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末尾の「訳 20032月修正加筆をご覧下さい

D129

ドイツ医師のための職業規則(原型)

2003

アイゼナッハにおける第100回ドイツ医師会議で議決された版であるが、2000年のケルンにおける第103回医師会議で改訂、2002年のロストックにおける第105回医師会議で改訂、2003年のケルンにおける第106回の医師会議で改訂された

この職業規則(原型)は、各州医師会の医師会議で規則として議決され、かつ州の監督官庁によって承認されたときに法律上の効力を持つようになる

(Muster-)Berufsordnung für die deutschen Ärztinnen und Ärzte

in der Fassung der Beschlusse des 100.Deutschen Ärztetages in Eisenach

 

訳者解説の内容を修正加筆しました。 20032

ドイツ医師のための職業規則は1970年版D1181993年版D1011997年版D119も掲載しました

 

付記:2003年の改訂版について

 医師職業規則は1997年に内容を大幅に更新し、新しいスタイルとなった。医師職業規則はたえず変化する時代の要請に応える形で、従来も頻繁に訂正・追加が行われてきたが、さらに2000年、2002年、2003年の3回にわたって一部の条文の改訂が行われた。

ここに紹介する2003年版では、1997年以後に改訂された条文を青色文字で示すことにした。これにより、1997年以後に変更された内容を知ることを容易にした。

青色文字で示されていても、その条文が全部変更されたということではなく、条文の一部の変更、または項目の配列順が変わっただけのところもある。なお、原文は同じでも訳文を少し変えた箇所もある。

医師職業規則は、医師の憲法にたとえられるほど重要な規則であるが、常にこれを改訂していくという柔軟な姿勢には学ぶべきものを感じる。

200312月                       訳者 岡嶋道夫

 

本文中にある【 】内の記述は訳者が加えた注で、原文にはないものである。

 

誓約

以下の誓約は総ての医師に適用される:


『私が医師という身分に採用されるに当り、私の生命を人間性の奉仕に捧げることを私は厳粛に誓約いたします。

私は私の職業を良心と尊厳をもって実行いたします。

私は総ての私に委託された秘密を患者の死んだ後も守ります。

私は私の全力をもって医師としての職業の名誉と品位ある伝統を維持し、私の医師としての義務を行なうに当り、宗教、国籍、民族さらに派閥または社会的立場によって差別することはいたしません。

私はあらゆる人の生命に対して畏敬の念を持ち、たとえ脅迫を受けたとしても人間性の掟に反することなく私の医術を行使します。

私は私の師及び同僚に当然なすべき尊敬を表します。私はこれらのすべてを私の名誉にかけて厳粛に約束いたします。』


 


誓約

 

A.序言

 

B.職業従事のための規定

 

 

I. 原則

 

 

§

 医師の任務

 

 

§

  医師の一般職業義務

 

 

§

 容認できないこと

 

 

§

 生涯研修

 

 

§

 質の保証

 

 

§6

 好ましくない医薬品作用の報告

 

 

II. 患者に対する義務

 

§

 診療の原則と行動規範

 

 

§

 説明の義務

 

 

§

 守秘義務

 

 

§

 記録作成義務

 

 

§

 医師の検査及び診療の方法

 

 

§

 報酬及び報酬の取り決め

 

 

III. 特殊な医療手続と研究

 

 

§

 徳殊な医療手続

 

 

§

 未出生の生命の保持と妊娠中絶

 

 

§

  研究

 

 

§1

 死にゆく人に対する付添い

 

 

IV. 職業的態度

 

 

.

職業従事

 

 

§1

 開業及び診療所従事

 

 

§

 支所診療所、診療所スペースの延長

 

 

§

 被雇用の診療所医師の従事

 

 

§

 代理

 

 

§21

 賠償責任保険

 

 

§

 共同の職業従事

 

 

§2a

 共同の公示

 

 

§

 勤務環境と医師

 

 

§2

 医師業務の契約

 

 

§2

 医師の鑑定書【意見書の意味も含む】と証明書

 

 

§

 医師の救急業務

 

 

.

職業上のコミュニケーション

 

 

§2

 不許可の宣伝、職業従事に関する許可された客観的情報

 

 

§

 社会への貢献とメディア活動

 

 

.

医師による職業上の共同作業

 

 

§

 同僚としての共同作業

 

 

.

第三者と共同作業をする場合における医師の独立性の保証

 

 

§3

 医師の第三者との共同作業

 

 

§

 報酬による患者斡旋は許されない

 

 

§3

 贈物及び他の便宜の受領

 

 

§3

 医師と産業

 

 

§3

 医薬品、療法、及び補助具の処方、推薦及び鑑定

 

 

§3

 生涯教育とスポンサー

 

C. 行動規定(医師の正しい職業従事の原則)

 

 

No.

 患者との対応

 

 

No

 診療の原則

 

 

.3

 医師でない共働者とのつきあい

 

D. 医師の個々の職業義務に対する補充規定

 

 

I. 職業上のコミュニケーションに対する規定、とくに職業業務に関する客観的情報の許容された内容と範囲

 

 

No.−6 削除

 

 

II. 共同作業(共同体診療所、パートナーシップ、医学的協力共同体、診療所連帯)

 

 

No

 職業権利の保留

 

 

No.8

 医師の職業従事共同体

 

 

No

 医師及び他の専門職所属者との間の協力職業従事

 

 

No10

その他のパートナーシップへの医師の関与

 

 

No.

診療所連帯

 

 

III. 国境を越えた医療従事の場合の義務

 

 

12

他のEU加盟国におけるドイツ医師の診療

 

 

No13

他のEU加盟国からの医師の国境を越えた医療従事

 

 

IV.特別な医学的状況における義務

 

 

No14

ヒト胚の保護

 

 

No.

