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(ドイツ卒後研修規則)

D136

卒 後 研 修 規 則(範 型)

20055月現在

 

連邦医師会

(ドイツ(州)医師会作業共同体)

 

(Muster-)Weiterbildungsordnung

Stand Mai 2005

 

Bundesärztekammer

(Arbeitsgemeinschaft der Deutschen Ärztekammern)

 

                                                          訳者解説

 

ドイツでは卒後研修規則が2003年に大改定されました。

専門医制度の骨格となる条文、専門医などの専門領域の新しい分類、専門医認定の厳格な手続など、示唆に富む内容が多いので本ホームページで紹介することにしました。

卒後研修は下記の6項目からなる卒後研修規則卒後研修内容に関する指針によって実施されます。

卒後研修規則

·       短い解説

·       Part A: 条文

·       定義の解説

·       Part B及びPart Cに対する一般規定

·       Part B: 専門領域、専門医及び重点の資格

·       Part C: 付加卒後研修

卒後研修内容に関する指針

ここではその中から

·       短い解説

·       Part A: 条文

·       定義の解説

·       Part B及びPart Cに対する一般規定

4項目だけを全訳しました。

Part BPart Cは膨大な内容なので、後日その一部を例示する形式で紹介できればと思っています

 

D124で紹介した従来の卒後研修規則は、専門分野の分類が大変複雑で理解し難いものになっていましたが、今回の大胆な改訂で単純明快なものになりました。

また従来から、研修医と指導医が研修過程において研修内容を確認し、指導医がその都度評価を書き入れることになっていますが、今回の改定で卒後研修内容に関する指針が新たに設けられ、チェック項目を列記した様式が示されています。ドイツでの指針Richtlinienは、それに注意を払わないと制裁の対象になりうるという厳格な性格を有しています。

一方、卒後研修の方法と指導、研修機関や指導医の認可、評価、試験などの基本は従来どおりといえます。

 

ドイツでは、州医師会の作業共同体である連邦医師会が卒後研修規則の範型を作り、各州医師会はそれを議決し、州政府の承認を得て実施しています。州は医療職法によって州医師会に卒後研修の規則を作って実施する、つまり州医師会が卒後研修について行政行為を行うことを義務付けています。

 

州医師会はその設立も医療職法によって義務付けられていますが、医師の自治組織として医師自身が理想と考える制度を卒後研修規則に表現し実現しています。州医師会だけで自発的に規則を作っているのではなく、法律的な根拠に基づいて行われているので、卒後研修を厳格に実施することが可能なのだと考えられます。わが国で厳格な規制や制裁を必要とする制度を考える場合、ドイツの医師会の制度は参考になるかもしれません。

 

専門医の試験などの実務は州医師会の任務ですが、関連する興味ある報告も出ているので、後日紹介したいと思います。

   2006110

訳者 岡嶋道夫

 

 

目 次


短い解説

Part A: 条文 AbschnittPart

定義の解説

Part B及びPart C【下記】に対する一般規定

【以下のPart Bpart Cに目次として示されている各専門領域については、項目ごとに定義、研修目的、研修期間及び内容が記述されているが、ここでの紹介は省略する。】

Part B: 専門科、専門医と重点の資格

【専門科:Gebiet; 専門医:FacharztFA); 重点:Schwerpunkt(SP)


