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D127

ドイツにおける患者権利

患者医師への手引

Patientenrechte in Deutschland

Leitfaden fuer Patienten und Aerzte

 

訳者解説

この「ドイツにおける患者権利」という手引は、20032月にドイツの連邦法務大臣連邦保健医療社会保障大臣連名発表されたが、「患者権利憲章Patientencharta」とも言われている。この手引はドイツの医師患者の間の権利義務を示すものであるが、私たちにとっても参考になると考えて翻訳した。しかし、ドイツと日本との違いを認識して読む必要がある。

例えば序言に「このキュメンは、議論余地のない現行法律総括である」と書かれているように、ここに示された権利義務はすでに明文された根拠を有している。それには法律そのものだけでなく、医師作成した規則医師職業規則など)や指針説明に関する指針など)の類も含まれているが、これらは法律と同じような拘束を有している。「権利義務はこうあるべきだ」という目標だけを述べ、法的根拠整備されていない綱要的なものとは異なっている。

また、ドイツで医事紛争解決に大きく貢献している裁判外での調停鑑定および調停機関による)はあまり知られていないと思うが、この規定裁判紛争処理統計については後日このホームページ紹介したいと思っている。

さらに、重大診療過誤存在するとき、患者立証責任緩和する「立証責任転換」という制度もできているが、これについての解説は私の能力を超えるので法律専門にお願いしたい。

200361日                 岡嶋道夫(訳)

 

写真

Brigitte Zypries

連邦法務大臣

写真

Ulla Schmidt

連邦保健医療社会保障大臣

 

国民皆様

「ドイツにおける患者権利」は医師患者のより信頼に満ちた協力に役立つものである。信頼は、関係全員がそれぞれの権利義務理解したときに生れる。ここに示すキュメン医師患者関係権利義務について解説するものである。分りやすい言葉で言うと、どのような権利であるかを明らかにすることである。

 

このキュメン保健医療関係する多数の人たちが共同作成したものである。このような共同ということは、よりよい情報伝達への重要前進であり、相互信頼促進し、それにより患者が守られることになる。「ドイツにおける患者権利」は患者医師に、医療処置に含まれる本質権利義務を伝えるものであり、また誤った処置場合に対する指示も含まれている。

 

したがって、「ドイツにおける患者権利」は、医師患者信頼に満ちた協力と、それによって可能範囲最良診療結果を得るための良い基礎になるものである。

 

情報を与えられた患者だけが、治療プロセス積極関与し、自分責任決定し、治療プロセス共同責任を持つことができる。そして医師として本人権利義務を知る者が、患者をよりよく支えることができる。

 

「ドイツにおける患者権利」は、連邦裁判の前所長であったKarlmann Geiss名誉博士指導のもとに、患者団体医師団体公的疾病金庫民間医療保険自由福祉事業団、ならびに保健大臣法務大臣会議代表者たちによって作成された。その人たち全員卓越した作業感謝する。

 

Brigitte Zypries
連邦法務大臣
Ulla Schmidt
連邦保健医療社会保障大臣


 

目次

序言

診療における相互関係

患者は誰に診療をさせることができるか?

医学処置はどのような質を有しなければならないか?

患者同意は何を意味するか?

生命終焉時の自己決定

患者への説明情報に関しては何に注意すべきか?

実験診療

どのような医学処置記録されなければならないか?

患者診療記録を見ることができるか?

人権保護患者記録秘密考慮して注意すべきことは何か?

損害を受けた場合

患者はどこで助言を受けられるか、また場合によっては患者はどのようにして賠償追及できるか?

相談

損害賠償請求行使

費用

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序言

 

このキュメンは、保健医療関係する人たち全員、とくに医師歯科師、看護要員心理療法士および医療専門従事者の方々に、患者権利尊重し、患者がその権利行使するのを支え、日常診療において保健医療関与する総ての人が患者権利配慮することを目指すように呼びかけるものである。治療看護リハビリおよび予防は、患者尊厳不可性を尊重し、患者自己決定プライバシを重んじなければならない。患者医師疾病予防し、発見し、癒し、または和らげるという共通目的を持たなければならない。医師患者の間の信頼に満ちた意思疎通治療成果に対する重要条件である。治療および決定の真のパートナシップであるとたがいに理解したときに患者医師関係ができてくるが、その機会はしっかりと役立たせるべきである。患者医師の間の個人会話には特別意味があるが、それは大変大きな尊敬信頼および協力治療相互関係の中に作られるからである。

 