人工受精、胚移入

 

 

付:訳解説

    注1

 

 


 


A. 序言


カンマー法 Kammergesetz【ここではカンマーは医師会を指す】及び医療職法 Heilberufsgesetz に基づいて議決されるこの職業規則は、患者、同僚、保健医療における他のパートナーに対する医師の態度、並びに社会における医師の態度に対する医師集合体としての信条を表示するものである。そのために、医師は以下の職業規則に献身する。職業規則は、医師の職業義務を確定することにより、同時に以下の目標にも役立つことになる。

【以下「医師」という表現は、男性と女性の両方の医師を意味する】

− 医師と患者の間の信頼を保ち、促進する;

− 住民の健康の利益のために、医師業務の質を確保する;

− 医師職業の自由と名声を守る;

− 職業倫理的態度を促進し、職業倫理に反する態度を阻止する。

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B.職業従事のための規定


I.原則

§1 医師の任務

 (1) 医師は個人および住民の健康に奉仕する。医業は営業ではない。医業はその本質からみて自由業である。

【自由業:注、末尾に

  (2) 医師の使命は、生命を維持し、健康を守り回復させ、苦痛を和らげ、死にゆく人を援助し、人類の健康に対する重要性という観点から自然の生命基盤の保持に貢献することにある。

目次に

§2 医師の一般職業義務

  (1) 医師は、その良心、医師倫理の規則及び人間性に従って職務を行う。医師はその使命と相容れない、または従うことに責任を持つことのできないような主義を認めてはならないし、そのような規定や指示に従ってはならない。

  (2) 医師はその職務を良心的に行い、職務に関連して寄せられる信頼に応えなければならない。

  (3) C章に掲げた適切な医師としての職業従事の原則が、良心的な職業従事のために必要である。

  (4) 医師は、医師としての決定に関しては、医師でない者の指示に応じてはならない。

  (5) 医師は、その職業従事に対して適用される規則についての知識を有していなければならない。

  (6) 以下の規則で規定されている情報提供義務及び届出義務にかかわりなく、医師会が職業監視の法的任務を満たすために医師宛に出した医師会からの照会に、医師は適切な期限内に回答しなければならない。

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§3 容認できないこと

  (1) 医師には、その職業従事の傍ら、医師の職業倫理的原則と相容れない他の仕事に従事することが禁じられている。医師には、医師の職業称号を付したその名前を、営業目的のために不正な方法で提供することが禁じられている。医師は、同じように、その名前または医師の職業上の威信を、そのような方法で使用されることを許してはならない。

  (2) 製品またはサービスの提供が、特殊な事情によって医師の治療に必要な要素になっているということがなければ、医師としての職業従事と関連して品物及び他の対象物を渡したり、あるいは働きかけて渡させたりすること、並びに営業的サービスを提供したり、あるはそれを提供させたりすることが、医師には禁じられている。

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§4 生涯研修

  (1) 職業に従事する医師には、その職業従事に必要な専門知識を保持かつ推進するのに必要となる程度の生涯研修を行うことが義務づけられている。

  (2) 医師は、(1) による生涯研修を行っていることを、医師会に対して適切な方法で証明できなければならない。

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§5 質の保証

医師は、医師業務の質を保証するために、医師会によって導入された措置に参加し、そのために必要とされる回答を医師会に伝えることが義務づけられている。

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§6 好ましくない医薬品作用の報告

医師は、医師としての診療を行うことによって判明した好ましくない医薬品作用を、ドイツ医師組織の医薬品委員会(連邦医師会の専門委員会)に報告する義務がある。

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II.患者に対する義務

§7 診療の原則と行動規範

(1)  すべての医学的診療は、人間の尊厳を守り、患者の人格、意思及び権利、とくに自己決定を尊重して行われなければならない。

(2)  医師は、医師を自由に選択し、または変更する患者の権利を尊重する。他方において、救急または特別な法的義務がなければ、医師も診療を断ることが自由である。診療に当っている医師は、他の医師を呼んでほしい、または他の医師に回してほしいという患者の根拠ある希望を原則として拒否してはならない。

(3)  医師は、個人に対する医師としての診療、とくに相談を、手紙、新聞または雑誌のみならず、情報伝達媒体またはコンピュータ通信ネットを介して行ってはならない。

(4)  患者の家族と他の人は、責任を有する医師と患者が同意したときに、検査と治療に同席して差し支えない。

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§81)  説明の義務

医師は、診療するには患者の同意を必要とする。同意には原則として、必要な説明を個人的な会話で先に行わなければならない。

1)「患者への説明のための提案(指針)」は、ドイツ医師会雑誌1990419日号、16号に掲載されている。【翻訳は岡嶋道夫:ドイツの公的医療保険と医師職業規則、信山社、1996年に掲載、またはD122

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§9 守秘義務

  (1) 医師は、医師の資格において委ねられたり、知らされた事柄については−患者の死後においても−秘密を守らなければならない。これには患者の書面による報告、患者に関する記録、X線写真、その他の検査所見も含まれる。

 (2) 医師が守秘義務から解かれたとき、または公表することがより高い法益を守るために必要とされる場合には、秘密を明らかにする権限が与えられる。法的な証言−及び届出義務は関係がない。法律の規定が医師の守秘義務に制限を加えているときは、医師は患者にそのことを教えなければならない。

  (3) 医師は、その補助者、および医療業務に従事するための見習者に対して、秘密保持の法的義務を教え、これを文書として記録しておかなければならない。

  (4)  数名の医師が同時または相次いで同一患者を診察または治療する場合には、患者の同意が得られるか、あるいはそのように推定できるならば、医師たちは相互に守秘義務から解かれることになる。

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§10 記録作成義務

  (1) 医師は、その職業従事において確認したこと及び施した処置について必要な記録を作成しなければならない。これは医師の記憶に役立つだけでなく、規定に従った記録を作成することにより患者の利益にも役立つ。