1.        専門科 麻酔科 Gebiet Anaesthesiologie

2.        専門科 解剖学 Gebiet Anatomie

3.        専門科 労働医学 Gebiet Arbeitsmedizin

4.        専門科 眼科 Gebiet Augenheilkunde

5.        専門科 生化学 Gebiet Biochemie

6.        専門科 外科 Gebiet Chirurgie

6.1 専門医 一般外科 FA Allgemeine Chirurugie

6.2 専門医 血管外科 FA Gefäßchirurgie

6.3 専門医 心臓外科 FA Herzchirurgie

6.4 専門医 小児外科 FA Kinderchirurgie

6.5 専門医 整形外科及び災害外科 FA Orthopädie und Unfallchirurgie

6.6 専門医 形成外科及びエステ外科 FA Plastische und Ästhetische Chirurgie

6.7 専門医 胸部外科 FA Thoraxchirurgie

6.8 専門医 内臓外科 FA Visceralchirurgie

7. 専門科 婦人科及び産科 Gebiet Frauenheilkunde und Geburtshilfe

重点 婦人科的内分泌及び生殖医学 SP Gynäkologische Endokrinologie und Reproduktionsmedizin

重点 婦人科的腫瘍学 SP Gynäkologische Onkologie

重点 特殊産科及び周産期医学 SP Spezielle Geburtshilfe und Perinatalmedizin

8. 専門科 耳鼻咽喉科 Gebiet Hals-Nasen-Ohrenheilkunde

8.1 専門医 耳鼻咽喉科 FA Hals-Nasen-Ohrenheilkunde

8.2 専門医 Speach disorder, paraphonia及び小児聴覚障害 FA Sprach-, Stimm- und kindliche Hörstörungen

9. 専門科 皮膚及び性病科 Gebiet Haut- und Geschlechtskrankheiten

10. 専門科 人類遺伝学 Gebiet Humangenetik

11. 専門科 衛生学及び環境医学 Gebiet Hygiene und Umweltmedizin

12. 内科及び一般医学領域 Gebiet Innere Medizin und Allgemeinmedizin

12.1 専門 内科及び一般医学 FA Innere Medizin und Allgemeinmedizin(Hausarzt)

12.2 専門 内科 FA Innere Medizin

12.3.1 専門 内科及び重点 血管学 FA Innere Medizin und SP Angiologie

12.3.2 専門 内科及び重点 内分及び糖尿学 FA Innere Medizin und SP Endokrinologie und Diabetologie 

12.3.3 専門 内科及び重点 消化学 FA Innere Medizin und SP Gastroenterologie 

12.3.4 専門 内科及び重点 血液及び腫瘍 FA Innere Medizin und SP Hämatologie und Onkologie

12.3.5 専門 内科及び重点 心臓 FA Innere Medizin und SP Kardiologie 

12.3.6 専門 内科及び重点 腎臓学 FA Innere Medizin und SP Nephrologie 

12.3.7 専門 内科及び重点 呼吸 FA Innere Medizin und SP Pneumologie

12.3.8 専門 内科及び重点 リュウマチ学 FA Innere Medizin und SP Rheumatologie

13. 専門科 小児及び若年者医学 Gebiet Kinder- und Jugendmedizin

重点 小児血液学及び腫瘍学 SP Kinder-Hämatologie und -Onkologie

重点 小児心臓病学 SP Kinder-Kardiologie

重点 新生児学 SP Neonatologie

重点 神経小児学 SP Neuropädiatrie

14. 専門科 小児及び若年者精神医学及び精神療法 Gebiet Kinder- und Jugendpsychiatrie und -psychotherapie

15. 専門科 臨床検査医学 Gebiet Laboratoriumsmedizin

16. 専門科 微生物学、ウイルス学及び感染疫学 Gebiet Mikrobiologie, Virologie und Infektionsepidemiologie

17. 専門科 口腔-顎-顔面外科学 Gebiet Mund-Kiefer-Gesichtschirurgie

18. 専門科 神経外科学 Gebiet Neurochirurgie

19. 専門科 神経学 Gebiet Neurologie

20. 専門科 核医学 Gebiet Nuklearmedizin

21. 専門科 公衆衛生学 Gebiet Öffentliches Gesundheitswesen

22. 専門科 病理学 Gebiet Pathologie

22.1 専門医 神経病理学 FA Neuropathologie

22.2 専門医 病理学 FA Pathologie

23. 専門科 薬理学 Gebiet Pharmakologie

23.1 専門医 臨床薬理学 FA Klinische Pharmakologie

23.2 専門医 薬理学及び中毒学 FA Pharmakologie und Toxikologi

24. 専門科 理学及びリハビリ医学 Gebiet Physikalische und Rehabilitative Medizin

25. 専門科 生理学 Gebiet Physiologie

26. 専門科 精神医学及び精神療法 Gebiet Psychiatrie und Psychotherapie

重点 司法精神医学 SP Forensische Psychiatrie

27. 専門科 心身医学及び精神療法 Gebiet Psychosomatische Medizin und Psychotherapie

28. 専門科 放射線学 Gebiet Radiologie

重点 小児放射線学 SP Kinderradiologie

重点 神経放射線学 SP Neuroradiologie

29. 専門科 法医学 Gebiet Rechtsmedizin

30. 専門科 放射線治療学 Gebiet Strahlentherapie

31. 専門科 輸血医学 Gebiet Transfusionsmedizin

32. 専門科 泌尿器学 Gebiet Urologie


 