患者適切説明相談、ならびに慎重専門診療を望んでいる。診断治療手段患者調整しなければならない。いずれの診療患者協力必要とする。治療成果最高治療であっても保障されるものとは限らない。患者自分健康に対して共同責任があり、また健康意識した生活仕方早期健康のための予防処置関与すること、そして疾病処置リハビリ積極協力することによって、病気になってしまったり障害に陥ってしまうようなことを回避し、またそのような結果克服することに努めなければならない。

 

このキュメンは、診療における相互関係に、より信頼に満ちた協力関係導入することを考えている。診療における相互関係に含まれる本質権利義務を眺めてみることにする。それにより患者には、処置種類範囲影響、およびそれと結びついた健康上の成果の見込みとリスクに関して、医師から包括個人説明がなされるとともに、医学処置について必要決定を下すことを助ける情報が与えられる。同時にこのキュメンは、医師医療職の従事者に、かれらの日常業務指南として役立つことになる。患者として自分権利義務を知るものは、治療過程にみずから積極関与することができる。医師として自分権利義務を知るものは、患者をよりよく支えることができる。

 

このキュメンは、議論余地のない現行法律総括である。それは保健医療における透明を高め、幅広支持によって総ての関係に対して持続的な効力発揮するものである。

 

診療における相互関係

 

患者は誰に診療をさせることができるか?

 

患者原則として医師病院自由に選び、替える権利を有する。患者医師セカンドピニオン入手することができる。他の医師助言を求めたい、あるいはセカンドピニオン入手したいという根拠のある要望医師拒絶すべきではない。診療記録協働医師に渡さなければならない。患者発生しうる費用について医師または費用負担者(例えば公的疾病金庫)に予め伝えておくべきである。

 

医学処置はどのような質を有しなければならないか?

 

患者は、医療技術公認規定に従った適格慎重医学処置請求する権利を有する。これは適格看護世話包括する。ある処置に対して医学基準に合った必要組織人的または物的条件提供できないときは、患者適切医師または適切病院転送されなければならない。

 

診療のために使われる医薬医用機材法律規定された質と安全条件を満たしていなければならない。それに対しては薬剤を扱う業者製造者が、医師の誤った処方使用場合には処置に当っている医師または病院責任を持つ。公的疾病金庫会員は【健康保険組合組合相当】、予防早期発見ならびに疾病処置のために医療技術規定を満たし、目的に適い、かつ経済のある医師処置要求する権利がある。疾病金庫給付義務存在しない必要給付は、患者費用負担するときにだけ実施してもらえる。疾病金庫患者のこのような要望に対して、公的医療保険給付に関して個別助言しなければならない。公共保健医療サービスも、保健医療役所を通して助言任務を果たす。障害がある場合には、社会典第9巻(SGB IX)で規定されたサービス部署から助言が得られる。社会給付開設者も、社会福祉法の請求一般について説明する義務を有する。

 

患者同意は何を意味するか?

 

患者医学処置種類範囲をみずから決定する権利を有する。患者は、処置してもらうか、してもらわないかを決定することができる。したがって医学給付医学的に必要だと思われるときにも、患者原則としてこれを拒否することができる。多数同格医学処置または処置方法が考えられる場合は、医師成果の見込みとリスクについて包括説明しなければならない。患者適用する処置選択することができる。患者医師の間で処置種類処置範囲についてコンセンサス形成されないときは、医師は−救急場合を除き−診療を断ることができる。総ての医学処置患者効力のある同意条件とする。同意は、患者処置の前の適切時期説明を受けるか、または説明明白に拒んだときにだけ有効とされる。必要認識能力を有する者だけが有効同意をすることができる。必要同意能力未成看護を受けている者も持っている。とくに重大侵襲は、未成認識能力が備わっている場合においても、本人同意に加えて法的代理同意−これは通常両親−が必要となりうる。患者必要認識能力を備えていないときは、法的代理または後見裁判指定した世話処置同意しなければならない。そのような人はそのさいに、推測される患者意思遵守する。患者健康上の問題同意するために本人信頼する人に適時全権委任していたときは、世話指名必要となる。とくに重大侵襲場合には、猶予を許さない救急でないかぎり、世話または全権委任された者による同意には、後見裁判承認必要となる。

 

患者面談可能でない状態のときは、生命健康維持する救急処置本人推定される同意十分である。患者推定される意思は、近親者あるいは親友情報から見つけ出すことになるだろう。

 

生命終焉時の自己決定

 

死にゆく人の診療場合も、医師患者自己決定人間尊厳性に配慮しなければならない。死ぬ患者適切なケア、とくに痛みを和らげる処置を望む権利がある。かれらは診断および治療方法範囲をみずから決定することができる。決定能力のある患者は、治療中止または延命処置中止を望むことができる。死を誘発したり死を促進することのある方法による意図生命短縮は禁じられており、また患者がそれを望んでいても罰せられるおそれがある。