  (2) 医師は、患者の要望があれば、原則として当人に関連した診療記録を見せなければならない:医師の主観的印象または感知したことを含む部分は除外される。請求があれば、患者に費用負担をさせて記録のコピーを渡さなければならない。

  (3) 他の法律規定によってそれより長期の保存義務が存在しなければ、医師の記録は診療終了後10年の期間保存しなければならない。

  (4) 診療所の閉鎖後は、医師はその医療上の記録と検査所見を (3) により保存するか、または管轄の監督に渡されるように配慮しなけければならない。診療所の閉鎖または診療所の委譲により、患者に関する医師の記録を監督のため渡された医師は、これらの記録を施錠して保管しなければならないが、患者の同意があったときにのみ中を見たり、または引き渡すことができる。

  (5) 電子データ記録媒体または他のデータ記憶装置上の記録は、変更、破棄または非合法的使用を防ぐために、特別な安全及び保護処置を必要とする。医師はこれに関して医師会の提案に注意しなければならない。

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11 医師の検査及び処置の方法

  (1) 診療を引受けることにより、医師は患者に対して適切な検査及び治療処置を伴った良心的なケアをすることが義務づけられる。

  (2) 医師の職業命令は、患者の信頼、無知、だまされやすさ、または頼るもののないことを悪用して、診断または治療方法を適用することを禁止している。治癒するという成果を、とくに治らない疾患の場合に、確実であるかのように確約することも許されていない。

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12 報酬及び報酬の取り決め

  (1) 報酬請求は適切でなければならない。算定に対しては、他の法的報酬規定が適用されないかぎり、公的な料金規則(GOA)が基礎となる。医師は、GOAによるリストを公正でない方法で下回ってはならない。報酬の合意を結ぶ場合に、医師は支払い義務者の収入及び資産状況を考慮しなければならない。

  (2) 医師は、近親者、同僚、その家族、及び無資力の患者に対して、報酬を全額または一部免除することができる。

  (3) 関係者からの申込があれば、医師会は報酬請求が適当なものであるかについての意見表明を行う。

【訳者注:この条文は主として私費診療(その多くは民間医療保険に加入している)の場合を対象にしている。公的医療保険の場合は医師料金規則GOAに基づいて行われるので、この条文は直接関係はない。私費診療の報酬額は、通常は公的医療保険の料金の2.3倍というように、GOAを基準にしている。】

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III.特殊な医療手続と研究

§132) 特殊な医療手続

  (1) 倫理問題が生じていて、それに対して医師会が適応設定及び実施のための提案を定めているような特殊な医療処置または手続の場合には、医師は提案を守らなければならない。

  (2) 医師会が要求するものであれば、医師はそのような処置または手続を医師会に届出なければならない。

  (3) そのような業務が採用される前に、医師は医師会の要求により、人的及び物的条件が提案を満たしていることを証明しなければならない。

2)ドイツ医師会雑誌22号、1985529日号に発表された「卵管内配偶子移入、胚移植を伴う人工受精、及び他の類似方法の実施のための指針」は、引き続き§13により効力を有する。

【この指針はその後改訂され、翻訳は岡嶋道夫:ドイツの公的医療保険と医師職業規則、信山社、1996年」に掲載されているが、この翻訳のあとも、多少の改訂が行われている】

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§14 出生前の生命の保持と妊娠中絶

  (1) 医師は、原則として出生前の生命を保持することが義務づけられている。妊娠中絶には法的規定が必要である。医師は、妊娠中絶を行うこと、または控えることを強制されてはならない。

  (2) 妊娠中絶を行った、または死産を扱った医師は、死んだ胎児が誤用されないように注意をしなければならない。

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§15 3) 研究

(1)   医師は、人体に対する生物医学的研究−単なる疫学的研究計画の場合は除く−を実施する前に、医師会または医学部に設置された倫理委員会によって、その計画と結びついた職業倫理的及び職業法律的問題に関して助言を受けなければならない。同様なことは、生きている人の配偶子及び生きている胚組織を用いた法的に許可された研究の実施の前に適用される。

(2)   科学的研究及び教育の目的のためには、患者の匿名が保証されるか、または患者が同意を表明したときだけ、守秘義務の下にある事実や所見は原則として明らかにして差し支えない。

(3)   研究成果の公表においては、医師と委託者の関係及び委託者の権益を明らかにしなければならない。

3) 98回ドイツ医師大会での職業規則§3(7)で編纂された指針は、連邦医師会理事会によって199138日に議決されている。

付記:連邦医師会は以下の条文を107回医師大会(2004年)において追加するように要請している。

(4)  医師は人体の研究において、世界医師会のヘルシンキ宣言に書かれている人体の医学的研究に対する倫理的原則を尊重する。

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§16 死にゆく人に対する付添い

医師は、避けられない死を引伸すことが、死にゆく人に対して、期待を持てずに苦しみを延引するだけと思われる場合には、患者の意思が優先することであるが、生命延長処置を止めて、苦痛を緩和することに限定して差支えない。医師は死にゆく人の生命を積極的に短縮させてはならない。医師は、自分の関心だけでなく、第三者の関心も、患者の幸せよりも上に置いてはならない。

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IV.職業的態度

1.職業従事

§17 開業及び診療所従事

(1)  病院及び認可された私的病院施設以外において外来医師業務に従事することは、法的に別途規定がないかぎり、自分の診療所における開業ということになる。

(2)  病院または認可された私的病院施設で従事するか、または法律の規定で別途認可されていないかぎり、場所を転々と変えながら、営業的な形で、あるいは営業的な療術と言えるような業務を行っている雇用主のもとで診療所医師としての業務を行うことは、職業倫理に反する。