Part C: 付加卒後研修

医師の質マネージメント Ärztliches Qualitätsmanagement

鍼 Akupunktur

アレルギー 学 Allergologie

男性学 Andrologie

産業医学 Betriebsmedizin

皮膚組織学 Dermatohistologie

糖尿病学 Diabetologie

航空医学 Flugmedizin

老年医学 Geriatrie

婦人科的剥離細胞学 Gynäkologische Exfoliativ-Zytologie

止血学 Hämostaseologie

手の外科 Handchirurgie

ホメオパチー Homöopathie

感染学 Infektiologie

集中医療 Intensivmedizin

小児内分泌学及び糖尿病学 Kinder-Endokrinologie und -Diabetologie

小児胃腸病学 Kinder-Gastroenterologie

小児腎臓学 Kinder-Nephrologie

小児整形外科学 Kinder-Orthopädie

小児呼吸器学 Kinder-Pneumologie

小児リハビリ学 Kinder-Rheumatologie

臨床検査診断学-専門科と結合した Labordiagnostik - fachgebunden

磁気共鳴断層撮影 Magnetresonanztomographie - fachgebunden

カイロプラクティック Manuelle Medizin / Chirotherapie

薬物による腫瘍治療 Medikamentöse Tumortherapie

医学情報学 Medizinische Informatik

自然療法 Naturheilverfahren

救急医学 Notfallmedizin

整形外科的リュウマチ学 Orthopädische Rheumatologie

緩和医療 Palliativmedizin

静脈学 Phlebologie

理学療法と浴療法 Physikalische Therapie und Balneologie

形成手術 Plastische Operationen

直腸肛門病学 Proktologie

精神分析 Psychoanalyse

精神療法-専門科と結合した Psychotherapie - fachgebunden

リハビリテーション Rehabilitationswesen

レントゲン診断学-専門科と結合した Röntgendiagnostik - fachgebunden

睡眠医学 Schlafmedizin

社会医学 Sozialmedizin

専門的整形外科手術 Spezielle Orthopädische Chirurgie

専門的疼痛治療 Spezielle Schmerztherapie

専門的災害外科 Spezielle Unfallchirurgie

スポーツ医学 Sportmedizin

依存症の医学的基礎ケア Suchtmedizinische Grundversorgung

熱帯医学 Tropenmedizin


―目次おわり―


以下本文

 

【短い解説】


 


医師の卒後研修は、医師の卒前教育を完了して医師の業務を行う許可を得た後に、医師としての能力と技術を習得することである。卒後研修の特色は、医師の知識を外来、病棟及びリハビリにおける患者のケアに実際に適用することにある。

 

卒後研修は、専門科で専門医としての資格を、そしてその上に築かれる重点または付加卒後研修という専門性を獲得する構造になっている。規定されている卒後研修と卒後研修期間は最低の条件である。卒後研修期間は、卒後研修内容が最低期間内に学習できないときは個人ごとに延長される。

 

卒後研修は、認可された卒後研修機関で、医師業務を本職として、適切な給料を支払われる状況で行われる。卒後研修は、資格を与えられた医師指導医】*の指導の下に実務業務及び理論的教育、ならびに認可を得ているクルズスに時々参加して成果を得ることによって行われる。

*本規則では卒後研修を指導する資格を与えられた医師を「befügte Ärzte資格を有する医師」と表現している。ドイツの卒後研修は資格を認めらた医師でなければ指導できない。】

 

記録される卒後研修の終了は、卒後研修指導医によって作成される証明書と試験によって判断される。卒後研修が成果を収めて完了したことは認定証書によって承認される。

 

卒後研修称号は獲得した資格の証明である。これは患者のケア及び住民指導の質保証に役立つ。

 

以下のテキストで用いられる男性名詞の医師Arztという語は、男医と女医の両方を指すものである。

 


 

 

Part A  条文

 


§1

目的

 

卒後研修の目的は、職業教育を完了して特別な医師の資格を獲得するために、規定された知識、経験及び技能を規定通りに修得することである。卒後研修は医師の職業実施の質を保証するものである。

 

§2

構造

 

(1)卒後研修の完了により以下のものが得られる

-        専門科における専門医称号

-        専門科の重点領域における重点称号、または

-        付加称号

 

