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生涯教育に熱くなっているドイツの現状

 

ドイツ医師会雑誌のホームページに、ノルトライン州医師会の「業務報告2002」を無料で配布するという案内を見たのでメールで申し込んだところ、早速125頁の報告書が届きました。

 

医療制度改正(悪)と医療事故で頭の中が一杯になっている私たちにとって教訓になるようなことが色々書いてあります。

 

その中から医師の生涯教育を紹介しましょう。

ドイツでは古くから生涯研修が医師職業規則によって義務づけられてきましたが、来年(2003年)からはドイツ統一の「生涯研修規則」が施行されることになりました。それにより、規定の単位を取らないと罰則が適用されることになります。

それまでは準備期間として、各州ごとに暫定規則を作り実施してきました。そして、それらを比較検討して、ドイツ統一の規則を作るという手法です。

 

罰則については情報を持っていませんが、隣国スイスの前例に倣うとすれば専門医資格の停止も考えられます。もしそうなれば、家庭医も一般医学専門医の資格がないと開業できない社会ですから、開業医は開業を続けることができなくなるかもしれません。資格を取り戻しても、開業医は定員制ですから、順番を待たなければならなくなるでしょう(以上は筆者の推測が入っています)。

 

このように、ドイツでは現在生涯研修に熱く取り付かれていて、これが医療の質を高め、医療事故を予防する手段と考えています。

 

人口1000万を擁するノルトライン医師会の2001年における生涯研修の状況は以下の通りで、医師会で公認された研修プログラムの年間総数は6000を超えています。州医師会雑誌にも発表されますが、インターネットで検索ができるので、自分の参加したいプログラムを探すのが容易とのことです。これは他の州でも同じです。別の州医師会の企画したプログラムに参加することもできます。

 

一つのプログラムは、いくつかの専門領域に関連しますが、主たる対象領域によって分類すると以下のようになっているそうです。

 

Cクラス:プログラム総数に対して5%以上に達する、つまり300以上のプログラムがある領域:

一般医学、麻酔、内科、精神科と精神療法

 

Bクラス:1%から5%の間(60から300までのプログラムがある領域):

外科、糖尿病、産婦人科、消化器、血管外科、心臓、小児科、神経、腫瘍、整形外科、肺、放射線、疼痛治療、泌尿器、

 

Aクラス:1%以下(60以下のプログラムの領域)

労働医学、眼科、内分泌、耳鼻咽喉、皮膚性病、心臓外科、HIVとAids治療、人類遺伝、衛生と環境医学、臨床薬理、臨床検査医学、微生物と感染疫学、顎口腔外科、神経、神経外科、神経病理、核医学、公衆衛生、病理、薬理と中毒、音声医学と小児聴覚、理学療法とリハビリ、生理学、形成外科、法医、放射線治療、輸血、災害外科、アレルギー、医学気候、産業医学、輸血輸液、カイロテラピー、航空医学、手の外科、ホメオパチー、遺伝医学、医学情報、自然療法、静脈、形成外科手術、リハビリ、理学療法、社会医学、スポーツ医学、発声障害、熱帯医学、環境医学。

一部重複した項目がみられますが、労働医学と産業医学を例にとると、労働医学は専門医として独立、産業医学は内科専門医などが産業医としてパートタイムで働く場合です。輸血と輸血輸液も同じような関係にあります。しかし、医師は自分の専門領域に関係なく、どのプログラムを選んでもかまいません。

 

ドイツでは企業が医師会公認の研修プログラムにお金を出すことを禁止し、あくまでも医師たちの自分の参加費で企画・参加することにしました。その費用は経費として認められます。診療報酬は年々きつくなりますが、医療の質向上のために、自ら進んで厳しさを求めていく医師会と医師たちの姿勢に感心いたします。

岡嶋道夫