(3)  職業上の要件が侵害されず、職業規則を守ることが保証されるならば、医師会は申請により(1)及び(2)の命令と禁止に例外を認めることができる。

(4)  開業は診療所看板によって明示されなければならない。医師はその看板に

名前
医師称号(専門医)
診療時間
場合によっては§22と関連してDUNo.8に従って職業従事共同体への所属を示す。

患者に直接接しないで従事する医師は、医師会に届け出れば、診療所看板による開業案内を出さなくてもよい。

(5)  医師は、開業の場所及び時、並びに全ての変更を医師会に遅滞なく報告しなければならない。

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§18 支所診療所、診療所スペースの延長

(1)   複数の場所において診療時間を設定することは医師には許されていない。住民の医療給付を確保するために必要な場合には、医師会は支所診療所(診療時間)の許可を出すことができる。診療時間外の医師の救急業務を確保するために、他の医師と共同で組織された診療所は一つの支所診療所となる。

(2)   医師は、開業の場所の近所に、専門的な検査と治療の目的のために、検査と治療の場所を維持して差し支えない(診療所スペースの延長)。診療所スペースの延長では、開業の場所で行うような給付を行っても差し支えない。個人的な給付提供に対する義務には抵触しない。
診療所スペースの延長は医師会に届出て、提供される給付とアドレスならびに電話番号を記した看板によって示すことができる。

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§19 被雇用の診療所医師の従事

医師は自分の診療所では本人が従事しなければならない。診療所での医師共働者(被雇用の診療所医師)の従事は、そこの開業医による診療指導が前提条件となる。医師は、医師の共働者の従事を医師会に届け出なければならない。

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§20 代理

  (1) 開業医は原則として相互に代理する心構えをしなければならない;引受けた患者は代理終了後に戻さなければならない。医師は原則として、同じ専門科の医師だけに代理をさせることができる。

  (2) 診療所での業務の代理が12ヵ月のうち合計して3ヵ月以上に及ぶときは、診療所における代理としての従事は医師会に届け出なければならない。

  (3) 死亡した医師の診療所は、その未亡人または扶養権利のある家族のために、死亡した四半期が終終わったあと、3ヵ月の期間までは、原則として他の医師によって継続することができる。

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§21 賠償責任保険

医師は、その職業業務の枠内での賠償責任請求に対して、十分な保険をかけることが義務づけられている。

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§22 共同の職業従事

共同の職業従事のために、D章 No.7 から 11 に規定された医師の職業従事共同体(共同診療所、医師パートナーシップ)、医師による組織共同体(例えば診療所共同、機器共同)、及び医学的協力共同体、並びに診療所連携が認められている。

§22a 共同の公示

(1)   医師による職業従事共同体(共同体診療所、医師パートナーシップ、D章UNo.8)−パートナーシップ共同体の名前に関係なく−共同体に提携している医師総ての名前と医師称号を公示しなければならない。提携は法律の定めた方式にしたがって「共同体診療所」または「パートナーシップ」を付記して公示しなければならない。すでに従事しなくなった者、別れてしまったり、死亡したりしたパートナーの名前を存続させることは許されない。医師の共同体診療所またはパートナーシップが、D章UNo.8により複数の診療所の場所を持つときは、各パートナーに対して診療所の場所を付して公示しなければならない。

(2)   D章UNo.9による協力の場合は、医師は協働パートナーとの共同の診療所看板に自分を加えさせなければならない。D章UNo.10によるパートナーシップの場合に、医師の職業称号の提示が予定されているならば、医師は「医師」の称号または他の標榜可能な称号を呈示することだけが許されている。

(3)   組織共同体の提携は公示してはならない。

(4)   D章UNo.11による診療所連携に所属することは、連携の名称を付けることによって公示することができる。

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§23 勤務環境と医師

  (1) この職業規則の規定は、私法上の雇用関係または公法上の勤務関係の枠内において医師業務を行う医師にも適用される

  (2) 上記の雇用または勤務関係においても、医師は、その医師としての業務に対して、報酬によって医師の医学的決定の独立性に影響を及ぼすような報酬を受けることに妥協してはならない。

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§24 医師業務の契約

職業上の要件が守られるかどうかを審査できるようにするために、医師はその医師業務に関する全ての契約を締結前に医師会に提出しなければならない。

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§25 医師の鑑定書【意見書の意味も含む】と証明書

医師としての鑑定書及び証明書を提出する場合、医師は必要な慎重さをもって行い、また誠心誠意をもって医師として信ずるところを述べなければならない。医師が提出を義務づけられ、または提出することを承諾した鑑定書と証明書は、適切な期間内に引き渡されなければならない。共働者【職業教育を受けている者を指す】及び卒後研修医師に関する証明書は、原則として申請提出後3ヵ月以内に、不合格の時は即刻、発行されなければならない。

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§26 4) 医師の救急業務

(1)   開業医は救急業務に参加することが義務づけられている。医師からの申請があれば、重大な理由があるときは救急業務から全部、部分的または一時的に免除することができる。これにとくに該当するのは:

·           身体的障害によってそれが可能でないとき、

·           特別に負担のかかる家庭的義務により参加が要求できないとき、

·           救急ケアを伴った臨床待機業務に参加しているとき、

·           女医に対しては、妊娠の告知の時点から分娩後12ヶ月まで、また他の親が子供の世話を保証しないときはその後の24ヶ月間、

·           男性医師に対しては、他の親が子供のケアを保証しないときは、子の出生の日から36ヶ月の期間、

·           65歳以上の医師。

(2)   救急業務の設定と実施の詳細に関しては、医師会によって発行される指針が標準となる。救急業務参加の義務は、定められた救急業務地域に適用される。

(3)   救急業務が設置されているということは、現に診療に当っている医師から、その患者のケアのために、その病状が必要としているケアを担当するという義務を免除することにはならない。

(4)   医師は、(1)による救急業務参加から免除されない間は、救急業務のための生涯研修もしなければならない。

4) [医師の救急業務のための指針]に対する提案は、ドイツ医師会雑誌29号、1978720日、に発表された。【その翻訳は岡嶋道夫:ドイツの公的医療保険と医師職業規則、信山社、1996年に掲載されているが、その内容はより具体的に本ホームページのファイルD112に述べられている。】