(2)専門科というのは、医学の一専門領域の定義づけられた部分である。専門科の定義は、専門医の行う業務の境界を定めている。専門科の中で規定されている卒後研修の内容と期間を修了し、必要とされる専門医の資格を試験によって証明した者は、専門医称号を取得する。専門医資格の中で規定されている卒後研修内容は、専門領域での専門医業務の実施を制限するものではない。

 

(3)重点は、専門医卒後研修の上に組み立てられた専門化として、その専門科の中に記載される。

重点として規定された卒後研修内容と期間を修了し、必要とされる専門的な資格を試験によって証明した者は、重点称号を取得する。重点資格の中で規定されている卒後研修内容は、専門領域での専門医業務の実施を制限するものではない。

 

(4)付加卒後研修は、Part Cに別途の規定がない限り、専門医及び重点の卒後研修内容に付加して行われる専門化した卒後研修内容である。

付加卒後研修で規定された卒後研修内容と期間を修了し、必要とされる専門的な資格を試験によって証明した者は、付加称号を取得する。

Part Cに別途の規定がない限り、卒後研修期間が必要とされる場合には、称号を取得するために、これを規定条件に追加して実施しなければならない。専門医業務の専門領域境界は、付加卒後研修によって拡大することはない。

 

(5)規定された卒後研修内容と期間を満たした後、§§1216による試験の合格が証明されると、卒後研修は成果を挙げて完了したことになり、専門的な資格が認められる。

 

(6)専門科、専門医及び重点の称号はPart Bに、付加称号はPart Cに示されている。

 

§3

称号の標榜

 

(1)専門医、重点及び付加の称号は、職業規則の規定を顧慮し本卒後研修規則によって標榜することができる。

 

(2)重点称号は該当する専門医称号と併記して標榜することができる。

 

(3)付加称号は、「医師」、「Praktischer Arzt=専門医称号を持たない開業医(家庭医)の称号」、または「専門医称号」と併記して標榜することができる。

特定の専門科に割り当てられた付加称号は、割り当てられた専門医称号と併記して標榜することができる

 

(4)一人の医師が複数の認められた称号を所有するときは、それらを併記することができる。*1

*1州の医療職法またはカンマー法で併記できる称号の制限が求められているときは、州の卒後研修規則でこのことを補足しなければならない。

 

(5)ドイツの他の州医師会で授与された〈1〉による称号と証明は、本卒後研修規則の適用される地域において、その州が承認する形式で標榜することができる。

 

§4

種類、内容及び期間

 

(1)連邦医師法による医師免許の交付、または医師の業務をする許可の交付【これは外国の医師免許資格を有する者に交付される】を得たあとでなければ卒後研修は開始できない。口腔・顎・顔面外科の専門医卒後研修の完了は、歯科医師国家試験も条件となる。卒後研修は、適正な給与を支給された医師としての職業従事の枠内で、卒後研修を行う資格のある医師【指導医】の指導または認可された卒後研修クルズスの教育によって行われる。

 

(2)実地研修医師(Arzt im Praktikum)【これは卒後の18カ月の臨床初期研修を行う医師のことであるが、200410月にこの制度は廃止された】として行い、この卒後研修規則の条件を満たしている従事部分は、卒後研修として算入できる。

 

(3)卒後研修は基本的であり包括的でなければならない。卒後研修は特に疾病、身体障害及び苦痛についての予防、識別、治療、リハビリ及び鑑定【鑑定及び意見の両方が含まれる】における知識、経験及び技能を深めることがその内容となるが、人と環境の相互関係も含まれる。

 

(4)卒後研修の期間と内容は卒後研修規則の規定に従う。規定された卒後研修期間と内容は最低の期間であり、また最低の内容である。6ヵ月以下の卒後研修または従事期間は、Part B及びCにそのことについての規定があるときだけ卒後研修として算入できる。卒後研修の中断、特に妊娠、親の期間、防衛及び代替勤務-卒後研修が行われない間-、科学的任務または病気のときは、卒後研修期間として算入することができない。給与の支払われる保養休暇は中断とはならない。

 

(5)専門医と重点のための卒後研修は、原則として全日制で、本勤務の立場で行われなければならない。これは、Part Cで別の規定がなければ、付加-卒後研修にも適用される。

 