 

決定能力のない患者場合推測される意思に合わせなければならない。推測される意思を得るためには、とくに以前に作られた書面または口頭による患者表明、およびその他の本人のものと識別できる価値考慮するものとする。本質なことは、そのさいに配偶または人生伴侶近親者および友人、ならびに他の近しい人物患者推測される意思を問うことである。

 

患者は、本人がもはや決定能力がなくなったというときのために、所謂リビング・ウィルの形で生命維持または延命方法を予め拒絶することができる。リビング・ウィルに記録された意思は、医師に対して原則として拘束を有している。リビング・ウィルがある場合患者がこの記録を書いたときに思い浮かべていたことと具体状況とが一致するかどうか、またリビング・ウィルのなかで表明されている意思が、医師決定を下す時点において以前同様現在にも当てはまるかどうかを、医師はそれぞれの場合厳密に調べなければならない。患者リビング・ウィルのなかで信頼する委任者を指名することができるが、その人に対しては医師守秘義務は解かれる。

 

患者指示についての情報は、たとえば州保健衛生局、医師教区福祉協会消費センター患者組織または介護施設で求めることができる。

 

患者への説明情報に関しては何に注意すべきか?

 

医師患者に、処置前の適切時期原則として個人会話のなかで処置種類範囲、それに結びついた健康上のリスクを説明し、患者同意を得なければならない。書式形式のものや説明を書いた用紙会話代用とはならない。説明を行う医師処置をする医師でなければならないというわけではない。それにもかかわらず十分説明に対する責任は、処置をする医師が常に負う。効力を有する同意は、患者本人能力処置種類範囲および影響、およびそれに結びついた健康上のリスクを精神圧迫を感じないで評価し、自分相応した決定をする状態にあるというような患者への包括かつ適時説明条件となる。治癒する成果の見込みに対する種々なリスクの種類確率、および代替治療可能についても教えなければならない。

 

説明範囲時点侵襲重大さと緊急性に合わせる。患者説明を通して、具体予定されている処置が、自分に対して何を意味しているかを判断できる状況にならなければならない。患者質問に対して、医師はありのまま、完全に、そして理解しやすく答えなければならない。医師言葉による意思疎通のできない患者に対しても、説明助言理解できるものでなければならない。患者は、医師説明拒絶し、それ以外医師またはそれに代わって説明をすることのできる者を決める権利を有する。

 

実験診療

 

効果安全科学にまだ確かでない所謂実験診療参加する前に、患者実施条件効果とリスク、ならびに処置代替について包括説明されなければならない。患者医学研究または教育への協力拒絶する権利を有する。患者には拒絶によって医療不利が生じてはならない。

 

どのような医学処置記録されなければならないか?

 

もっとも重要診断および治療処置(例えば: 診断のための検査機能所見投薬機能処置のケアに対する医師指示指導スタンダード処置変更)および経過記録(例えば: 説明、または説明に対する患者拒絶手術報告麻酔プロトコル処置経過中の特異なこと)は記録されなければならない。一緒に、または後で診療に当る医師理解できるものであれば、見出し語のような記載十分である。決まりきった助言や決まりきったチェック原則として記録しなければならないことではない。記録権限のない干渉や後からの変更から保護されなければならない。

 

患者診療記録を見ることができるか?

 

患者自分関係した診療記録を見る権利があり、また自分費用でコピーさせたり、記録からプリントアウトさせる権利を有する。患者信頼している人に閲覧委任することができる。閲覧請求は、患者健康状態に関するあらゆる客観確認(例えば自然科学的に客観所見検査検査結果ならびに心電図レントゲン写真などのような患者検査結果)、および状態に関する記録処置経過(例えば投与したり処方したりした医薬記述手術記録医師手紙やそれに類するもの)に及ぶ。閲覧権利は、医師主観判断および印象該当する記録には及ばない。閲覧のそのほかの制限は、精神診療領域および診療関係した人(例えば家族友人)の権利に触れるときに存在することがある。

 

人権保護患者記録秘密考慮して注意すべきことは何か?