目次に

 

2.職業上のコミュニケーション

§27 許可される広告と職業違反の宣伝

(1)   職業規則の下記規定の目的は、適切な情報提供によって患者の保護を保証し、医師の自己理解と矛盾して医業が営業化することを回避することにある。

(2)   そのために医師には、職業に関する客観的な情報提供が許される。

(3)   医師には職業に違反する宣伝が禁止されている。とくに推奨、迷わす、または他と比較するような宣伝は職業に違反する。医師は他人によってそのような宣伝をさせたり、他人がするのを黙認したりしてはならない。他の法律の規定による宣伝禁止は抵触しない。

(4)   医師は

1.       卒後研修規則によって取得した称号、

2.       その他の公法の規定により取得した資格、

3.       従事の重点、

4.       組織に関する指示

を公示することができる。

No.1で取得した称号は卒後研修規則で許可されている形式でのみ標榜できる。それを授与した医師会を示すことは差し支えない。

規定された卒後研修法規によって取得した資格と混同されない呈示であるならば、その他の資格や従事の重点を公示して差し支えない。

(5)   医師がその包括的業務に時々しか従事しないというのでなければ、〈2〉のNo.1から3による公示は許可される。

(6)   医師は医師会の要請により、公示の条件を審査するために必要な証拠書類を医師会に提出しなければならない。

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§28 リスト

以下の条件に適っているときは、医師はリストに登録することができる:

1. リストが、そのリストの基準を満たす総ての医師を、同じ条件と同じ状況で無料で記載して公開するものでなければならない。

2. 記入は公示可能な情報に限られなければならない、そして

3. 卒後研修規則及びその他の公法上の規定によって取得した資格と、業務の重点を分けた体系になっていなければならない。

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3.医師による職業上の共同作業

§29 同僚としての共同作業

  (1) 医師はお互に同僚として行動しなければならない。他の医師の処置方法が問題となっている鑑定書の中で、医師としての最高の知識をもって自分の信念を述べることは、医師の義務に抵触しない。処置方法、または医師の職業上の知識についての非客観的批判、並びに人物に関する軽蔑的な発言は、職業倫理に反することである。

  (2) 同僚を不正な行為で、その診療業務から、または職業業務の競争者として排除することは、職業倫理に反することである。医師が卒前または卒後教育で最低3ヵ月従事した診療所の居住圏内に、診療所所有者の同意なしに1年以内に開業することは、とくに職業倫理に反することである。不正な行為で同僚に適正な報酬をせずに、または報酬なしに従事させること、またはそのような従事に手を貸したり黙認することは、同様に職業倫理に反する。

  (3) 他の医師を医師業務のために患者のところに呼んだ医師は、本人だけが患者に対して請求書作成権のある医師であれば、呼ばれた医師に適切な報酬を保証することが義務づけられる。被雇用医師が請求書の書ける医師のために清算可能な給付を行ったときは、この給付による収益は適切な形で関与した共働者に支払われなければならない。

  (4) 患者または非医師が居るところで、医療行為に対する異議及び叱責するような教訓は止めなければならない。このことは上役及び部下としての医師、及び病院勤務の場合にも適用される。

  (5) 卒後教育を指導する資格を有する医師は、与えられた機会の枠内で、共働者【研修医】が卒後研修に努めるという義務を損うことなく、卒後研修規則によって選んだ卒後研修課程において、共働者の卒後教育指導をしなければならない。

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4.第三者と共同作業をする場合における医師の独立性の保証

§30 第三者との医師の共同作業

(1)   以下の規定は、第三者に対する医師の独立性を保障することにより患者の保護に役立たせるものである。

(2)   医師には、医師でなく、また職業的に従事している同人の共働者でない人物と一緒に検査したり治療したりすることは許されていない。これは、医師の職業または医療の補助の職業のための教育を受けている者には適用されない。

(3)   医師と医療職に所属する者の責任範囲が相互に明瞭に分かれているときには、他の医療職に所属する者との共同作業は許される。

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§31 報酬による患者斡旋は許されない

患者または検査材料を斡旋することに対して報酬または他の便宜を約束させたり、認めさせたりすること、または自ら約束したり、または認めることは、医師には許されていない。

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§32 贈物及び他の便宜の受領

それによって医師としての判断の独立性に影響が及ぶという印象を与えるときは、医師は患者または他の人から、贈物や他の便宜を自分または第三者のために要求したり、自分または第三者に約束させたり、または受領することは許されない。贈物または他の便宜の価値が僅かなときは、影響は存在しない。

目次に

§33 医師と産業界

(1)   医師が医薬品、療法、補装具または医療機器の製造者のために仕事を行なった場合(例えば、開発、治験及び鑑定)、このために定められる報酬は、行った仕事に相応するものでなければならない。
共同作業の契約は書類に作成し、医師会に提出しなければならない。

(2)   宣伝の贈物または他の便宜は、僅かな価値のものでなければ受け取ることが禁じられている。

(3)   1〉に述べた製品の購入に対して、贈物または他の便宜を自分または第三者のために要求することは、医師には許されていない。価格が僅かであれば別であるが、医師はこのようなことは自分または第三者にに約束させたり、または受取ったりしてはならない。

(4)   科学的な生涯研修プログラムに参加するために金額的に適切な額の便宜を受け取ることは職業違反とはならない。便宜が生涯研修への医師の参加費用(必要な旅費、参加費)を上回ったり、または研修目的が主体でないときは、その便宜は不適切なものとなる。(1)(2)は、製造業者によって行われる職業に関連する情報提供の企画にも準用される。

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§34 医薬品、療法及び補助具の処方、推薦及び鑑定

  (1) 医師は、医薬品、療法及び補助具または医療製品の処方に対して、報酬または他の便宜を自分または第三者のために要求したり、または自分または第三者に約束させたり、または受領することは許されていない。