(6)パートタイムの卒後研修は、正規の就労時間の少なくとも半分に達していれば認められる;卒後研修期間はそれに相当して延長される。

 

(7)重点の卒後研修は、Part Bに別の規定がなければ、専門医資格の上に組み立てられる。付加-卒後研修は、卒後研修規則に別の規定がなければ、期間的及び内容的に専門医卒後研修に付加される形で行われる。診療所における医師としての業務は、Part Cに別の規定がなければ、卒後研修に算入することができない。

(8)卒後研修規則がクルズスの学習を規定しているときは、事前にそれぞれのクルズスとその指導者が、企画実施場所を管轄する医師会によって認可されていることが必要である。これらのクルズスは医師会が規定した条件に適合しなければならない。

 

§5

資格

 

(1)専門医と重点における卒後研修は、医師会によって資格を与えられた医師の責任ある指導の下に、認可された卒後研修機関で実施される。この資格の条件は、Part Cに別途の規定がない限り、付加資格の卒後研修に対しても適用される。

 

(2)卒後研修の資格は、医師がその称号を所有し、専門的にも個人的にも相応しく、該当する卒後研修を終了したあと何年も従事していることが証明されなければならない。資格は期限付きで、撤回されるという条件もありうる。その他の付帯条件をつけることが許される。資格は、専門医研修及び/または所属する重点の研修及び/または原則として付加卒後研修に対して与えられる。

 

(3)資格を与えられた医師は、卒後研修を個人的に指導し、また時間的及び内容的にこの卒後研修規則に適合するように組み立て、そして卒後研修を受けている医師の卒後研修記録が正しいことを§8によって証明することが義務付けられている。これは、一カ所または数ヵ所の卒後研修機関の数名の医師に、資格が共有で与えられている場合にも適用される。

 

(4)資格の範囲に対しては、卒後研修の内容、経過及び目標に設定された条件が、診療任務、給付統計ならびに卒後研修機関の人的及び物的装備を考慮し、資格を有する医師によってどのようにして満たされるかが基準となる。要求に応じて医師会は情報を提供する。資格を有する医師は、卒後研修機関の構成や大きさに変化があった場合には、遅滞なく医師会に届け出なければならない。資格の範囲はその変化に適合しなければならない。

 

(5)資格は申請により医師会から与えられる。申請には、資格を申請しようとする専門医、重点または付加卒後研修における卒後研修を構成要素に区分したプログラムを添付しなければならない。卒後研修の資格を得た医師は、この区分したプログラムを自分の責任において研修医に手渡さなければならない。医師会は、資格を付与された医師及び卒後研修機関のリストを資格の範囲を示して作成する。

 

§6

卒後研修機関の認可

 

(1)認可される卒後研修機関は、大学の病院ならびに(医師会によって)*2 承認された医師の診療施設である。医師の診療施設には開業医の診療所も含まれる。

*2  括弧内は、州の医療職法がそのような規定をしている医師会領域にのみ適用される。

 

(2)卒後研修機関は特に以下の条件を満たしていなければならない:

-        卒後研修に典型的な疾患が、患者の数と種類において規則的かつ頻度的に十分に存在しなければならない、

-        施設の人員及び装備が医学の進歩を考慮したものでなければならない、

-        病院の部局は規則的にコンサルテーション【対診】を行っていなければならない。

 

§7

資格と卒後研修機関の認可の取消

 

(1)卒後研修の資格は、以下のように条件が満たされなくなった場合には、全部または一部が取り消される

-        卒後研修指導者としての医師の専門的または個人的な適正が失われた状態のとき、

-        卒後研修規則で卒後研修内容に定められた条件が満たされないかもしれないという状況になったという事実が存在するとき。

 

(2)資格を有する医師が卒後研修機関での業務を終えたとき、卒後研修機関の解消または卒後研修機関としての認可の取消があったときは卒後研修を指導する資格は消滅する。

 

(3)卒後研修機関としての認可は、§62)による条件が存在しなくなったときには全部または部分的に取り消すことができる。

 

§8

卒後研修の記録

 

(1)卒後研修を受けている医師は、規定された卒後研修内容の達成を記録しなければならない。

 

(2)卒後研修資格を有する医師は、卒後研修期間が終了したあと、最低年に1回、その卒後研修に加わった同僚【研修医】と一緒に、卒後研修の状況がどのようであったかを両者で評価する会話を行う。不足があれば指摘される。この会話の内容は記録され、受験の申請に添付されなければならない。

