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D122

患者への説明のための勧告提案

(ドイツ医師のための職業規則に対する勧告

ドイツ医師雑誌 87(16): A-1279-1283, 1990.

 

Empfehlungen zur Patientenaufklaerung

 (Empfehlungen zu der Berufsordnung für die deutschen Aerzte)

Deutsches Aerzteblatt 87, Heft 16, 19.April 1990 A-1279-1283

 

この指針と対をなす「ドイツ病院協会:これから行う医療処置について病院患者説明するための指針d123.htmまたはd123.pdf」もご覧下さい。

 

訳者解説

この勧告は「患者への説明」となっているが、この内容を見ると分るように、「説明」という簡単な一語で表現されるこの用語には、説明だけでなく承諾も含まれており、また侵襲だけでなく生活指導など、幅広内容を扱っている。

この勧告別掲の「D122ドイツ病院協会:これから行う医療処置についての病院患者説明するための指針」は、ドイツにおける患者に対する「説明」を扱った指針で、対をなしているので両者をご覧下さい。

2002125

訳者 岡嶋道夫

 

連邦医師理事会は、199059日のケルンにおける会議で、患者への説明のための勧告提案)を議決した。この勧告はドイツ医師のための職業規則実施指示を与えるものである。法的には、この勧告職業規則構成要素ではない;しかしこれは、連邦通常裁判裁判背景となる説明義務法的枠組記述するものである。


 


1.患者自己決定同意

 患者身体不可性に加えられる医学適応治療侵襲も、患者同意必要とする。従って、医師患者自己決定尊重しなければならない。治療侵襲効力のある同意裏付けされていなければ、それは違法である。

2.同意前提としての患者への説明

 同意への患者能力10 及び 11 参照)と併せて、同意したことについて患者説明を受けていることが、同意効力を持つのに基本的に必要である。患者医学方法必要場合にはそれに結びつく危険を知ったときに、患者ははじめて同意することができる。

 同意身体不可性に対するすべての診断的または治療侵襲必要である、すなわち手術だけでなく、例えば注射輸血血液組織採取放射、鏡診、医薬摂取などがある。勿論あらゆる医学処置について明白説明同意必要ということではない。患者が、どのようになるかについて理解異議を持たないときは、同意暗黙のうちに得られる(日常診療簡単処置、例えば重大作用のない医薬投与場合)。

 意図する処置種類とリスクが一般に知られているとき、または医師自分専門立場から、あるいは他の医師によって、処置種類とリスクについて説明がなされていることにより、患者がすでに十分説明を受けているときには、説明は与えられない。患者明白拒絶したときも同様である。引継がれるまで診療担当していた医師から、患者十分説明を受けているかということの証明のリスクは、同意必要とする侵襲を行なおうとする説明義務を有する医師が負うことになる。

3.説明義務区分

 同意必要から、患者自己決定において、侵襲について「知る」ことに法的根拠のある説明義務は、いわゆる

 − 侵襲説明

法的区別されるものとして

 − 所見予後説明を受ける患者権利医師に対する同様義務処置契約義務として生ずる。

 侵襲説明とは法的性質の異なるのは

 − 「安全確保説明」、つまり診療提供される説明患者健康状態危険から守るため);それを怠ることは診療過誤である。

診療上の説明は、以下のような行動をすることへの指導である、つまり患者当人健康状態に適した生活方法をさせる、処方した医薬の正しい服用に気を配る、患者治療結果及び作用を教え、それについて時宜を得た報告をさせる、または患者情報提供することにより施した処置緊急性を理解させる。

4.説明目的

 説明は、患者医療処置方法必要緊急性の程度並びに影響度を知り、医師視点から合理決定ができるような状態患者をさせるべきである。決定通常医療侵襲同意ということであるが、処置拒絶することもありうる。これが医師視点から合理的またはそれどころか指示できないものであっても、医師はこれに原則的に拘束される。