  (2) 医師は、医師用サンプルを有償で他人に渡してはならない。

  (3) 医師は、医薬品、療法、補助具、体の手入れ用品、または類似の品について宣伝の講演をしたり、または宣伝のために特定の鑑定書(意見書)を作成したりすることは許されていない。

  (4) 医師は、その処方を悪用することを助けてはならない。

  (5) 医師は、十分な理由なくして、患者に特定の薬局、商店、または保健医療給付の提供者を指示することは許されていない。

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§35 生涯研修企画とスポンサー

生涯研修の企画の種類、内容及び実施が医師の企画者だけによって決定されるときには、第三者(スポンサー)の寄付を企画の費用として適切な範囲であれば受け取ることが許される。スポンサーとの関係は、公示と実施のさいに公開されなければならない。

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C.行動規定(医師の正しい職業従事の原則)


No.1 患者との対応

医師の正しい職業従事においては、医師が患者と対応するときに、以下のことが要求される、

-        患者の人格と自己決定の権利を尊重する、

-        患者のプライバシー領域を尊重する、

-        実施しようとする診断と治療について、場合によってはその代替について、及び患者の健康状態の判断を、患者に理解できる適切な方法で伝えること、そしてまた勧めた検査や治療方法を拒否する権利についても尊重する、

-        患者の境遇に気をくばる、

-        考え方が違っていても、客観性と正しさを保持する、

-        患者の伝えることを適切な注意をもって聞き、患者の批判には客観的に対応する。

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No.2 診療の原則

診療を引受けて実施するときは、医術の規定にしたがった適切な医学的方法で良心的に遂行することが要求される。これに該当することは、

-        自分の能力が診断及び治療の任務を解決するに至らないときは、適切な時期に他の医師に紹介する、

-        治療を進めるために、適切な時期に患者を他の医師に転送する、

-        セカンド・オピニオンを求める患者の要望に逆らわない、

-        共同または引き継いで治療にあたる医師に、患者についての必要な報告を適切な時期に伝える。

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No.3 医師でない共働者との対応

医師の正しい職業従事では、医師が医師業務を実施するのに次のことが要求される

-        医師でない共働者を差別扱いせず、特に労働法の規定を守る。

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D.医師の個々の職業義務に対する補充規定


I.職業上のコミュニケーションに対する規定、とくに職業業務に関する客観的情報の許容された内容と範囲

No.1−No.6  削除

 

II.共同作業(共同体診療所、パートナーシップ、医学的協力共同体、診療所連帯)

【共同作業:末尾の訳者注1参照】

 

No.7 職業権利の保留

この職業規則の規定がパートナーシップ共同体法(自由業所属者のパートナーシップ共同体に関する法律[PartGG]1994725日−BGBl. IS. 1744)に制限を設けていれば、PartGGの§1(3)に基づき、この医師職業規則の方が優先する。

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No.8 医師の職業従事共同体

  (1) 職業従事共同体に対して、医師は自己責任と自立並びに非営業的職業従事を保証する団体の型だけを選択できる。そのような団体の型は、共同体診療所に対する民法の団体(§705ff.BGB)及び医師パートナーシップに対するパートナーシップ団体である。その職業に従事する医師たちだけが提携できる。医師は一つの職業従事共同体だけに所属できる;病院または同等の施設との協力だけは例外である。

  (2)  1職業従事共同体は、一つの共同の診療所の場所だけで許可される。 2独特な専門科内容であるために患者とは直接に結びつかない形で、医師として継続的に従事する医師は、職業従事共同体に対して、共同体の各パートナーがかれらの医師業務を行っている中核的な診療所の場所で、業務を行うという形で提携することができる。1項が適用される医師または医師たちと提携するときには、2項の条件を満たす医師は、自己のオフィス【開業場所、診療所場所、業務場所】を持つことも許可される。

  (3) 共同職業従事の全ての型において、医師の自由選択は保証されなければならない。

  (4) 職業従事共同体への提携及び組織共同体への提携は、関与する医師がその医師会に届け出なければならない。関与する医師たちに対して、複数の医師会が管轄する場合には、各医師は各自の管轄医師会に、提携に関与する全ての医師を知らせることが義務づけられている。

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No.9 医師及び他の専門職所属者との間の協力職業従事

  (1)  1医師は、自立して従事し、また自己責任で職業に従事する資格を得ている職業の所属者と、(2)によって協力職業従事のために提携することができる(医学的協力共同体)。 2協力は、PartGGによるパートナーシップ団体の形、または民法の団体の法形式における協力共同体の形成に関する書類契約によるときにだけ許可される。 3医師に対しては、他のそれぞれの職業所属者との提携であって、しかも後者が医師と結びつき、治療行為のさいに同方向を指向し、または統合された診断または治療の目的を、治療と予防やリハビリの領域においても、場所的に近く、関与する総ての職業所属者の調整がなされている共同作業によって満たすことができるという状況のときにだけ、個別に許可される。さらに、協力契約は以下のことを保証しなければならない、

a)     医師の自己責任と自立した職業従事が保証されること;

b)     患者に対するパートナーの責任範囲が分離していること;

c)     医師がその職業法によって、共同体の中で自立して従事する他の専門職所属者にそのような決定を任せてはならないときは、医学的決定、特に診断と治療に関しては医師の独占的事項であること;

d)     医師を自由に選択できる原則が保証されていること;

e)     治療に当る医師は、その診断方法の支えのため、または治療のために、共同体で協力する職業従事者として、他の者を参加させることができること;

f)     医師の職業法的規定の遵守、とくに支所診療所の原則的禁止、記録作成のための義務、宣伝の禁止、及び報酬請求書作成に対する規定が、他のパートナーたちによって遵守されること;

g)     医学的協力共同体は、Rechtsverkehr【意味不明】においてパートナー全員の名前と職業称号を届け出ること、そして登録されたパートナーシップ団体であるときは「パートナーシップ」と付け加えて標榜するという義務を負うこと。