 

§9

証明書の交付

 

(1)資格を有する医師は研修中の医師に、その責任の下で行われた卒後研修期間に習得した知識、経験及び技能について述べ、専門的素質の問題について詳細な見解を示した証明書を交付しなければならない。証明書には、卒後研修においてパートタイムで従事した期間および中断についても記載されなければならない。この義務は資格【指導医としての】が終わった後も継続して適用される。

 

(2)卒後研修を受けている医師の申請または医師会の要求により、原則として3ヶ月以内、そして辞めるときに遅滞なく(1)の条件を満たす証明書は交付されなければならない。

 

§10

同等の卒後研修の承認

 

この卒後研修規則を変更した卒後研修、または指導の下での医療従事は、同等である場合には全部または部分的に認定される。この卒後研修規則の原則が規定の医師能力の習得に対して内容と期間からみて遵守されているときには同等とみなされる。

 

§11

承認の手続

 

称号の承認は、規定された最低条件を満たし、医師会の試験に合格し§22)から(4)による専門的資格を証明することにより申請によって与えられる。

 

§12

受験の許可

 

(1)受験の許可は医師会が決定する。期間的及び内容的条件を満たしていることが§82)による記録を含めた証明書類によって裏付けられていれば許可は与えられる。

 

(2)(1)による条件が満たされていない、または正しくないと思われたときは、根拠を書面に示して許可は拒絶または取り消される。

 

(3)重点における受験許可は、専門医認定がなされた後に行われる。専門医認定が規定されている付加卒後研修に対してもこれは適用される。

 

§13

試験委員会及び異議申立委員会

 

(1)医師会は試験実施のために試験委員会を設ける。試験は他の州医師会との共同作業によって実施することができる。

 

(2)試験委員会の委員は医師会が任命する。*3 2試験委員会はいずれも少なくとも3名の委員からなり、その中に試験の対象となる専門医、重点及び/または付加の称号を有する者が2名含まれなければならない。3監督官庁はそれとは別に1名の委員を派遣することができる。4試験は監督官庁によって指定された委員を同席させて実施することができる。*4

*3 委員を医師会の立法部が決めるか、または執行部が決めるかについては医師会によって規則が異なっている。

*4  3文及び4文のような規定がその州の医療職法に規定されていなければ、(2)から3文及び4文を省くことができる。

 

(3)医師会は試験委員会の委員長を決定する。*

*委員を医師会の立法部が決めるか、または執行部が決めるかについては医師会によって規則が異なっている。

 

(4)試験委員会は単純多数決で決定する。同数のときは委員長の票で決定する。

 

(5)試験委員会の委員は独立して決定し、指示に従う義務はない。

 

(6)試験の決定に対する異議申立に関して助言をするため、医師会に異議申立委員会が設置される。委員の任命と構成及び委員長の任命に対して(2)と(3)が準用される。

 

(7)それぞれの試験委員会及び意義申立委員会の委員と委員長の任命の期間は、医師会の組織の選挙期間に従う。*6

*6 医師会によって取り扱いが異なっている; このような文言が卒後研修規則に示されていたり、そうでなかったりする。

 

§14

試験

 

(1)医師会は試験の期日を決定するが、それは受験許可後適切な期限内に設定されなければならない。医師は最低2週間の期限をおいて呼び出される。

 

(2)試験は規定された全ての卒後研修内容を対象とすることができる。習得した知識、経験及び技能は試験委員会によって審査される。試験の時間は最低30分とする。

 

(3)試験委員会は、規定された知識、経験及び技能を修得しているかどうかを、提出された証明書と試験成績に基づいて決定する。

 

(4)試験に合格しないときは、試験委員会は確認された欠陥に基づいて以下のことを決定する。

-        卒後研修を延長し、どのような内容の条件を課するか、及び/または

-        再試験までにさらに取得しなければならない必須の知識、経験及び技能、及び/または

-        医師会に対して証明しなければならないその他の課題を満たすこと。

 

(5)卒後研修の延長期間は最低3ヶ月であるが、最高は専門医のための卒後研修では2年、重点と付加卒後研修では1年である。

 

(6)申請者がしかるべき理由なくして試験に出席しなかったり中断したときは、試験は不合格とみなされる。

 

(7)試験に関しては記録が作成される。

 