5.侵襲説明における一般説明内容

 説明されるべきものは、予定する侵襲原因緊急度、範囲特定のリスクの重さ、方法結果及び可能のある作用、その治癒改善確率治療しない場合結果、及び代替治療についてである。診断説明経過説明及びリスク説明考慮対象になる。

6.個々の場合における説明内容範囲

 診断に関する説明は、治療説明用意するという点で行なわれなければならない。患者への情報は、医師所見に関して大まかなもので十分である。治療上の理由によっては、説明診断限定されてよいし、またそれどころか禁忌とさることもある。危険と結びついた検査及び治療方法への患者同意が、医師患者疾患種類意味示唆しなければ得られないときは、医師は重い疾患場合でも説明原則的に尻込みは許されない。しかしその他の場合には、医師病気性質について余すところなく、また思いやりのない説明をすることは義務づけられていない。それよりも人間要請考慮し、医師から情報が与えられた場合患者身体精神状態配慮しなければならない。

 経過説明は、治療を行なわない場合だけでなく、治療結果成果の見込に関して、また治療種類範囲、リスク及び痛みについても、患者状態進展に関する要点が大まかに情報提供されるべきである。これには、各種代替治療についての説明事情に応じて含まれる。治療方法選択は言うまでもなく医師主要事項である。しかし異なったリスクと成功率を有し、医学的に同程度適応があり、通常用いられている数種の治療方法存在するときには、真の選択機会患者存在する。それにより、関連する完全教示医師から受けて、どの方法治療成果を得ようとするか、またどのリスクに応ずるかについての決定患者に委ねられなければならない。一例として、保存治療方法即時手術に対する真の代替として、医学的に選択対象となる場合が挙げられる。しかし、治療代替についての説明義務限度がある。その義務は、患者が真の選択機会を有する場合にのみ必要となる。臨床試験に入ったばかりの新しい診断及び治療方法については、質問されなければ教示しなくてよい。

 医師治療侵襲のさいに説明義務で特に重要なのは、計画された診断または治療方法安全、または可能ある結果に関するリスク説明である:

 患者は、患者通常基本的に出現したり、または特定患者に明らかに多くなる(患者関連の)リスクについて説明を受ける。説明必要なのは、従来観察された予期せぬ事故固定したパーセント(いわゆる合併頻度)というものではない。説明必要決定するものは、治療に結びついた定型的なリスクの頻度程度だけではなく、患者決心に関わる可能のあるリスクが持っている意味もある。もちろん患者はリスクの数字の持つ意味適切評価する立場に置かれるべきである。患者には − たとえ大体のことだけでも − 侵襲の重さとそれに結びついたリスクについての一般イメージが伝えられなければならない。侵襲のそのような特殊及び典型なリスクは、時として極めて稀なものであったとしても、あらゆるケースにおいて情報提供されるものとする。成功、または望まなかったり予期しなかった随伴結果が、より不利に、またより長期患者に現われれば、将来のリスクに関して情報提供することはそれだけ一層必要となる。

 その他に、侵襲客観及び時間必要説明範囲を決める。侵襲急性または重大危険防止必要でなく、また緊急でない場合には、医師説明義務はとくに厳しく要求される。侵襲特異的な危険ではなく、例えば手術という一般なことと結びついたリスクについての説明提供される。絶対適応でない手術において、手術が取り除くはずの苦痛患者に対して持続的に悪化するかもしれないこと、そして患者に対するこの危険侵襲性質によるものではなく、患者全般的な病気の重さから生ずるという、他の侵襲比較して高いリスクが存在するときは、このリスクについても説明されなければならない。

7.説明時点

 説明は、患者認識能力決定能力完全に持っている時点でなされなければならない;処置緊急性が許すかぎり、患者熟慮期間が残されなければならない。患者決断圧力に押しつけられるべきではなく、従って原則的に侵襲前日より遅くならずに説明がなされるべきである。

8.医師説明のための会話

 説明個人患者との会話の中でなされなければならない。説明のための会話印刷された用紙代用することはできない。印刷用紙説明のための会話準備するだけのものである;印刷された用紙実施された会話記録として役立たせることができる。