  (2) 医師は、(1) 3項の規則を考慮して、保健医療の以下の職業に所属する者1名または若干名とだけ、医学的協力共同体を提携することができる:

a)     歯科医師

b)     心理精神療法士及び小児及び思春期精神療法士、ディプロームを有する心理士

c)     臨床化学者、栄養科学者及び他の自然科学者

d)     ディプロームを有する社会教育士、ディプロームを有する治療教育士

e)     助産婦

f)     言語治療士及び言語療法と同等の職にある者

g)     作業療法士

h)     理学療法の職種(複数)に所属する者

i)     医療技術助手

j)     国家認定の介護職(複数)に所属する者

k)     食事療法助手

医師が協力することが認められた職業上の協力構成は、(1) 3項の規則により個別に調整される;医師と一緒に、その専門領域に相応して共同体で行うことのできる医療目的を、その職業能力の種類によって目的に関連づけることができるような前掲職種の所属者が協力するのであれば、上記の事項は満たされることになる。

  (3) 医学的協力共同体に勤務する医師は、医師であるパートナーの指示権限にだけ従って差支えない。

  (4) 医師は医学的協力共同体の一つにだけ加わることができる。

  (5) 医学的協力共同体における医師の協力は、医師会の承認が必要である。医師会には協力またはパートナーシップ契約を提示しなければならない。医師に対する上述の条件が満たされれば、承認を与えることができる。請求があれば医師は追加の回答を提出しなければならない。

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No.10 その他のパートナーシップへの医師の関与

医師は、本人がパートナーシップにおいて人に対して医療行為をしないのであれば、PartGG §1 (1)及び(2)によるパートナーシップにおいて、前掲のD章 No.9 に示された他の職業の所属者とともに一緒に働くことが許される。そのようなパートナーシップへの加入は医師会に届け出なければならない。

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No.11 診療所連帯

(1)   医師は、職業従事共同体を結成しなくても、共同または共通の方法で取り決めた給付任務を満たすために、または患者への給付に対する別の形の共同作業のために、例えば質の保障や給付の準備の領域において、設けられた協力を約束して差し支えない(診療所連帯)。参加はその準備をしている総ての医師に可能でなければならない;参加の機会は、例えばスペースまたは質的な基準によって制限されなけばならないし、給付任務に対してはそのために重要な基準が必要であり、差別扱いされるようなものであってはならない、また医師会に対して公開されていなければならない。承認された診療所連帯に入っている医師は、医学的に必要であったり、または患者が希望したりしたときには、診療所連帯に所属していない医師への転医を妨げてはならない。

(2)   (1)による協力は書面による契約がなされ、医師会に提出されなければならない。

(3)   DII No.9(1)の原則が保障されているときは、(1)による協力には病院、予防及びリハビリ施設及びDII No.9(2)による他の保健医療職の従事者も加わることができる。

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III.国境を越えた医療従事の場合の義務

 

No.12 他のEU加盟国におけるドイツ医師の診療

医師がその開業の傍ら、またはこの職業規則の適用地域内での医師職業従事の傍らに、欧州連合(EU)の加盟国において、診療業務を行うか、あるいは他の医師の職業業務に従事するときは、このことを医師会に届け出なければならない。医師は、他の加盟国で従事する間は、この職業規則の適用地域で自分の患者に規則通りのケアが施されるために、安全処置を講じなければならない。医師会は、該当するEU加盟国の法律による診療所開設の許可を、医師が証明することを要求することができる。

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No.13 他のEU加盟国からの医師の国境を越えた医療従事

EUの他の加盟国において開業した、またはそこで職業業務に従事した医師が、開業ということではなくて、この職業規則の適用地域で一時的に医師として従事するときは、この職業規則の規定を守らなければならない。医師がこの職業規則の適用地域において、その業務についてのを知らせをするだけに限るとしても、上記のことは適用される;このような業務内容の案内においては、この職業規則によって許されている枠内の事項だけが認められる。

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IV.特別な医学的状況における義務

 

No.14 ヒト胚の保護

研究目的のためのヒト胚の作成、並びに胚への遺伝子移入及びヒト胚と全能細胞での実験は禁止されている。女性臓器への移入前の胚への診断的処置は禁止されている;胎児保護法§3の意味での重症な伴性遺伝性疾患を除外する処置が問題となるときは除外される。

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No.15 人工受精、胚移入

  (1) 母体外での卵細胞の人工受精及びそれに引き続いて子宮へ胚を移入すること、または遺伝的な母の卵管への配偶子または胚の移入は、不妊の治療方法としての医療行為であり、§13 による場合にのみ許される。他人の卵細胞を用いること(卵細胞の提供)は禁止されている。

(2) 医師は、人工受精または胚移入を手伝うことを義務づけるらることはない。

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訳者解説

1997年の改定では、全体のスタイルと条文の配列が著しく変更された。今回の版で目立つ点は以下の通りである。

§5 質の保証に対する医師の義務

§9 守秘義務の条文の多少の変更

§10(2) 診療記録の開示を義務づける

§16 「死にゆく人に対する付添い」の態度を示す

§22 共同の職業従事について全面的な追加、その詳細は

D章 II 共同作業(共同体診療所、パートナーシップ、医学的協力共同体、診療所連帯)

今回の改定で詳細に記述されるようになったことは、他の医師、他の医療職従事者と共同で従事する場合の規定と心得である。この共同職業従事は規定が複雑にみえるが、§22が示すように次の4つのカテゴリーに分類される。