§15

試験結果の通知

 

(1)試験委員会の委員長は受験者と医師会に試験の結果を通知する。不合格は受験者に原則として口頭で説明される。

 

(2)試験に合格したときは、医師会が申請者に認定証書Anerkennungsurkundeを交付する。

 

(3)試験に不合格のときは、医師会は§144)及び(5)によって試験委員会が決定した条件を含む理由を付して、上訴が可能である旨の書面の通知を申請者に交付する。

 

(4)医師が医師会の通知に異議を申し立てたときは、医師会は§136)による異議申立委員会の意見を聞いて異議について決定をする。

 

§16

再試験

 

再試験は不合格が決定した試験の後早くても3ヶ月経ってから実施することができる。再試験に対しては§§12から15までが準用される。

 

§17

称号認定の取消

 

称号の認定は、これに必要とされる条件が存在しなかったときに取り消される。取り消しに関する医師会の決定の前に、§13により設けられた試験委員会と該当者は聴聞される。

 

§18

欧州連合(EU)加盟国中のドイツ連邦共和国以外の国及び欧州経済圏での他の条約提携国における卒後研修

 

長文の規定であるので今回は翻訳を省略した。

 

§19

欧州連合加盟国及び欧州経済圏での他の条約提携国以外における卒後研修

 

 欧州連合加盟国及び欧州経済圏での他の条約提携国以外における卒後研修は、それが本卒後研修規則の原則に相当し、最低12ヶ月の卒後研修をドイツ連邦共和国内において専門医または重点の卒後研修として行ったときには、その全部または一部が算入される。加盟国または他の提携国の国籍のない医師によって行われたときにおいても、欧州連合加盟国及び欧州経済圏での他の条約提携国における卒後研修は準用される。認定の手続については§§11から16までが適用される。

 

§20

一般移行規定

 

(1)Part B及びCに特段の規定がない限り、一般移行規定が適用される。

 

(2)今まで効力のあった卒後研修規則によって取得した卒後研修称号で、本卒後研修規則に含まれなくなったものは今後も引き続き標榜することができる。

 

(3)今まで効力のあった卒後研修規則で取得した資格証明は、その効力が保持される。

 

(4)本卒後研修規則の発効のときに専門医の卒後研修中であった医師会会員は、それまで効力のあった卒後研修規則の規定に拠り7年間の期限内にその卒後研修を完結し、受験の許可を申請することができる。

 

(5)本卒後研修規則の発効のときに重点の卒後研修中であった医師会会員は、それまで効力のあった卒後研修規則の規定に拠り3年間の期限内にその卒後研修を完結し、受験の許可を申請することができる。

 

(6)本卒後研修規則の発効のときに特殊領域Bereich【これは本卒後研修規則の付加卒後研修に相当する領域の名称】の卒後研修中であった医師会会員は、それまで効力のあった卒後研修規則の規定に拠り3年間の期限内にその卒後研修を完結し、受験の許可を申請することができる。

 

(7)本卒後研修規則の発効のときに、「自由選択卒後研修Fakultative Weiterbildung」または「特別な検査及び治療方法の卒後研修Fachkunde」【これらは、本卒後研修規則ではそれぞれの専門医卒後研修または付加卒後研修に統合される形で整理された。訳者の見解であるが、この扱いによって本卒後研修規則による専門医などの分類が、従来に比して単純明快になったといえる】の卒後研修中であった医師会会員は、それまで効力のあった卒後研修規則の規定に拠り2年間の期限内にその卒後研修を完結し、受験の許可を申請することができる。

 

(8)1専門科、重点または付加卒後研修のいずれにおいても、本卒後研修規則で新たに称号が導入されているときには、導入の前の少なくとも8年以内に卒後研修機関または同等の施設で、卒後研修の最低期間に相当する期間規則正しく従事していた会員は、受験認可を申請することができる。申請者は、1文で示された最低期間をそれぞれの専門科、重点または付加卒後研修で規則正しく従事した証明書を提出しなければならない。証明書から、申請者がこの期間主として該当する専門科、重点または相当する付加卒後研修に従事し、それにより包括的な知識、経験及び技能を習得したことが明らかにならなければならない。申請は3年の期限内に提出されなければならない。

 

(9)(4)から(8)までの場合には§§1216の認定手続が適用される。期限については§46)が適用される。7

7 医師会の内部管理実務に対して、法的、質的及び管理上の理由から確定した期限を定めることが望ましい。

 

