の知識により、妊婦または授乳者に実施されるときには、十分な試験結果が期待できる。
(6) 1§5 (2)による法規命令または他の法規で別途の規定がなければ、管轄官庁または§26 (2)による法規命令により委任された役所に臨床試験を届け出るとともに、試験計画に対する倫理委員会の賛成意見がつけてあれば、この法律の適用地域内で臨床試験を始めることができる。 2複数主体の研究の場合には、一つの議決だけで十分である。
3試験計画に対する倫理委員会の賛成意見が存在しないときは、管轄官庁が60日という期間内に公衆衛生または公的秩序を根拠とした反対決定を伝えてこないならば、製造者は届出後60日という期限が経過した後に 1項によって該当する臨床試験を開始することができる。届出には§5 (2) による法規命令により、臨床試験のための説明が添付されていなければならない。さらに、この法規命令には、条件をつけて60日以上経過しなくても臨床試験を開始できるという期限を設定することができる。
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3) 【訳者注】
本規則§1 (2)で述べている職業規則 Berufsordnung §1 (4) (5) の規定は以下の通りである。なお、この職業規則の全文の翻訳は下記の書物に掲載されている。
岡嶋道夫編訳:「ドイツの公的医療保険と医師職業規則」、信山社、1996。
§1 職業活動
(4) 医師は、人体の臨床実験、または個人データに関係した疫学的研究を行なう前に、計画に関連した職業倫理的及び職業規則的問題について、医師会または医学部に設けられている倫理委員会に審議を求めなければならない。
(5) 研究の目的で人間の胚を作ること、並びに胚への遺伝子導入及び人間の胚及び全型発育能の細胞での実験は禁じられている。女性臓器へ移植する前に、胚について診断を行なうことは禁じられている;胚保護法§3 での性と関連する重大な疾患を排除するための手段の時は別である。医師は、生きている配偶子と生きている胚組織を用いた実験をする前に、計画に関連した職業倫理的及び職業規則的問題について、医師会または医学部に設けられている倫理委員会に審議を求めなければならない。
(6) (4) 及び (5) による審議を行なう場合に、1975年(東京)、1983年(ヴェニス)及び1989年(香港)で改訂版された1964年(ヘルシンキ)の世界医師会宣言を基礎に置く。
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訳者解説
これは1996年に改訂された ウエストファーレン-リッペ医師会の倫理委員会規則で、大学医学部の倫理委員会と一体となっている。この倫理委員会は医師会所属者と大学医学部の者を対象とし、§1 (2) に示すような任務を負っていて、人体の医学的研究及び個人に関連するデータによる疫学的研究を審査するが、とくに臨床試験に関しては薬事法、医用製品法(Medical Devices
法)、及び医師の職業規則の中に詳細に規定されている諸条件が満たされているかどうかを検討することになっている。
したがって、その任務には職業倫理上及び職業法規上の判断が含まれるので、倫理委員会には法律の専門家が必ず加わり、重要な役割を受け持つことになっている。
倫理委員会と密接な関連を有する連邦の法律である薬事法及び医用製品法、及び医師のための職業規則の該当する条文を翻訳し、参考資料として添付した。医用製品法は、欧州連合(EU)の理事会指令に沿って1994年に制定された新しい法律であるが、指令の中にも臨床試験と倫理委員会のことが述べられている。
参考までに、ドイツには16の州があり、各州に州医師会が存在する。しかし、1,700万人の最大人口を有する ノルトライン-ウェストファーレン州だけは二つの州医師会を持っており、ここに示した ウエストファーレン-リッペ医師会はその一つである。
他の州医師会や大学における倫理委員会規則については詳しい情報は持っていないが、1996年11月に改訂されたブレーメン州(Bremen)の「州医師会倫理委員会規則」を入手することができた。それによると、規則の内容は本質的にウエストファーレン−リッペ医師会倫理委員会規則と同じで、薬事法§40、医用製品法§17で定められた任務を負うが、委員の構成などの細かい点では相違が見られる。参考までに委員の構成(§4)を示すと以下のようになっている。
委員は12名で、1. 裁判官資格を有する法律家1名、これが委員長を務める。2. 専門医として長年の職業経験のある5名の医師。3.薬物作用領域における専門の科学者1名。4.
薬剤師1名。5. 医学生物統計学領域の経験のある科学者1名。6. 患者代表3名、となっていて、いずれも1名の代理者を置くことになっている。
出席者の単純過半数で決定し、申請提出後2ヵ月以内に決定を出さなければならない。
申請者は1件につき400マルクから3000マルク程度の料金を支払う。委員は名誉職(報酬は出ないが、交通費は支払われる)として職務を行うが、医用製品法の審査を行うときは1件につき50マルクから70マルクの補償を受け取ることができる。
なお、日本での臨床試験の討議では薬事法が主体となり、医用製品法に関する発言が殆ど見当らないように思われるが、私の認識の誤りであれば幸いである。
1998年5月30日
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訳者 岡嶋道夫
e-mail: okajimamic@hi-ho.ne.jp
http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/