 

患者関係がある情報記録およびデータは、医師看護関係の人、病院および医療保険者によって秘密に扱われなければならない。それらは患者同意あるとき、または法的規定根拠とする場合にだけ他に伝えることができる。医師守秘義務は他の医師に対しても存在する。

 

データバンク記録された患者に関する記述は、破壊変更および不法アクセスから技術および組織保護されなければならない。それらは保存期限経過したら消去されなければならない。

 

病棟での診療場合患者処置看護において誰が世話をするかについて知らされなければならない。治療会話をするときは、秘密保障されなければならない。原則として患者健康状態家族にも明らかにすることはできない。患者自分健康状態に関する情報を他の人に伝える権限医師に与えることができる。指名された人は、患者健康状態について医師情報を求めることができる。

 

損害を受けた場合

 

ドイツにおける健康保障は高い水準にあることが認められている。医師専門医学教育とともに特に医師職業従事における質の確保重点が置かれている。それにもかかわらず診断の誤りや処置の誤りが起りうるが、常にそうだということではないけれど、期待した処置結果が得られないときに、医師診療過誤存在することが示唆される。

 

欠陥がある診療または十分説明場合には、患者損害賠償および慰謝料請求権利がある。医薬または医用機器(例えばレントゲン装置)によって生じた損害場合には、製薬企業製造者に対しての請求存在することもある。

 

診療過誤存在すると認められる根拠があれば、患者最初診療をした医師または助言機関と話をして診療記録閲覧するかコピーを作らせることをすべきであろう。病院での場合は、患者にはさらに病院管理部に相談する可能も開かれている。損害を受けた場合には、これ以外一般なこととして以下のような事項注意すべきである:

 

患者はどこで助言を受けられるか、また場合によっては患者はどのようにして賠償追及できるか?

 

相談

 

患者苦情相談の頼みを、医師歯科師会、疾病金庫保険組合相当する】に、あるいは独立した患者相談および苦情機関消費センターおよび自助組織に持ち込むことができる。患者苦情機関はすでに多くの病院内に設置されている。

 

弁護相談することも合理かもしれない。専門弁護弁護または弁護協会で問合せることができる。

 

損害賠償問題になるときは、請求時効によって効力を失うことを避けるために、遅滞なく相談をすることが患者にとって得策である。

 

損害賠償請求行使

 

損害賠償請求は、裁判外または裁判において行使することができる:

 

医師および歯科師会は、医師賠償義務の争いのケースを、当事負担を軽くするように裁判外で調停する鑑定および調停機関通常鑑定委員および調停所という名称が用いられている】を持っている。鑑定および調停機関には通常医師法律配置されている;かれらは自由意志参加している。鑑定および調停機関は、まだ裁判手続に入っていない事件5以上経過していないものを取り扱う。診療過誤または損害賠償問題に対するこれらの機関見解は、本質には当事に対して、また時としてそれに引き続いて行われる裁判手続に対して拘束を持つものではない。

 

保険要望により、診療過誤によって起った可能のある損害賠償請求行使する場合に、公的疾病金庫無料でその保険に対して相談支援する(例えば疾病金庫医学助言機関MDKにおいて医学的な専門鑑定入手する)。

 

それだけでなく、患者民事裁判所に賠償請求提訴することも可能である。医師損害賠償請求訴訟では、患者原則として医師義務違反、生じた損害損害に対する過誤因果関係、ならびに加害過失を述べ、否認場合立証しなければならない。重大診療過誤存在するような場合などには、患者のためになるように、立証責任転換(Beweislastumkehr)、つまり加害反証しなければならないこと、に至るまでの立証責任緩和作動する。争われている場合には、患者規則に適った説明をしたことの証明は、診療をした医師義務がある。記録欠如があるときは、医師に対して、記録されてない処置は行われなかったものと推定される。

 

費用

 

患者助言機関および患者苦情機関に問い合わせること、および鑑定および調停機関請求主張することは原則として無料である。弁護による相談費用負担しなければならない。このために費用調達できない者は相談援助請求することができる。しかし、民事裁判権利を追うときは費用が生ずる。訴訟遂行のための必要経済資金がない者は、訴訟費用援助請求することができる。

 

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この資料連邦司法連邦保健医療社会保障省が提唱し、前連邦裁判所長Dr.h.c.Karlmann Geiss指導の下に下記組織によって作成されたものである:

 

【各組織名称とそれに含まれる各種組織構成複雑で、正確翻訳することが困難である。例えば保健医療を扱う省の名称は、連邦や各州で異なっている。杜撰紹介であるが、どのような団体参加しているかの概略察知していただきたい】

連邦医師

連邦労働共同 障害援助

連邦労働共同 患者機関

連邦歯科師会

ドイツ病院協会

自由福祉連盟

カリタス、ディアコニッセ、パリテーティシュ)

ドイツ保険事業総連

連邦保険協会

保健大臣労働女性保健少年社会大臣会議

法務大臣会議

てんかん−自助グループ連盟

公的疾病金庫連盟

消費センター連邦連盟

 

奥付

発行者 

連邦保健医療社会保障省 広報

連邦法務 広報

20032

以下