§21

施行

 

本卒後研修規則は公布後に施行される。従来の卒後研修規則は同時点で効力を失う。


 

 

定義の解説

 

卒後研修規則(範型)の枠内で適用される

 


外来の範囲: 開業医の診療所、施設の外来、day hospitalout-patients clinic の外来【外来や病棟のシステムが日本と違っていたりするので、解説を正しく翻訳することが難しい】

 

病棟の範囲: 病院の部局、リハビリのクリニック、院外医師担当の部門?、患者が夜間医師のケアを受けられる施設、病院に接続した医学的部門【病院、外来その他の施設のシステムが日本と違っていたりするので、解説を正しく翻訳することが難しい】

 

救急入院: 医学的ケアの必要性とその性質をさらに確認するための急性期病院の機能部分で、危険な病的状態の識別のために患者に最初の検査あるいは最初の処置を行う。

 

基礎卒後研修: 一つの専門科の中に存在する数種類の専門医に共通する内容【例えば、内科という専門科の中で、一般医学や血管学などと共通する内科の基礎的研修を指す】、

 

資格: 資格(専門医-、重点-、付加-卒後研修)は専門科の内容を反映するもので、卒後研修の対象と医師会での試験である。これらの資格の内容は専門科の構成要素を示している。

 

患者を直接ケアする専門科:

麻酔科、

眼科、

外科、

産婦人科、

耳鼻咽喉科、

皮膚及び性病科、

人類遺伝学、

内科及び一般医学、

小児及び思春期医学、

小児及び思春期精神科、

口腔-顎-顔面外科、

神経外科、

神経科、

理学及びリハビリ医学、

精神科及び精神療法、

心身医学及び精神療法、

放射線治療、

泌尿器科

 

症例セミナー: 参加者のいずれもが関与する形の卒後研修方法で、卒後研修指導医の指導の下に実際例の呈示とそれについての討議にもとづいて、知識及び能力ならびに関連する基礎知識を拡大強化するものをいう。


 

 

Part B及びPart Cに対する一般規定

 


1.     卒後研修の一般的内容:

卒後研修は専門科の構造を考慮し、知識、経験及び技能の習得とともに以下の事項も含んでいる

-   医師の行為の倫理的、科学的及び法的基礎

-   医師の鑑定【意見】

-   質保証と質マネージメントの方法

-   家族への助言を含めて医師としての会話を進めること

-   心身【医学】的基礎

-   専門領域にまたがる共同作業

-   疾患の病因、病態生理学及び病原性

-   説明【患者への】と所見の記録

-   視覚的または機器的に評価する検査室技術に支えられた証明手段(基礎検査室)

-   医学的な救急状態

-   医薬品の副作用と医薬品乱用を含めた薬物治療の基礎

-   一般的疼痛治療

-   診断を前進させるための専門間での適応設定、これには専門科からの問題提起に関連する放射線所見の鑑別適応diffential indicationと解釈を含める

-   重篤な患者と死にゆく者へのケア

-   精神社会、環境要因及び文化間の問題が健康に及ぼす影響

-   医療行為の保健医療経済への影響

-   保健医療の構造

 

2.     専門医、重点及び付加の卒後研修に対して詳細が定められていないときは、卒後研修を外来ならびに病棟の領域で行うことができる。

3.     卒後研修の内容的な条件は、管理指針によって専門的な見地で具体化される。

4.     クルズスの認可に対しては連邦統一勧告を守らなければならない。

 


 

Part B: 専門領域、専門医及び重点の資格

 

各専門及び重点について定義、目的、期間、卒後研修内容の項目が示されている。110頁に及ぶ内容であるため、全部翻訳することが困難であるので、その中からいくつかを選んで後日紹介したいと思っている。

 

Part C: 付加卒後研修

 

各付加卒後研修について定義、目的、標榜を取得するための条件、期間、卒後研修内容の項目が示されている。50頁に及ぶ内容であるため、全部翻訳することが困難であるので、その中からいくつかを選んで後日紹介したいと思っている。

 

卒後研修内容に関する指針

 

専門領域ごとに、評価を受けなければならない研修項目と、疾患の分類別の最小経験症例数が示されている。254頁に及ぶ内容であるが、その中からいくつかを選んで後日紹介したいと思っている。