 説明のための会話一人医師によって実施されなければならない;それを医師でない人物によって代理させてはならない。

 説明患者のために慎重に、また分かりやすい方法でなされなければならない。医師個人会話において、情報個人理解並びに患者知識水準適合し、同時患者がそれを理解したことを確信することに務めるべきである。

9.説明の届く範囲

 説明に基づいて患者から与えられた同意は、説明のための会話対象となった侵襲だけを含む。

 手術侵襲がもしかすると他の部位への拡大必要とするかどうか、医師にとって予測しかねる場合には、患者はこれについて侵襲の前に説明を受けるものとする。拡大された侵襲必要であることが、手術最中に初めて明らかになったときは、医師手術断のリスクと拡大侵襲実行するリスクとを比較考量し、それによって患者同意を得る目的手術中断するかどうかの決定を下さなければならない。この場合医師は、患者推測される意思考慮しなければならない。侵襲現在生命危険を取り除くために優先されるときは、推測される同意から踏み外すことがなければよい。医師が、患者賛成をもって始めた手術拡大すべきか、またはそれを中断して患者を新しい、時としてより大きな危険と結びついた、しかしいずれにしてもさらに身体精神侵害をもたらす手術のリスクにさらすべきかの問の前に立たされたときは、患者推測される意思医師によって考慮されるものとする。

10.説明を受ける者

 説明を受ける者は同意能力を有する患者である。同意能力のない患者及び未成患者場合 11. 参照患者に与えられる説明は、親族への説明によって替えることはできない。親族への補足説明に対しては、守秘義務規定注意すべきである。

 この規定は、その他にも原則的に医師予後についての説明または治療説明に対しても適用される。

11.同意能力のない患者及び未成患者場合説明

 理解をまだ充分に持っていない患者、または同人状態意識喪失ショック思考混乱精神薄弱)のため、自分理解して法的効力のある同意を行なえる状態にない患者場合は、法定代理がその立場に立つ。

 未成場合は、侵襲同意通常は親または他の親権またはその代理から得る。原則として侵襲には両親同意しなければならない。もちろんどちらの親も、他方の親に権限を与えて折衝してもらうことができる;それゆえに後者の親だけが説明必要とする。医師は「日常場合」には一般質問することなく、出頭した方の親が、他方の親に対する折衝権限も有していると考えて差支えない。些細なリスクとは言えないやや重大医療侵襲場合には、医師出頭した片親権限について確かめなければならないが、基本的には真実性のあるインフォメーションがあれば差支えない。高いリスクを持った困難広範決定場合には、医師出頭しない方の片親が、予定されている処置納得していることの確信を得なければならない。

 18才以下の若い者は、侵襲許諾意味とその影響の大きさを判断するほど十分成熟しているときには、例外的に同意資格を有する(同意能力は、民法意味する行為能力同等ではない)。

 しかし子供少年には、医療行為理解できるときはその程度に応じて、予定される侵襲とその経過について大まかな説明がなされる。

 同様のことが、行為能力のない者または限定された行為能力を有する成年患者適用される。

 意識のない患者場合には、健康をもたらすという患者利益必要となる医学処置実施しなければならない(推測される同意)。

 患者実際または推測される意思を調べるために、患者にとって特に近い立場にある人と話すことを薦める;また患者から書面で渡された意見表明は、推測される意思間接証拠となる。反対される根拠存在しないときは、患者推測される意思が、普通で筋が通っていると通常みなされることに同意しているものとして、医師は始めることができる。

 患者同意能力が再び存在するようになったら直ちに、処置継続するために患者同意を得るものとする。

12.説明書類

 かなり重大侵襲場合には、説明した事実、その日時並びに説明で話した実際内容、または説明によって察知された特別根拠病歴記録する。患者説明をはっきり拒否した場合も、同じことが適用される。

注: 病院患者への説明については、ドイツ病院協会理事会及び連邦医師理事会によって共同議決された「これから行う医療処置について病院患者説明するための指針」において補足的に指示される。


 

連邦医師