-        職業従事共同体=一つの診療所で複数の医師がお互いにパートナーとして従事する。

-        組織共同体=診療所や機器という物質的な物、あるいは補助者だけを共有するという形。

-        医学的協力共同体=医師以外の職種の人とパートナーシップの関係を持つて協力する。

-        診療所連帯=それぞれ独立した診療所の間での連帯。

また、医師職業規則の変遷を知ることは、このような規則を持たない私たちにとって意義あることと考えられるので、すでに掲載してある1993年版(D101)のほかに、1970年版(D118)も今回掲載することにした。

 


 「ドイツ医師のための職業規則」は、医師の守るべき義務及び倫理を示したものである。

 ここに示したものは1997年の改訂版であるが、時代の要請に応ずるため頻繁に改訂が行われ、1995年にも多数の規定が加えられた。1993年版の翻訳は、下記の訳者注2に示した書物、及び下記の私のホームページにおいて資料D101として掲載されている。

 この規則の改訂は、定例的に5月に開催されるドイツ医師会議(ドイツ連邦医師会の代議員会)において議決され、その内容はドイツ医師会雑誌Deutsches   Ärzteblattに掲載される。この会議で議決された職業規則は「原型Muster」と称せられる。この原型の職業規則は、その後各州の医師会において議決され、その州の監督官庁が承認することによって法的効力を持つことになる。現実として、総ての州において、この職業規則がほぼ原形のまま採用されている。

 ドイツの州医師会は医師の自治組織であるが、州政府から医師の監督権を委譲されている。州の医療職法は州医師会の組織、任務などを規定しているが、それに従って州医師会は医師職業規則をはじめ卒後研修規則、救急業務規則など、各種の規則を州政府の承認の下に作成して実行し、各種の医療行政関連の法規で定められた諸事項を実施する。つまり自治組織でありながら自主管理の形で行政行為も行うという特殊な任務を果たしている。そして州政府は、それが適切に行われているかどうかを監視する立場にある。

州医師会の業務は会員医師の会費と各種手数料収入によって運営され、州政府からは財政的な援助を受けない。会費の額は医師としての収入に対応し、その率は法律によって定められる。医師としての業務に従事する者は総てその会員になる義務がある。しかし、監督官庁に所属する医師には加入の義務はない。

 連邦医師会は、各州からの医師代議員(医師数に比例)によって構成されているが、州医師会と異なり私的な組織であって、ドイツ医師会議を開催して議決を行う。その理事会によって、この医師職業規則や卒後研修規則をはじめとする各種の規則、指針、勧告などが企画立案される。連邦医師会の経費は州医師会からの拠出による。

 一方、連邦医師法、医師免許規則(医学の卒前教育と医師国家試験を規定)などは連邦厚生省の管轄となっている。

 ここに示した「ドイツ医師のための職業規則」は1956年に制定され、その後頻繁に改定が行われてきたが、1997年の改定では内容と体裁が大幅に改められた。

医師会や監督官庁と医師との間、医師相互間、医師と患者との間で、医師の職業義務違反や倫理違反などが生じた場合に、医師会における懲戒、医師の職業裁判所での審理、あるいは通常の裁判所における裁判において、この職業規則が判断基準となるので、強い拘束力を有している。

ドイツには医師の職業裁判所という制度があり、その手続等を規定した法律は各州ごとに制定されているが、その基本は共通していて、裁判所は職業裁判官と医師から選出された名誉職裁判官とで構成される。そのような法律として、本ホームページ「D107医療職法」にノルトライン−ヴェストファーレン州のものを掲載した。

医師職業裁判所は医師の義務違反、倫理違反を審査し、医師に違反が認められれば戒告、罰金、医師免許の停止や剥奪、あるいはそれらの併科が処罰として決定する。その判決集も出版されているが、判決の数ケースをこのホームページにM408として紹介しておいた。

http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic/m408.htm

医師職業規則をはじめとして、ドイツ連邦医師会が作成する各種の規則、指針、勧告、また医師大会議事録などは、連邦医師会が刊行するドイツ医師会雑誌に必ず掲載される。この雑誌は一般臨床医向、勤務医向などに分かれていて ABC の3種類の版があり、同時に発行されるが、頁数が異なる。これは主として広告頁に原因するが、主要記事は同じ号(日付)に掲載されている。国内の図書館は異なった判を購入しているので、検索にさいしては注意を要する。1996年以降の主要記事はインターネットで読むことができる。

http://www.aerzteblatt.de/

なお、各州はそれぞれの州医師会雑誌を発行しているが、それには生涯研修プログラムなど、より現場の医療に密着した情報が掲載されている。

 この医師職業規則の1976年版の翻訳は下記の論文に掲載されている。 

宇都木伸:西ドイツ医師職業裁判所.東海法学 第1号 127-195,1987

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訳者注1: 自由業と共同作業について。

医師職業規則の1995年の改訂において、従来の医師業務の共同作業を、1994725日に公布された「自由業従事者のパートナーシップ共同体に関する法律 PartnerschaftsgesellschaftsgesetzPartGG]」の規定に適合するように改訂した。この規則での共同体は商業行為をしないもので、パートナーシップに所属できるのは私人だけと規定している。

この規則での自由業の種類は下記の自立した職種となっている:医師、歯科医師、獣医師、療法士、医療体操士、助産婦、治療マッサージ士、心理学有資格者、弁護士会会員、弁理士、公認会計士、税理士、国民経済及び企業経済の顧問専門家、宣誓した会計士、税務代理人、技師、建築家、商業化学者、水先案内人、専業鑑定人、ジャーナリスト、写真報道家、通訳者、翻訳者及び類似の職、並びに科学者、芸術家、文筆家、教師及び家庭教師。なお、これらの自由業職種と商店や手工業などの自立営業者との区分は、必ずしも統一されたものではなく、他の国にはないドイツに特有な分類である。】 

訳者注2: 「岡嶋道夫:ドイツの公的医療保険と医師職業規則、信山社、1996年」】

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訳者  岡嶋道夫

e-mail: okajimamic@hi-ho.ne.jp

http://www.hi-ho.ne.jp/okajimamic